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ダブルデート 十四

 「豆田さんって、車の免許持ってるんですね。

 私、まだ教習所に通ってるんです…早く免許が欲しいんですけど。」

 助手席から、どこかで聞き覚えのある台詞が聞こえてくる。そう、僕は亜紀を乗せて、目的地のレストランまで走っていた。

 実は達紀から、

『とりあえずお前もレンタカー借りてきたんだし、2対2の配車な!』

と、僕は直前に言われていた。

 「あ、でも、僕も免許取りたてなんです。

 それでまだ運転、慣れてなくて。」

僕も、過去に言った覚えのある台詞を口にする。

 1回目の時にあった、亜紀を乗せる緊張感は、今はもうない。しかし、やっぱり僕は、車の運転には慣れていない。

 そして、僕はその先起こることを、容易に想像することができた。ここは、「過去」の世界だ。と、いうことは…。

 「申し訳ございませんお客様。ただ今、当レストランの厨房機材が壊れてしまいまして…。」

やっぱり臨時休業だ。この点は、過去、1回目の時と、変わっていないらしい。

 「なあ翔真、この後どうする?」

達紀の耳打ちも、1回目の時とおんなじだ。そして僕は、パニックになってしまった1回目の時を思い出す。

 『そうだ。ここは、1回目と行き先を変えて…。

 …でも、わざわざ変える必要ってあるのかな?もう僕は、亜紀と『別れる』つもりなのに…。』

そう思い、また亜紀との「最後の」想い出も同じ場所で作りたいと思った僕は、結局達紀たちに同じ場所を宣言する。

 そして、僕たちは前と同じデパートに向かう。

 そこでのエレベーターの「開く」ボタンを見て僕は、亜紀に自分の告白を受け入れてくれた時のことを思い出す。

 『あの時亜紀は、エレベーターの開くボタンを長押しする僕を褒めてくれた。

 あの時は、本当に嬉しかったな…。』

そう思うと、僕は泣けてきた。

 「おい翔真、ちょっと涙目じゃない?」

その様子に気づいた達紀が、1回目の時にはなかったであろう台詞を僕に告げる。

 「ごめん、ちょっと目にごみが入っちゃって…。」

 僕は、そうごまかす。

 そしてその後は、前にも聞いた達紀のダメ出しであった。

 しかし前とは違い、僕はそのことで落ち込んだりはしない。

 ただ、この後のランチ、そして今日の「日課」が「最後の」亜紀とのデートになる…その事実は、僕を落ち込ませる。

 『でも、これは自分で決めたことだ。だから…。』

 僕は、もう一度気合を入れ直す。

 

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