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清姫異聞  作者: 四月朔日
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道成寺

半刻もせずに後続が追いついた。

リーダである青年を含め、総勢で20名弱程の集団になった。

早速、青年が周りのものに指示を飛ばす。

まず1名が馬で、御坊を治めてる有力者の元に出向いた。ただの挨拶だが、手には真砂庄司清重の詫び状を持たせてある。

これで現地の人間と諍いが起きても必要以上に角が立たなくてすむ。

次に茶屋でこのあたりの詳しい地図を借りてくる。

これからどうするか?

その方針を地図を見ながら考えるのだ。

あたりはすっかり暗い。おまけに今日は新月に近い為、月明かりも期待は出来ない。

おそらく安珍もこの状態での移動はしないだろう。

しかし、追われている事は分かっている。なら・・・どうするか?


青年は近くの民家、及び大きな建物を地図上で探した。

道成寺・・・地図の下段中央にその建物が記されていた。

青年が今いるところからも、そう遠くない。おそらく早足で1時間程度の距離。

安珍が逃げ込むところとしては、うってつけではないか?

青年は知らなかったが、道成寺は藤原氏に縁のある由緒の正しい寺だ。

格式、寺の広さ。どれをとっても申し分ない。


『きっと、安珍はここにいる』

青年は直観的にそう思い、その場にいた全員でまず道成寺に出向くことにした。

もし、そこに居なくても道成寺を起点に再び探せば良いだけのこと。

そう考えると、悩むこともなくまっすぐ道成寺へと足を向かわせたのだった。


一方、安珍はしばらくの間、木蔭に隠れたところで恐怖に固まっていた。

逃げなければ、と思ったが体が強ばってしまい、動くことが出来なかった。

ただ、頭の中では今後の算段をしっかりと考えていた。

日高川を越えると、海士王子が近くにある。そして、その近くには道成寺があったはず。

道成寺まで行ければ・・・。

そう思った安珍は必死で体を動かして、街道に並行な獣道の中、ゆっくりと道成寺方面に進み始めた。

時刻は逢魔ヶ時。

真砂衆が合流するほんの十数分前の事だった。

安珍、真砂衆共に理性が眠りに就き、狂気が緩やかに起き始める時間だった。


道成寺に向かったのは安珍の方が先だった。

しかし、馴れない獣道を進むおかけで安珍の進み方はひどく緩やかだった。

道成寺に着いてすぐ、助けを求めようとしたが寺の夜は早い。

灯は消えて、みんな就寝した様子だった。

仕方なく本堂に上がり、御仏の加護にすがっていたが、いつのまにか疲れから眠ってしまった。


真砂衆は安珍のように迷うこともなく、道沿いに進んだのでかなり早く道成寺に着くことが出来た。

真砂衆が着いたのは、安珍がうつらうつらと眠り始めた頃だった。

道成寺に着いた後、リーダの青年は寺の責任者に話を通そうと思ったが、すぐにその考えを捨てた。

もう夜も遅い。わざわざ住職を起こす必要も無いと思った。

ただ、寺の中に安珍を寝泊まりさせている可能性は十分にある為、全ての建物の入り口という入り口に人を配置させ、自由に出ることが出来ないようにしておいた。

そして、あまりに暗かったので松明に灯をともし、寺の中を自分たちだけで探る事にした。

松明に灯を点けても住職やお弟子さん達が出てこないところを見ると、全員寝ているのだろう。


・・・実際には数人の弟子は起きていて、物騒な連中が来たと警戒していたがそれには安珍も真砂衆も気付くことは無かった。

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