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第4話

 ブラッドウルフがまた襲いかかってきた。

 俺はそれを避けて、横腹を思いっきり蹴り上げる。


「ギャウンッ!」


 吹っ飛んだブラッドウルフは木に衝突した。

 しかし、すぐに起き上がって俺を睨んでいる。


「タフだねぇ〜」


 俺は肩をすくめる。

 流石はブラッドウルフ。蹴った感触からも、そこまでダメージを与えれてないのが分かる。


「……強い」

「ブラッドウルフは、この地帯では上位のモンスターだからな。敵に回すと厄介だぞ」

「……そっちじゃなくて、パパが強い」

「俺?まあ俺は、世界中のモンスターをこの目で観察するために冒険者になったからな!これでも結構鍛えてんだぜ!」


 俺は自慢げに胸を張る。


「ガウッ!」

「おっと!」


 飛びかかってきた狼の攻撃を避ける。


「……パパ」

「大丈夫だ」


 俺は落ち着かせるように彼女の頭を撫でる。


「……ふぅ」

「さて、どうするか」


 俺は腕を組んで考える。

 目の前にいるのはブラッドウルフ。体長5mもある大型のモンスターだ。

 蹴散らすのは容易ではない。ただ、何も無理に倒す必要はない。

 俺は倒れている女性に声を掛ける。


「おい、アンタ」

「……」


 返事がない。気絶したようだ。


「……仕方ない」


 俺はブラッドウルフに向き直る。


「悪いが、手加減はできないぞ」

「……ガウウゥッ!」


 ブラッドウルフは牙を剥き出しにして俺に飛びかかろうとしていた。


「よっと」


 俺は軽く跳躍。ブラッドウルフの頭を踏みつける。


「……ギャン!?︎」

「ふふん♪」

「……すごい」


 俺は、ブラッドウルフの頭上で余裕の表情。

 しかし、それが彼の怒りを買ってしまったらしい。


「……ガウアァッ!」

「おわっ!?︎」


 途端に足下が斜めに傾いた。

 ブラッドウルフが転げる勢いを利用して俺を振り払う。

 バランスを崩したが、何とか着地に成功。

 だが、その一瞬の隙をブラッドウルフは見逃さなかった。


「ガアァッ!」

「うわっ!?︎」

 ブラッドウルフは地面を強く踏みつけて、土煙を発生させる。

 視界を奪われた。


「くそ!」

「……パパ!」


 後ろからルイの声が聞こえた。

 しかし、土煙のせいで何も見えない。

 その時、何かが俺の頭に噛みつこうとしてきた。


「危ねえっ!」


 咄嵯に回避。

 鋭い牙が、俺の髪を何本か切断した。


「……うわっ!髪が!?︎おぉ、まさかこんなの切れ味がイイとは……新しい発見だぞっ!?」


 俺は思わず喝采を上げる。


「……パパ、だいじょうぶ?」

「あ、ああ……」


 おっと。今は、戦闘中だった。うっかりうっかり。

 それにしても、このブラッドウルフ……。なかなかやるじゃないか。


「ガアァッ!」

「……パパ」

「心配いらないぞルイ。……こうなったら、俺の『奥の手』を喰らうがいい! 」


 俺は拳を握りしめて腰を落とす。

 精神を集中させ、体内の『気』を全身に行き渡らせる。

 そして、一気に解放。


「……はぁっ!」


 瞬間、爆発的に身体能力が上昇する。

 身体中が熱くなり、筋肉が膨れ上がった。

 これぞ拳術『気功法』!


「いくぜぇー!」


 俺はブラッドウルフに向かって駆け出す。

 ブラッドウルフも迎え撃つように走り出した。

 お互いがぶつかる寸前で、俺は急ブレーキ。


「おりゃあっ!」


 そのままブラッドウルフの横っ腹に拳を叩き込む。


「グギャアッ!」


 ブラッドウルフは悲鳴を上げて吹っ飛ぶ。

 だが、まだだ。


「もういっちょ!」

「ガギャッ!」


 今度は反対側の脇腹に拳を入れる。


「まだまだっ!」

「ギャウンッ!」


 続けて顔面を殴り飛ばす。


「これで終わりだ!」

 最後に、思いっきりジャンプして、空中からの回し蹴りをブラッドウルフの顎に当てた。


「ギャウンッ!」


 空高く吹っ飛んだブラッドウルフは地面に墜落して、そのまま倒れ伏す。


「……すごい」

「はぁ、はぁ……よし、終わった」


 俺は荒くなった息を整えながら構えを解く。


「……パパ、かっこよかった」

「そうかい?ありがとう」


 俺は照れ笑いを浮かべる。


「……パパは、思ってたより強い」

「そんなことないさ」


 俺は頭を掻いて謙遜した。

 俺は冒険者になってから日が浅い新米冒険者だ。俺より強い奴は、この業界にはたくさんいる。

 いずれ、ルイも他の冒険者達に出逢えば気付くだろう。


「……ん」


 ルイが指差す方向を見ると、そこには倒れている女性がいた。


「……どうする?」

「ほっとけないし、取り敢えず街へ連れて行こう」


 俺は、女性を背負って歩き出す。


「……パパ、わたしも持つ」

「え、でも……」

「……わたしは、力持ち」


 試しにルイに女性を任せると、軽々と背負ってしまった。


「すごいな。じゃあ頼むよ」

「……うん」

「……あれ?」


 すると、女性が目を覚ました。


「ここは……?」

「良かった。目が覚めたんだね」

「……大丈夫ですか?」


 女性は状況が飲み込めていない様子だった。


「俺は、エレン。君はどうしてここにいたのかな?」

「……わかりません。覚えているのは、森の中を彷徨っていたことです」

「記憶喪失?名前くらいは覚えてないのか?」

「……いえ、それはわかるのですが」

「……名前は、何と言うんですか?」

「私の名前は、ミーシャと言います」


 ミーシャか。いい名前だ。


「ミーシャ。行く宛がないのなら、一度街に行ってもいいか?怪我をしているようだし、治療もしないと」

「……はい、お願いします」


 こうして、俺達は街に戻ることになった。


 ***


「……ここが、人間の街?」

「人間の街?」


 変な言い方をする人だな。

 まあいいか。とにかく、ミーシャをギルドに連れていこう。彼処なら怪我の治療もしてもらえる筈だし。

 俺がギルドの扉を開いた。


「すみませーん。怪我人の治療をお願いしたいんですけど」

「いらっしゃいませ!……って、エインさんじゃないですか」


 受付嬢のお姉さんが話しかけてきた。

 そしてルイが背負っている女性の方を見ると、すぐに救急箱を持ってきてくれた。


「その方は?」

「この人は、森で倒れていたんですよ」

「森に?何があったのでしょうか……」

「いや、ちょっとブラッドウルフと遭遇しまして」

「ブラッドウルフですか!?よく無事でしたね!?︎」

「はい。俺が倒したんで問題ありませんよ」

「た、倒した?……いやはや、流石はエインさんです。それでは、この方はこちらでお預かり致します」

「よろしく頼みます」

「……お願い、します」


 俺に習うように、ルイは丁寧に頭を下げる。


「……うぅっ!なんて礼儀正しい子なんでしょう!」

「うちの子、天才なんです」

「親バカですね。……ところで、この子は何方なんですか?」

「俺の子です。ほら、ご挨拶して」

「……るい。……0歳」


 0歳の子供にしてはしっかりしているなぁ……。


「……えっと、初めまして。私は、ソフィアといいます」

「……よろしく」

「………………」


 ルイはいつも通りの無表情だが、ソフィアは何故かルイの顔を見て固まってしまった。


「どうしましたか?」

「……可愛い」

「えっ?

「……はっ!な、何でもありません!」


 暫くして、やっと我に帰ったようだ。


「す、すみませんでした。思わず見惚れてしまいました」

「はぁ、なるほど。それより、ミーシャは大丈夫そうですか?」

「見たところ、怪我は軽いもののようなので大事はないでしょう。一応、栄養失調を起こしているかもしれないので点滴の準備もしておきます」

「ありがとうございます」


 俺は改めて礼を言う。

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