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プロローグ 八

  2018年3月。僕たちは別れた。

 『ねえ、翔真、私たち、今日で別れない?』

僕の頭の中では、彼女、亜紀の言ったその台詞が、何度もループしている。

 ただ、僕はまだ別れた実感を持てていないのかもしれない。今日も、もし今から僕が亜紀に電話をすれば、亜紀はそれに応じて楽しく話ができ、次のデートの約束ができる、そんな風に思っている自分がいる。

 『僕たちは、けんかをして別れたんじゃない。ただ…タイミングが合わなかっただけだ。』

 そう、その事実が、今の僕の支えになっている。

 でも、いやだからこそ、僕は亜紀に電話をすることができない。亜紀は優しいから、僕の電話はとってくれるだろう。でも、それをしてしまったら、亜紀の「フランスで勉強して、将来パティシエになる。」という夢を邪魔してしまうことになる。

 それは、絶対にしてはいけないことだ。

 『だから、僕も亜紀みたいに、強くならないといけない…。』

最近の僕は、自分にそう言い聞かせている。

 でも、やっぱり亜紀のいない世界は辛い。ふとした時の亜紀の笑顔に、僕はいつも癒されてきて、そんな亜紀がもう僕の側にいないということは、やっぱり悲しいことだ。

 僕はそんな考えごとをしながら、冬と春の境目の、大学の近くの並木道を歩いていた。

 今は3月だが、4月になると、この辺りには満開の桜が咲くのだろう。そして、春は出会いの季節。また新たな出会いが、僕たちを待っているのかもしれない。

 でも、僕の頭の中に、そんな期待は一切ない。それどころか僕は、

『そんな桜も、4月を過ぎれば散ってしまう。人の出会いなんて、そんな桜のように儚いものなのかもしれない…。』

と言うようなことを、まだ桜も咲いていないのに考えてしまう。

 つくづく、僕はバカな人間だ。

 

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