第7話
傷が癒えたミーシャは退院し、俺達と共にギルドへ向かった。
まずはミーシャの冒険者登録からだな。
受付にて手続きを済ませ、無事、ミーシャをFランクのギルドカードを発行してもらった。
続いて、俺達のパーティー申請だ。
ミーシャは俺達のパーティーに入ることになった。
「よし、これで完了ですね」
「ありがとうございます」
受付嬢のお姉さんにお礼を言って、ギルドを出る。
目指す先はギルドのすぐ隣にある『武具屋』だ。
そこでミーシャの武器を購入する予定である。
「ここが武具屋か」
店の看板には剣の絵が描かれている。
中に入ると、そこには所狭しと武器や防具が並べられていた。
奥にはカウンターがあり、髭を生やしたおっさんの店主が座っていた。
店内は薄暗く、壁にかけられたランプの灯りだけが光源となっている。
「どんなのが良いとかあるのか?」
「えっと、その……よく分かりません」
困った顔をしながら答えるミーシャ。
「……そうなのか」
「……はい」
申し訳なさそうな顔をしている。
しかし弱ったな。俺も武器についての知識は皆無だぞ。何せ素手で戦っているからな。
「……まあいいか。とりあえず適当に見ていくか」
「は、はい」
「……ん」
俺とルイ、そしてミーシャの三人は店の商品を見回ることにする。
色々と物珍しい品が並んでいるため、つい目移りしてしまう。
「……これはなんだ?」
俺の目に留まったのは『ナックルガード』と呼ばれる手甲のようなものだ。
見た目は金属製の手甲そのものだが、手に当たる部分は丸く、指先まで覆うような形になっている。手を守るだけでなく拳を保護する役割も果たしているようだ。
「へぇー……カッコいいな!」
俺はそれを手に取り、マジマジと見つめる。
金属の光沢が美しく光を反射していた。
「……パパ、それ欲しいの?」
「うん? ああ、そうだな。こういうのは初めて見るからちょっと気になるかな」
今まで武器屋には入ったことがなかったから、こういう物があることさえ知らなかった。
……とはいえ、お金無いし、無駄遣いは出来ないな。
買うのを諦めてナックルガードを棚に戻そうとしたその時、ルイはじっとその手甲を見て言う。
「……わたしもそれ、欲しい」
「ん、そうか。じゃあ買うか!」
ルイが欲しがったものだから、俺は迷わず購入することにした。
……なんか俺、段々親バカになってないか?
まあいいか。可愛いは正義だしな。
「ミーシャ。欲しい武器は見つかったか?」
「え、ええと……」
ミーシャに話しかけると、彼女はキョロキョロと辺りを見ながら答えた。
「まだです」
「そっか。ならゆっくり見ていけよ」
「はい」
俺の言葉に笑顔で返すミーシャ。
彼女の表情からは緊張の色が見える。自分の命を預ける物を買うのだから真剣になっているのかもしれない。
「……パパ」
「ん?」
「……ルイも剣がほしい」
ルイが俺の袖を引っ張ってくる。
確かに一緒にクエストに同行する以上、ルイにも武器が必要だよな。
いざという時に自衛くらいはできるようにしておかないと。
「ああ、そうだな。一緒に選ぼう」
「うん」
すると、すぐ隣の棚で興味深い物が目に入った。
「これは……」
それは真っ赤な大剣。
鞘に収められている状態なので刃までは見えないが、その大きさだけで相当な重量感があることが分かる。
何故こんな所にこんな代物が置かれているのか。
疑問を感じつつ、俺はその赤い大剣を手に取った。
「うわ、重っ!」
「……パパ?」
「ああ、ルイ。これ見てみろよ。かなり重いぜ。ほら」
俺はルイに見えるよう、剣を持ち上げる。
「こんなに重いと振り回すのも一苦労だな。一体、どんな大男が使うのを想定して作ったのやら」
「……わたしが持つ」
「えっ。でも」
「……大丈夫」
ルイは俺の手からひょいと奪い取ると、軽々と持ち上げてしまった。
マジか。ルイって力持ちなんだな。知らなかった。
ルイはそのまま自分の身長以上もある大剣を片手で振り回してみせる。
「すごいなルイ!」
「……当然」
褒められたのが嬉しいのかドヤ顔を浮かべている。
そんなやり取りをしていると、後ろから声をかけられた。
「エインさん!武器が決まりました!」
振り返るとそこには弓を持ったミーシャがいた。
背中には矢筒を背負っている。
「弓矢か?」
「はい。これが一番使いやすそうだったので」
そう言って手に持った弓矢を見せてくるミーシャ。
木製のグリップに羽のような弦がついている。
「おー、いいじゃないか」
「えへへ」
嬉しそうな顔をしている。
どうやら気に入ったようだ。
「じゃあこれで三人が買う武器は決まったな」
「でも、本当にいいんですか?武器の代金、全部出してもらって」
「気にすんなって。ミーシャに素手でクエストに行ってもらうわけにはいかないからな。それに、ちゃんとクエストで稼げたら返してもらうつもりだし」
謂わば先行投資というやつだ。
武器代にかなりのお金を使ってしまったので、これで本当に一文なしになった。まあ、これから稼げば問題ないだろう。
「じゃあ早速クエストを受けに行くぞー!」
「……おー」
「はい!」
俺たちはギルドに向かうことにした。
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