第3話
「はい!『ゴブリンキングの討伐』です!最近森の奥の方でゴブリン達の動きが活発になっておりまして!その調査も兼ねた討伐なのですが……」
「あ〜俺、討伐クエストはやらないんです。他のはありませんか?例えば、薬草採集とか」
「えっ?……わかりました。それでは、こちらはどうですか?」
次に渡されたのも、モンスター退治ではなく、採取系の依頼書だ。
「『ラビット草の納品』『銅鉱石の採取』ですか。……うーん。どれも微妙だなぁ」
「で、では、これで!」
次に見せられたのは、『スライムの体液の納品』という依頼書だ。
「『スライムの体液』を100ml集めて来て下さい!報酬は5000ゴールドとなっております!」
「なるほど。悪くないな」
俺が泊まっている宿の代金が150ゴールドだから1ヶ月以上暮らしていける額だ。
「じゃあ、これをお願いします」
「はい!承りました!」
***
「さて、明日はクエストに行くぞー!」
「……ん。……どこ行くの?」
「そうだな。とりあえず、街の近くの森に行ってみるか」
「……わかった」
俺はルイを寝袋に寝かせた。
以前まで俺が使っていたものだけど、一個しかないから仕方ない。
何せこの宿。格安だが机や棚といった家具どころかベッドすら無いからな。
俺は床の上で寝る。
金が貯まったら、寝袋をもう一枚買うとしようか。
「じゃあ、お休み」
「……うん。……お休みなさい」
俺達は眠りについた。
***
次の日。
俺はルイと一緒に街を出て、近くにある森、通称『へーメルの森』の中に入った。
因みに、ルイを連れてきた理由は、この子はまだ子供だから、一人で留守番させるのは危ないだろうという判断からだ。
「……パパ。……あれ」
「どうした?」
ルイが指差したのは、地面に落ちている石ころ。
「これがどうかしたのか?ただの石だろうに」
「……違う。……この世界には、こんなのがたくさんあるの?」
「そりゃまあな」
だって、ただの石だし。
それとも、実は特殊な石だったりするのか?
「パパ」
「なんだ?」
「……この世界のこと、もっと教えて欲しい」
……変な質問をしてくる子だ。生まれたばかりの亜人っていうのはみんなこうなのか?
「いいよ。といっても、俺もあんまり詳しいわけじゃないけど」
「……それでもいい」
「よし!でも、まずはクエストを終わらせないとな」
今回のクエストは、スライムの体液の採取。
スライムから体液を採る方法は特殊で、専用のアイテムが必要なのだ。
ギルドから借りることは出来ないので自前の物を用意しないとならないのだが、これが結構高かったりする。
しかし俺は、以前スライムの研究をしていた時、既に購入していたものがある。これを使って、クエストをクリアするぞ!
「いた!あれがスライムだ!」
俺が指差した先には、プルンとしたゼリー状の物体がいた。
色は水色で、大きさは30cmくらいだろうか。ぷるんぷるんだ。
「早速捕まえるぞ!」
俺はアイテムを取り出した。
装置はスライムの体液を集めるためのもので、見た目は小さなビンのようだ。
これは、とある魔導具屋で購入したものだ。
「……これ、なに?」
「これはな、『スライサー』って言うんだよ」
「……なまえ、ダサい」
「俺に言われても困るよ。とにかく、こいつでスライムを捕まえれば良いだけだ」
「……どうやって?」
「見てろ!」
俺はスライサーを構えて、スイッチを入れた。
すると、あら不思議!
向こうにいたスライムが容器の中に吸い込まれていくではありませんか!
「……すごい」
「ふっ。これこそ、『吸引式スライサー』の力!」
「……ネーミングセンス、ひどい」
2回もダメ出しするルイ。
まあ、名前なんてどうでもいい。大事なのは性能だ。
「このアイテムがあれば、スライムから自動的に体液が採取される。1匹あたり10mlくらい採れるから、あと9匹捕まえるぞ!」
「……おー」
ルイは、拳を上げた。
***
スライムの体液を採取するための道具『吸引式スライサー』。
そのおかげで、俺達は次々とスライムを捕獲していく。
「さて、次が最後だな」
「……がんばろう」
俺達が最後の一匹を追いかけていたその時、森の奥の方から悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあああっ!?︎」
「今のは女性の叫び声か!」
「……行ってみよう!」
***
「助けてえぇっ!」
女性が、巨大なモンスターに追われている。
「……あれは!」
女性を追っているのは、全長5mほどの黒い狼。
毛の色は漆黒で、牙は長く鋭い。目は赤く、獲物を狩る瞬間を今かと待ちわびているようにギラついている。
「ブラッドウルフ!?」
「……知っているの」
「へーメルの森の最深部に生息する狼系のモンスターだ!こんなところでお目に掛かれるなんて感激だなぁ〜!」
思い出すなぁ。以前、ブラッドウルフを観察するために一人で森に入った時のことを。
ブラッドウルフは数が少ないから、見つけるのに苦労したよ。
結局、彼らに見つかって追いかけられたんだ。何とか逃げ切ったんだけどさ。
「グオオォッ!」
俺達に気がついたのか、彼奴は吠えながら突進してきた。
「ルイ!下がるぞ!」
「……う、うん!」
俺は彼女を抱き抱えて横に飛ぶ。
その直後、先程まで立っていた場所にブラッドウルフが突っ込んできた。
「グルルルゥ……」
「危なかったな」
「……ありがとう」
ルイはそう言って微笑む。
一方、ブラッドウルフは俺達を睨んで威嚇している。
「ガアァッ!」
再びこちらに向かって走り出した。鋭い牙が俺たちを噛み砕こうと迫ってくる。
俺はステップを踏んでその牙を回避。
このブラッドウルフ、どうやらかなり興奮しているらしい。
「……パパ」
「なんだ?」
「……あのひと、あぶない」
「ああ。わかってる」
ブラッドウルフは、最低でも【討伐難易度5】。これは一流と呼ばれる冒険者が数人がかりで挑むレベルだ。
確かに危険な相手。だが、だからといって放置しておくわけにもいかない。
このまま彼女を放置しては、この後食い殺されるのが目に見えている。
「よっしゃー!予定にはないけど、いっちょ人助けでもやったりますかっ!」
俺は拳を硬く握りしめて構えた。
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