第14話
そこは研究施設のような場所だった。様々な装置や機械があり、中には用途不明の物もあった。
博士が部屋の中央にある椅子に座って、足を組む。
「さて、どうしたものかな」
流石の博士も、こんな時でも冷静だった。
「あの島は何なんでしょう?どうしてあんなものが突然現れたのか?そもそも、あれは一体何なのか?謎だらけですよ」
「確かにな。しかし、世界とは時に常軌を逸した現象を起こすもの。こういう事もあるだろう。私はモンスター博士になる前から、多くの不可思議と対面する度にそう思うことにしている。……だがそれより、今はこの状況を切り抜けることを考えなければ」
「ええ。そうですね」
俺は考える。
まず最優先として、俺達の身の安全を守ることだ。
「博士。この施設に非常食等はありますか?」
「あるぞ。ただ、私だけが籠ることを想定していたからな。4人となると……せいぜい3日分といったところだろう」
「3日……それまでに上の状況が良くなるでしょうか?」
「ふむ。街の異変を知った貴族達が騎士を派遣してくれれば、或いは……」
「しかしそれが上手くいかなければ、俺達は飢え死にですね」
そうでなくても、この場所がモンスターに気付かれない保証は無いのだ。
追い詰められれば、俺達はきっと皆殺しにされるだろう。
「……パパ」
心配そうに俺を見上げるルイ。
俺はルイの頭を撫でた。
「大丈夫だ。お前は俺が守る」
「……うん」
ルイはコクリと頷いた。
「それにしても、こんなことになるなんて……」
ミーシャもソワソワして落ち着かない様子だ。
俺は2人を落ち着かせるために言った。
「大丈夫だ。きっと助かる」
「しかし、どうやって?」
「まずは耐えるところからだ。冒険者は過酷な状況にも耐えうる忍耐力が大事なのさ」
そう言って俺は本を取り出した。
「これはモンスター図鑑だ。ここには世界中のありとあらゆる種類のモンスターの情報が記載されているんだ」
図鑑を開く。
そこには多種にわたるモンスターの写真が記載されてあった。
俺は何度も読み直したその図鑑を2人に見えるように広げる。
ミーシャは言う。
「なるほど。この図鑑でモンスターの知識を付け、突破口を開こうというわけですか」
「いいや。これはただの暇つぶしだ」
「えぇ!?」
「言っただろ、忍耐力が大事だって。俺達は今、非常に危険な状態なんだ。だからこそ、少しでも余裕を持っておく必要がある。こうしてモンスター図鑑を読みながらモンスターについて考察することで、平静を保てるのさ」
「な、なぁるほど……。流石エインさんは先輩冒険者です!見事な精神コントロール!」
ミーシャは感心した様子で俺を見る。
「ああ。だからお前らもリラックスしろ」
「うーん……そう言われましても」
ミーシャは不安そうな顔をしていた。
「そう言えばミーシャ。お前とは仲間になってからゆっくり話をする機会が無かったし、この際少し話さないか?」
「えっ?わ、私とですか!?」
「ああ。色々知りたいこともある」
俺は図鑑を読み進めながら言う。
「とはいえミーシャは記憶喪失だし、あれこれ尋ねられても困るだけか。……なら、ミーシャから俺に質問するといい。何でも答えようじゃないか」
「い、いいんでしょうか?」
「ああ。構わないぞ」
「じゃ、では……あの……エインさんのご趣味は?」
「趣味?」
何という月並みな質問。
まあ答えるけどさ。
「趣味はモンスターの観察と記録を付けること。後は読書だな」
「エインさん。本をお読みになるんですか?」
「これでも博士を目指しているからな。知識は多い方がいい」
「へぇ……凄いですね」
「そうでもないさ。好きでやってることだし。……ミーシャは、自分がやってて好きだったこととか覚えてないのか?」
「私が好きだったこと……それは、弓を使う事だったような気がします」
「弓を?どうしてまた」
「分かりません。でも、私は弓がとても上手かったらしいんですよね」
記憶喪失だからか、どこか他人事のようにミーシャは答えた。
「なるほど。……ルイは、好きなことってあるのか?」
俺は隣に座っている少女に尋ねた。
ルイは首を横に振る。
「……わからない」
「そうか。生まれたばかりだしな」
俺は頭を撫でてやる。
するとルイは気持ちよさそうな表情を浮かべた。
「よしよし」
「……パパ」
「どうした?」
「……パパに撫でられるの、好き」
「ルイは撫でられるのが趣味、か。……可愛い奴め」
俺はルイを膝の上に乗せると、優しく髪をすくようにして撫でてやった。
「……♪」
「よし。ルイにモンスターの素晴らしさについて教えようじゃないか。この図鑑を読めば、きっとルイもモンスターの魅力に取り付かれるぞ!」
そう言って俺は図鑑をルイに読ませる。
「……字が読めない」
「何だと!」
そうだ。ルイは生後数日の0歳児。
まさか、字が読めなかったとは……。今まで普通に言葉を話せていたので、その可能性を失念していた。
「ルイ、すまん……」
俺は謝る。ルイはコクリと首を傾げた。
俺は言う。
「お詫びと言っては何だが、俺が読んで聞かせてやろう」
「……読む?」
「ああ。これからお前にはモンスターの事をたっぷり語ってやる。楽しみにしていろ」
「うん」
俺はルイの頭の上に手を置いた。
そして図鑑を開き、読み始める。
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