それは、言ってはいけない言葉 五
「良かったね~『20kHz』!」
「そうだね。」
その映画は…とても感動的なものであった。
「何か、過去の人と交信して、それで恋愛もするなんて、ロマンチックだよね~!」
「うん。僕もそう思ったよ。
でも、最後はちょっと悲しかったかな…。」
「確かに…。」
映画終了後、僕たちは感想を語り合う。
そして僕は、ふと気づいたことを口にする。
「亜紀ってさ…ホントに映画好きだよね。」
「うん?…まあ、そうかな…。
確かに私、映画とかドラマとか好きかも!
あと、恋愛小説なんかも好きだよ!」
「やっぱり!?ちなみに僕は、SF関係が好きなんだ!」
「あ、そういえば翔真、SF研究会にも入ってるもんね!ホントにSF好きなんだね~!」
そう僕たちは言い合い、笑った。
その亜紀の笑顔はとてもまぶしくて、見ているこっちまで、元気にさせられるようなものであった。
「うん?…翔真、どうしたの?」
「え、い、いや…亜紀、かわいいな、って思って。」
「ちょ、ちょっと…!」
普段色白の亜紀は、その僕の言葉を聞き、顔を真っ赤にする。
「や、やめてよ…!」
「ごめんごめん。僕も、こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど…。」
そのリアクションを僕はさらにかわいいと思いつつも、少し申し訳なく思う。
「とか言って翔真、みんなにそんなこと言ってるんじゃないの?」
「い、いやそれはないよ。僕、そんなキャラじゃないし…。」
その僕の言葉を聞き、彼女は笑う。
「分かってますって!翔真はそんな人じゃないもんね!
これでおあいこだね!」
『何だ、冗談だったのか。』
僕は心の中で、そう思う。また、彼女に一杯食わされた形になった僕だが、悔しさなんかは全く感じなかった。




