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コア  作者: 亜鶴間時間暁
2/10

コア 2



竹下雁タケシタガンに名前を呼ばれた高地悠斗コウチユウトは不機嫌だった。

朝から一番会いたくないやつに出くわしてしまったからだ。


「今日日直なの?」

あからさまに嫌な顔をしているはずの悠斗に、雁は気にせず話しかけてきた。

「違うけど」

「そうなんだ。早いからなにか用事でもあるのかと思ったよ」

「いいだろ別に…」

「こんな寒いのに体育なんてやだよね。あの先生さー…」

「悪いけど急ぐから」

そう言って話を無理やりさえぎると、悠斗は急ぎ足に自分の教室ではなく図書室へ向かった。

「あ、ごめん!またねー!」

後ろでのんきな雁の声がする。


悠斗は息を切らしながら席につくと、いくつかのプリントと問題集を机に置いた。

朝の図書室には彼の他にほとんど生徒はいなかった。

「はぁ…」

なんであんなやつと同じクラスなんだろう。よりによって大事な受験の年に。

少し呼吸を整えてから、悠斗はさっさと自習にとりかかった。


悠斗と雁は小学校からのつき合いで、家も近所なことから、顔を合わせる機会も多かった。

しかしだからと言って「仲がいい」というわけではなかった。

雁はそうでもないが、悠斗の方はとにかく雁のことを嫌っていた。

彼の何がそこまで気に入らないのか。性格か態度か…。

はっきりとは言えないが、悠斗にとって雁はある意味「天敵」だった。


しばらくして予鈴が鳴ったので教室へ向かうと、クラスメイトたちも大体集まっていた。

悠斗は自分の席についた。

「はよー。遅いじゃん」

「図書室行ってた」

「ひぇ。偉いねぇ」

「はいはい」

前後の席の友達とだらだら話す。

「ねえ高地君、あのさ…」

突然雁が声をかけてきた。反射的ににらみ返す。

「何?」

「…いや、えっと」

「なんだよ」

「うん…ごめん」

結局何も言わず雁は自分の席へ戻って行った。

「どんまい、がんちゃん」

そう言った友達も、悠斗は同じようににらんでやった。

「こっわ。なんだよ。いいじゃん、がんちゃん。あの感じ俺すきだけどねー」

「あっそ」

悠斗は机にもたれかかってふて寝のポーズをとった。


「なに言おうとしたんだろ、がんちゃん」

そうつぶやく友達の声を、 ホームルーム開始の本鈴がかき消した。


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