それは、言ってはいけない言葉 八
〈(2017年10月8日、2回目)〉
亜紀からのメールには、こう書かれてあった。
『こんばんは豆田さん。
それでなんですが、実は私、見たい映画があって、でも私の友達、みんな忙しいみたいなんです…。
何か、1人で行くのもちょっと恥ずかしいので、良かったら今度、2人で行きませんか?
ちなみに映画は『20kHz』です!今、話題になってますよね~!
…もちろん嫌なら構いませんが…。
返信、待ってます!
森川亜紀』
『亜紀の方から、デートに誘われた…?』
2回目のこの時間を過ごしている僕は、そのことに驚いていた。
これは、1回目にはなかった展開だ。…というか、1回目のこの時点の僕たちは、付き合っていたんだからこんな展開にはならない。
…でも、そんなことよりも、僕は亜紀からの誘いを、どうしようか迷っていた。
『僕は、亜紀と一緒にいたい。その気持ちは、今も変わらない。
でも僕は、亜紀と別れないといけない…。
なら…。』
亜紀の誘いを断ろうか、そう僕は考えたが、
『でも、亜紀があの映画を見たい、って言うなら…、
もう1度だけ、亜紀に逢おう。
そして、きっぱり別れよう。』
結局僕は、亜紀に逢うことにした。




