まさかの入学拒否ですわ!?
「あーレルゥ……だったか?」
「はい!そうですわ!よろしくですわ」
「お、おぅよろしく……いや、そうじゃないか……」
完全に困惑している教師を傍目に、レルゥは学校へ向けて足を進めようとする。しかしまぁそうは問屋は降ろさない。そりゃまぁ当然だろう。なんか飛んできた奴が学校に張った防御魔法を割った挙句、学校そのものの結界すらも破壊してしまったのだから。
「とりあえず……一緒に来てもらおうか」
そして教師に連れていかれる事数分。レルゥ達は『校長室』と書かれた部屋の前に立つと、一度ノックをした後部屋に入る。部屋の中には無駄にデカい椅子だけが点在していた。どういうことだ?と思うレルゥに向け、誰かから言葉がかけられる。
「よく来たね僕の学校に」
そしてデカい椅子がグルンと回転すると、そこには小さなエルフの少女が座っていた。身長はレルゥの半分程度しかなく、それでもレルゥの倍以上生きていることは確実、そんな感じであった。
「僕の名前は『リグ・ロッドベル』。リグと呼んでくれたまえ」
「分かりましたわ!それでその……なぜ私はここに連れてこられたのですわ?」
「それ、分かってないのかい?……まぁ、キミの父親の事は知ってるからわかるけどね……」
「私のお父様の事を知っているのですわ?」
「まぁね。それよりも……キミ、入学できないかも」
そんなことをあっけらかんと言い放つリグ。一瞬何を言っているのかわからないと言うようであったが、すぐに言葉の意味を理解し驚愕する。
「な、何を言っているんですわ!?」
「そりゃまぁ……ねぇ。僕の学校を入学前からこんなバラバラにしてくれちゃって……普通なら殺してるけど、キミ相手にまだ勝てるとは思えないから入学拒否しよと思う」
「あうぅ……そりゃまぁ……そうかもしれないですわ」
この辺、レルゥは存外素直であった。幼いころからいろんなものを破壊していたせいか、自分がやった事の問題くらいは理解できるようになっていた。しかしまぁ根本的に間違っているのでどうしようもないのであるが。具体的に言えば壊しても直せば大丈夫でしょとか思っている。
そんなわけでさほど反省していないレルゥにイラつきを覚えたリグであるが、その辺は教育者。それに彼女のような強者を逃してしまうと確実に後で後悔することは確実、故にギリギリ出来そうな程度の事をやらせて入学チャンスを与えてやることにした。
「でも僕は優しいからね。チャンスをあげよう。今から入学試験が行われる訳だけど……キミは筆記試験で満点だったから実践試験はやって無いよね?」
「ですわね」
レルゥは入学式前にあった試験を筆記試験満点で合格した。基本的に百点満点を取れば入学できるのだが、レルゥはそれを筆記試験時に取ってしまったのである。という訳で実践試験はしていない。それ故に行われる試験。
「キミには今回の実践試験で百点……つまりは全員倒してきてほしい。それが入学条件だ」
真面目な顔をして、リグはそんなことを言い放つ。レルゥもそれを二つ返事で受け答えた。そしてそれから十分後、第一闘技場に向かったレルゥ。そこには既に何人も受験者がいた。今日の為に仕上げてきたのだろう、魔力が何もしなくとも見える程度には本気である。しかしまぁレルゥはと言うと、相変わらずあっけらかんとした表情を変えずにそれを見ているのであった。