入学初日ですわ!
さて、現在レルゥは空を跳んでいる。これはさほど難しい話ではなく、単に空中を凄い威力で蹴っているだけである。魔法とかの類は使用していない。このくらいは誰でもできるでしょ、とか思っているが出来るのはお前だけである。
「お、アレが学校ですわね!ようやく見えてきましたわ!」
レルゥが通う学校は目と鼻の先。ここでレルゥは着地体制に入る。だがレルゥは自分自身がどれほどの速度で走っているのか理解していなかった。その速度は既に飛行機と同程度の速度、ハッキリ言って普通に着地するのは不可能であった。
「校門はあそこですわ!」
それを知ってか知らずか、レルゥは着地する場所をグラウンドに決めたようであった。そして校門前では先生と新入生徒が騒ぎ立てていた。どうやらホームルーム開始時間に間に合ったか間に合ってなかったかで口論になっているようだ。
「だから!私が来た時にはもう門は閉めてたでしょ!」
「足が入ってたんだしいいじゃん文句ないでしょ!」
とまぁそんなことを大声で話しているのだから、当然普通の先生もやって来る訳である。新しく来た先生はと言うと、死ぬほどダウナーな感じであった。目の下にはクマが出来ており、髪はボサボサ、服はヨレヨレ。それでもお前教師か!?と言いたくなるような恰好をしていた。
「おいお前らうるさいぞ門の前で。やるなら外でやってくれ文句も無いだろうし」
そう言ったがやはり納得していないようで、次第にエスカレートしていく口論。そしてそろそろ実力行使に出ようかとしたとき、何かが急接近してくるのをその教師は理解した。それが何だかは分からないが、少なくとも普通の物ではないことだけ理解した。
「お前ら逃げろ。……なんか来る」
「へ?」「え?」
次第に大きくなってくる影。それが人影であることを理解した時、既に教師は全力で防御魔法を発動させていた。それも普通魔法ではなく『特化型魔法』。これは要するにその系統の魔法を極めた先にある魔法であり、これを持っている者事態は多いが同じ魔法を持っている者は少ないと言う物である。
「全てを防衛する盾よ、この身に顕現せよ『ザ・キング』!」
特化型魔法を発動させる呪文を唱え、学校その物を防御するように貼られた防御魔法。そして後ろにいた二人が何が迫っているのか理解した瞬間。猛スピードで突っ込んできたレルゥが着弾した。
防御魔法は一撃で砕け散り、グラウンドに大きなクレーターが出来上がった。後ろの二人は吹っ飛ばされ、防御魔法を使った教師は一体何が起きたんだととクレーターを覗く。そこには当然のようにレルゥがいた。
「……誰だお前……」
「私ですわ?私はレルゥ!以後、お見知りおきを」
着地の衝撃でぶっ壊れた窓ガラスの破片を砕きながら、レルゥは自己紹介をするのであった。なんともまぁこの状況で出来るような事ではないが、レルゥにとってこのくらいはどうにでもなることである。回復魔法を学校全体にかけ、壊れた校舎を治していく。
「……どうなってんだ一体よぉ……」
「あ、魔法で治しちゃまずかったですわ……?」
「いやいいんだけどよ。なんでこの大きさの物を回復魔法で戻せるんだ?」
「え?あぁ、私が最強ですからですわ!」
「頭痛くなってきた……」
立ち眩みを覚えたその教師は、保健室に行こうと思ったがその前に校長に呼びつけられるのであった。