第1話
俺の名前は、エイン・スタイナー。モンスターが大好きな冒険者だ。
『冒険者』というのは、いわばフリーランスの戦士。仕事内容は、主に各地を旅して危険地帯へ赴いてはそこの調査だったり、貴重資源の採取だったり、様々な仕事をする。
最近、街の外れにとあるダンジョンが発見されたらしい。内部は、珍しいモンスターの巣窟となっているらしく、聞くところによれば『モンスターの楽園』とも言える場所なのだとか。
俺はそこに興味津々で、今日はその調査のためにこの街を訪れた。
「……うわぁ~!すげぇな、こりゃ!」
目の前には、大きな山のような洞窟の入り口があった。入り口だけでも、相当な高さがありそうだ。しかもその周りは、岩壁で囲まれていて逃げ場はない。
どうやらこの洞窟こそが、例のダンジョンみたいだ。
「さっそく入ってみるか!」
そう言って俺は、剣と盾を構えながら意気揚々と中へと入っていった。
***
しばらく進んでいくと、早速敵が現れた。
全身緑色をした人型の生物だが、身体中に鱗のようなものが付いている。いわゆるゴブリンと呼ばれる生き物だ。
「おぉ〜ゴブリン!可愛いなぁ!」
俺はゴブリンの愛くるしい姿に思わずほっこりする。
彼らはこちらを見つけるなり、「ギィッ」と奇声を発して襲いかかってきた。
「おぉっと!」
俺はそれをひらりとかわした。
普通の戦士ならば、ここで相手に一閃与えるのだろうが、俺はそんな事はしない。
何故なら俺は『非殺生主義者』。可愛いモンスターをこの手で殺すなんて出来なかった。
だから俺は戦う事なく逃げる事にした。
「悪いけど、君達を殺すわけにはいかないからね……。」
そして俺は、彼らを置いてスタコラサッサと先へ進んでいった。
***
今回、俺がダンジョンに入った目的は、ここに棲みつく珍しいモンスターと遭遇すること。
しかし、肝心のそのモンスターとは未だに会えずじまいである。
(一体どこにいるんだろう?)
そう思いつつ歩いていると、ようやくそれらしきものを見つけた。
「あれ?なんか光ってるぞ?」
それは青白い光を放つ謎の大きな球体だった。
そっと近づいてみる。そして俺は、この球体がモンスターの卵であることに気づいた。
「なんだこれ!?こんなモン見たことないぜ!!」
俺は興奮気味に言った。
モンスター好きを公言している俺は、これまで様々なモンスターの卵を見てきた。しかし、この卵はこれまで見てきたものとどれにも該当せず、しかも比べ物にならないくらい綺麗なものだった。
俺は、一目見て気に入った。
触ってみると暖かく、脈を打っているようにも感じる。間違いなくこれは生きているのだ。
「こいつは大発見かもしれないぞ!よーし決めた!!こいつは俺が育てる!」
俺は卵を優しく抱きかかえると、その場を離れた。
***
街に戻るとすぐにギルドへ向かった。
ここは『冒険者ギルド』といって、その名の通り冒険者達が所属する組織だ。依頼を受けたり、報酬を受け取ったり出来る施設でもある。
受付嬢がいるカウンターの方へ行くと、彼女は笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさいませエインさん!本日はどのようなご用件でしょうか?」
「モンスター博士に会いたいんだけど、今いる?」
モンスター博士、本名はフェルト・ルシュールという女性の研究者である。
彼女は世界中のあらゆるモンスターを調べており、それについての知識が豊富にあるため、一部では『モンスター博士』と呼ばれていた。
「あぁ、はい!少々お待ちください!」
受付嬢は奥の部屋に入っていった。
***
しばらくすると、一人の女性がやってきた。
背が高くて、眼鏡をかけていて、いかにも研究者っぽい雰囲気をしている。彼女が『モンスター博士』だ。
「久しぶりだな、エイン。元気にしてたか?」
「はい、もちろんです!」
「ところで今日は何の用だ?」
「実は……」
俺は彼女に、あの卵を見せた。
「ほぅ……これが例の……興味深いな。」
「それで、この子を孵してあげて欲しいんです!」
「……ふむ、分かった。やってみようじゃないか。」
こうして俺は、モンスター博士に卵を託し、孵化を手伝ってもらった。
博士の研究設備には、卵を安全に孵化させる装置がある。これで無事に生まれてくるだろう。
博士は、卵を装置に入れてスイッチを入れた。
「さて、後は待つだけだな。」
***
それから一週間後。
「エイン!ギルドへ急げ、生まれそうだぞ!」
博士が俺が泊まっている宿屋へやって来て、そう叫んだ。
「えっ!?マジすか!」
俺は急いでギルドに向かった。
博士の研究室に行くと、既に卵はひび割れていて、今にも生まれてきそうになっていた。
「うわっ……!すげぇ!」
俺は思わず声を上げる。
新しい生命が誕生する瞬間。それは何度見ても飽きないものだ。
俺はドキドキしながらその様子を見守っていた。
「博士!どんなモンスターが産まれると思いますか?」
「さぁなぁ……私には分からん」
「洞窟で見つけましたから、やっぱり昆虫系ですかね? それとも爬虫類系? あ、もしかしたらドラゴンということも……」
俺は、生まれてくるモンスターを想像しつつ、わくわくしていた。
直後、遂に卵が二つに割れた。
いよいよ誕生である。
「おぉ〜〜…………おおっ?」
俺は思わず歓声を上げたが、途端に疑問系の声になる。
卵から孵ったモンスター。……そこにいたのは紛れもなく人間の少女。しかも可愛い顔立ちをした美少女だったのだ。
「こいつは驚いた!まさか人型とはな!」
普段クールな博士が、珍しく声を上げて驚いていた。
「人型?」
「ああ。あの卵は世にも珍しい『亜人種』の卵だったんだ。私も見るのは初めてだ!」
「亜人種?」
聞いたことのない種族だ。
「まぁ簡単に言うと、人間の姿に酷似した知的生命体の事だよ。亜人種の中には卵を産んで数を増やすもいると、話に聞いたことある」
「へー……。じゃあ、この子は一応モンスターなんですか?」
「いや……どうだろうな。見たところ普通の子供にしか見えないが……これをモンスターと呼んでいいものなのか……」
俺達は困惑する。
確かに、外見は普通の人間そのものだった。
つまり、この子はモンスターではないという事だ。
「まぁいいじゃないか。とにかく名前をつけてあげたらどうだ?」
「いや良くないですよ!?俺はモンスターの卵だと思ってここまで持ち帰ってきたのに!」
「そうは言っても、生まれたものは仕方ないだろう?」
「うーん……」
俺は腕を組んで考える。
……改めて少女の容姿を観察してみよう。
生まれたばかりだというのに、見た目での年齢は8歳くらいだろうか。
髪の色は濃い黒色で、瞳の色は血のように真っ赤色だ。
特徴的なのは、彼女の頭に生えている2本の角。小さいが、湾曲した角がばっちりそこにあった。
「黒と赤。……この子の名前は、『ルイ』にしましょう」
「ほう、ルイか。悪くないじゃないか。」
俺はルイと名付けたその子を抱きかかえた。
すると、彼女は俺の顔を見て首を傾げる。
「……?……?」
「あぁ、俺はエイン。君のパパだ。よろしくな?」
「ぱ、パパー?」
本当はモンスターのパパになりたかったんだけど、こうなったら仕方がない。
これも何かの縁だ。
責任を持ってルイと一緒に暮らす事にしよう。
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