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7 かたき



 スライムのせいで汚れた私がハルナードに抱き着くと、彼は苦笑いを浮かべたがそのまま何も言わずされるがままとなった。面白くない。


「ハル、なんで私だけがスライムに襲われたの?まさか、あの攻撃をすべて避けきったわけじゃないだろうし、ハルが全く汚れていないのおかしいと思う。」

「おかしくないぞ?スライムは、スライムの体液が付いた相手を率先して襲うからな。こんな全身をスライムの体液だらけにしていれば、エリーシャばかり狙われるのは当然のことだ。」

「初耳なんだけど。なんでそういう重要なことを話さないの?いつもいつも、直前か終わった後でないと話をしてくれないなんて、意地悪すぎ!」

「何でも教えていたら駄目な人間になると思って、教えないんだ。スライムのことは、状況をよく見ればわかったはずだ。僕が全く汚れていないのに気づいたの、討伐が終わってからだよな?」

「う、それはそうだけど・・・」

 確かに、自分自身で気づけばよいことだ。気づけないとしても、情報収集くらいすればよかったのかもしれない。ハルナードに頼りきりだったことを理解して、恥ずかしくなった。


「今回の相手がスライムでよかったな。今回は50匹はいたから、他の魔物だったら危なかったかもしれない。」

「一撃で倒せるスライムだったから、何とか返り討ちにできたんだね。」

「そうだ。だが、弱いと言ってもあれだけの数を倒すのは大変だっただろう?これに懲りたら、森には入らないことだな。」

「別に好きで森に入ったわけじゃないけど。というか、ハルが連れてきたんだよね。」

「今後の話だよ。森の怖さが分からないと、一人で入っちゃうかもしれないだろ?」

「・・・あー、もういいよ。」

 私は文句を言うのはやめて、来た道を引き返すことにした。もう魔物を倒すという目的は達成したので問題はないはずだ。


 魔物を倒したら盗賊なんてことをハルナードが言っていたが、それはお断りだ。どうにか面白そうな場所を考え出して、盗賊のことなんて忘れてもらおう。

 どこがいいかな?そういえば、町と村しか行ったことが無いから、都市みたいなところに行きたいな。この国の中心地と言えばいいのだろうか。


「!?」

「へぶっ!」

 唐突に背中に何かがぶつかった。先ほどより勢いがあるが、この感触は何度も味わったのでわかる。スライムだ。


 振り返ってみれば、地面に落ちたスライムがいた。少し離れたところで、ハルナードが剣を抜いていて、襲い掛かるスライムをよけている。

 もしかしなくても、ハルナードを襲おうとしたスライムが、ハルナードがよけたことによって私に当たったのではないだろうか。


 ぐしゃっ。

 イラっときて、目の前にいたスライムを踏みつぶした。


「ちょっと、ハル!こっちにスライム飛んできたんだけどっ!」

「悪い、わざとだっ!」

 剣を振って、スライムをボールのようにこちらに飛ばしてきた。先ほどのスライムに勢いがある理由が分かった。ハルナードがスライムをこちらへ飛ばしたのだ。


 なら、こっちも投げ飛ばしてやる!

 私は剣を振りかぶって、飛んできたスライムをボールに見立てて打つ。


 びしゃっ!


「ひぃ!」

 真っ二つに切れたスライムの体から赤い体液があふれ出し、私の体をさらに赤く染めた。


「なんで!?」

「次行くぞ!」

「なっ、3球!?」

 再び打ち返そうとチャレンジしたが、普通にスライムを斬って終わった。なぜだろう?ハルナードと同じように剣を振っているつもりだが、ハルナードのようにいかない。

 ハルナードは、剣の刃の部分でスライムを打っている。同じように私もスライムに剣の刃を向けて振るが、私の剣はスライムを真っ二つにしてしまう。


「魔法?」

 ハルナードの剣技を見ながら、こちらに飛ばされたスライムを斬る。すると、私の方にも直接向かってくるスライムが現れて、一度にかなりの数が私を襲った。


「無理、無理無理無理!ハル、ちょっと、待ってっ!」

「・・・エリーシャ逃げるぞ。お前、血を浴びすぎだ!」

「それって、絶対ハルのせいだよね!?わーもうやだーーー!」

 逃げると決まれば、私は襲い掛かるスライムを無視して走り出す。一度襲い掛かったスライムはしばらく地面の上にいて襲い掛かってこないし、動きも遅い。逃げ切れるはずだ。


 ハルナードはすぐに私を追い越して、先を進む。

 そんなハルナードの前に正面からスライムが飛び掛かってきて、ハルナードはそれを剣で斬らずに避けた。当然のように私の方に飛んできたスライムを斬り、ハルナードに文句を言おうと顔をあげる。


「はっ・・・るなーど?」

 同時に5匹のスライムから襲われたハルナードは、すべてのスライムを剣ではじき返しただけで殺さなかった。殺した方が楽なのに。

 浮かんだ言葉にぞっとする。


 私、殺すことにためらいが無くなってる・・・

 いや、もちろん襲われれば殺すつもりでという意思はあったけど、スライムに襲われてもちょっと痛いだけで命の危険はない。なら、命を奪う必要はないだろう。でも、それでも簡単だからと私は、スライムを殺していた。


 いやいや、それでいい。楽だからという理由は駄目だろうが、弱くてもなんでも相手は本気で襲い掛かってきているのだ。なら、殺すべきだ。

 少し強くなったからって、私は上から目線にものを考えそうになっていた。


 あれ、でもなんでハルナードは、スライムを殺さないのだろう?


「血が付くから?」

 あぁ、なるほど。答えが出たので、ハルナードの行動をまねしようと私もスライムを殺さず攻撃を退けるように意識を向けた。


 結果、スライムが真っ二つになった。無理だ。




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