Rage?エイス怒りの鉄槌2
飛んで帰ってきましたウィーロの街。懐かしいな、あの旅立ちの日を思い出すと胸にこみ上げてくるものがあるな。まさか俺に第二の故郷が出来てしまうなんてな、感慨深いぜ。次に帰ってくるときは、錦を飾る時だと思っていたもんだが、こんなに早くなっちまうとはな。
あれ?突っ込みが来ない。いつもならハイディさんの切れ味抜群の突っ込みが来るのに。寝てるのかな?
「うぅぅぅぅぅ……」
呻き声が聞こえた。まさか、どこかに魔物でもいるのか!?しかし、発生源は思ったより近く――脇の下からだった。
うん、そうだね、ハイディだね。完全グロッキー状態。酔いやすい体質だったのか?いや、馬車に乗っていた時は普通にしていたし、なにがダメだったのか。
「着いたなら早く降ろして!!」
「ウス」
どうやら高所がお気に召さない様で。おかしいなぁ、俺なんか魔法の実験していて一番楽しかった瞬間なのに。だって空を飛べるんだぜ?一度はやってみたいやん?
しかし、本気で参っているようなのでいざ地上に。
ちなみに、上空から見た感じではウィーロの街に異変はあまり見てとれなかった。普通に住民が歩いていたし、商売も行われているように見えた。ある一部を除いてはだけど。
「やっと地に足が着いたわ……ありがとう重力……」
大袈裟だな。よし、ここの事件が片付いたら次の街には飛んで行こう。ハイディさんにも慣れてもらわないと。今後、空飛んでの移動も視野に入れるとするか。
さて、ここからどうするかだけど――ハイディの体調の回復を待つのもあれだし、パパッといって片付けちゃうか。いくら魔法使いだと言っても、まさかスオウ程のやつが出てくることもあるまい。
「よし、俺がパパッと片付けてくるから、ハイディは教会に行って皆の無事を確認してきてくれ」
「はぁ?何言ってるのよ!?私も着いていくわよ!!」
元気じゃねぇか。
「その調子じゃ無理だろ?大丈夫だって、すぐに終わらせてくるから」
「あ、ちょ!!待ちなさい!!」
と言う制止の言葉も聞かずに、俺は上空へ。そして目指す先は――明らかにおかしい建築物へ。
あれ、ゴーシュの館があった場所だよな?すなわち街の中心部なのだけれど、あんな禍々しい建物じゃなかったはずだ。
つまり、ザインってやつが建てたってわけか。拠点のつもりか?悪趣味すぎる。デザインセンス無さすぎだろ。前衛芸術って言われたらそうなのかも知れないが、あんなSAN値削られそうなデザインは景観によろしくない。取り壊そう。
そして俺はそのまま街の中心部へ向かう。そこに何が待ち受けているかも知らないまま。
「もう、エイスったら。私を独り置いて行くなんて酷いじゃない」
しかし、また空を飛ぶのは御免被りたかった。そして、教会の人たちの安全の確認をしたかったのも事実。
空を飛びながら、ウィーロの街で何が起きているのかを掻い摘んで説明されたんだけど、正直あまり頭に入っていない。何を言ってたかしら?
大体、無理な話なのよ。だって足が地面についていないのよ?ジャンプするとかそんな軟なモノじゃないのよ?
一応、空を飛ぶ魔術は存在する。しかし、その魔術ではエイスほど高くは飛べなく、エイスほど速く飛ぶことはできない。
「本当になんでも有りなのね、あの娘」
魔法使いの底知れなさを身を以て思い知ったわ。
愚痴っている内に体力が回復してきた。少しは動けるわね。
それにしても、誰かに襲われたらどうするつもりなのかしら?そんなことさせるつもりはないけど。
私は恐る恐る、街に入ってみた。素通りで来た。
「あら?普通に入れたわね。そういえば、門番の人がいないような?」
早速異変と出くわした。どういうこと?いつもなら門番がいて、身元確認と言うか、そういった類の事があるはずなのに。もしかして街の防衛が機能していない?
そのまま街へ繰り出すも、普通に住民はそこにいた。
「あら?普通にいるじゃない」
商売もいつも通り行われているわね。何人か知った顔があったわ。
だとしたら、どういうことなのかさっぱり分からない。
この街を侵攻してきた魔法使いはザイン。
ザイン・デイカ。エイクの街の魔法使い。
確か、あの魔法使いは街の外どころか(・・・・・・・・・・・・・・)、部屋の外すら出ない(・・・・・・・・・)とも言われていた、引き籠りの魔法使いじゃなかったかしら?
そのザインがウィーロを侵攻?俄かに信じがたい話だわ。
しかし、聞けばシエンさんも動揺を見せていたってエイスから聞いた。そんな感じのことを言っていたようなおぼろげな記憶が甦ってきたわ。
それほどの魔法使いだったのかしら?シエンさんの強さは闘技場で見ただけでも、かなりのものだと思う。
なにか心境の変化があったのか、目的があったてのことなのか。今の私には知る由はないわね。
「そこのお嬢さん、どちらに行かれるのかね?」
「え?」
知らないお爺ちゃんに話しかけられた。あら?いつの間にか取り囲まれているじゃない。余計な考え事をしていたせいだわ。
それにしても、取り囲んでいる人たち、見事にバラバラじゃない。老若男女って言うのかしら?色んな人たちがいるわ。それになんだか怪しい雰囲気。適当に言葉を濁して立ち去るのが賢明ね。
「ええ、ちょっとそこまで」
てんでバラバラの人たちだが、共通点があった。
あれはカミラ神の紋章だわ。体のどこかにカミラ神を奉る紋章を付けているのが分かった。
そして、あの眼をかつて私は見たことがある。あれは狂信者たちと同じだわ。思い出したくもなかったけど。
「おお、ならば我々が着いていきましょう。なに、遠慮することはありません。これも神の思し召しと言うもの」
「いえ、私一人で大丈夫ですので」
どうして着いてこようとするの?脱兎の如く逃げ出したいけど、囲まれている。そうよ、囲まれていたわ。逃げ出せないじゃない!!
「あのー、私そろそろ行かなくちゃいけないので、通してもらえませんか?」
「なんと慎ましいお嬢様だ。皆の者!!このような可憐な少女こそ、我らの司祭様へ献上すべきではないでしょう!?」
「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
献上?司祭様に?
「冗談じゃないわよ!!」
「あ、逃げたぞ!!」
逃げるわよ!!逃げるに決まっているでしょ!!
いくら囲まれているとはいえ、隙間はある。そして私はまだ子ども、すり抜けて走り去ることくらい造作もないわね!!
「って、追いかけてきてる!?しかもすごい早い!!」
「待ちなさい!!ぜひ我らの司祭様への供物となってくれい!!」
供物!?ふざけるんじゃないわよ!!そんなものになるものですか!!
しかし、悲しいかな、足の長さの差か。どんどん差が詰まってくる。あのお爺ちゃん、どこにそんな速さを秘めていたのよ!?
路地に入ったりして撒こうとするも、上手くいかない。いや、数は順調に減ってきて――増えてない?
他の住民と合流して私を追いかけている。そこまでするの!?
ダメ、このままじゃ捕まっちゃう!!
「こっちだ、小娘!!」
私の腕を掴み、更なる路地裏に連れ込んだその人は――
「あ、あなたは――」




