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出会い 十一
「じゃあ次、豆田翔真、森川さんと打ちなよ!」
聞いたことのある言葉が、部長の口から出る。
「は、はい…。」
「あ、豆田さんですか。よろしくお願いします!」
「よ、よろしくお願いします…。」
僕は前と同じようにどもりながら、そう答えた。
しかし、と言うかもちろん、と言うか、僕の心境は前とは、違った。
『これが、亜紀と打ち合う最後のテニスになるんだ。だから…、
この時間を、楽しもう。』
僕はもしかしたらこのサークルの時間が終わった段階で、元の時間(「未来」)に帰るかもしれない。また、たとえ帰れなくても、僕は彼女のいるこのサークルに、彼女がフランスに行き、ここを去るまで顔を出す気はなかった。
そして、僕たちはラリーを続けた後、ミニゲームをする。




