プロローグ 十二
ちなみに毎週日曜日は、そのSF研究会の活動日だ。あと、このタイムスリップの件をサークルメンバーのみんなに報告したら、みんなは「すげーなそれ!」などと言って喜ぶかもしれない。でも僕は、今はそういう気分にはなれなかった。
あと、もう1つのサークルは、テニスサークルだ。僕は高校の頃より硬式テニスをやっていて、それを大学になった今でもサークル活動で続けている。ちなみにこのテニスサークルの活動日は、毎週水曜日だ。
そこまでふと思った僕は、あることを思い出す。
そう、それは亜紀との出会いの場面だ。
亜紀は、僕が所属しているテニスサークルに、2017年の10月から入ってきた。
そう、それは、「今」から3日後の、2017年10月4日、水曜日…。
そこから、僕たちの恋は始まった。
でもはっきり言って、今の僕はその日を迎えるのが辛い。僕は亜紀のことが大好きだが、「その日」を迎えてしまうと、その恋の結末を知っている身とすれば、ただただ「辛い」だけだ。
ここで僕は、ある考えに思い至る。
『そうだ。その日、亜紀に出会わなければ、僕はこんなに苦しい思いをすることなんてなかった。
10月4日、水曜日に、僕がサークルに行かなければ…。
…いやでも、僕は亜紀のことが好きだ。このまま亜紀に逢えずに終わってしまうのはやっぱり辛い。
…なら10月4日、とりあえずサークルには行こう。そして、その日初めてサークルに顔を出すであろう亜紀に、話しかけるのは止めよう。
そう、一目、僕は亜紀を見て、亜紀のことを忘れよう…。』
僕は、そう決意した。
もしかしたら、人には「運命」というものがあるのかもしれない。そして、僕と亜紀は、「別れる」運命だったとしたら…。
僕たちは、最初から始まらない方がいいのかもしれない。
そして、そんな「別れる」運命の縁なんて、最初から結ばれない2人の縁なんて、
消えてしまえばいい。
僕は、そんな風に思った。そして、10月4日、水曜日を迎えることにした。