ダブルデート 十三
「なあ達紀、貴子さんとけんかしたんじゃなかったの?」
僕は達紀に近づき、貴子さんと亜紀に聞こえないようにひそひそ声でそう達紀に話しかける。
「あ、あれ?まあ、嘘も方便、って言うか…。」
達紀もひそひそ声で、そう答える。
「…嘘だったんだ。」
「まあいいじゃんか。俺も、たまにはダブルデートみたいなことしたくって、お前と森川さんを呼んだんだよ~。
今日は楽しもうな!」
「…でも、何で亜紀…森川さんなの?」
僕は「亜紀」と呼んでしまい、慌てて「森川さん」と呼び直す。
「ほとんど話したことのない」はずの亜紀を下の名前で呼ぶのは不自然だと思い、とっさの判断でそうしたのだが、それが功を奏してか達紀はその「不自然さ」に気づかなかった。
「いいじゃんか。森川さんかわいいし、お前の彼女にピッタリだと思って…。」
「えっ…、」
僕はそう言われ内心嬉しくなったが、ここで喜んでは僕の「別れる決意」が台なしになる、そう思いそれを顔には出さないように努めた。
「何だよお前、森川さんが嫌いなの!?」
「き、嫌いじゃないけど…。」
それどころか、僕は亜紀のことが今でも大好きだ。しかし、今それを言うわけにはいかない。
「じゃあいいじゃん!改めて、今日はよろしく!」
達紀はそう言い、スマイルを見せる。
そこで、僕は考える。
『まあとりあえず、僕が亜紀に告白しなければいいんだ。とりあえず、今日の日が終わってしまえば…、
僕たちは、『別れる』ことになる。』
そして、今日は4人で楽しもう、僕はそう自分に言い聞かせた。




