修羅の街へようこそ!!3
そして、エイスが何度目かのイカサマ疑惑をかけられ、とうとう掴み掛ってきそうな状況までなった。
随分落ち着いているですって?あのドラゴンとの対峙に比べたら、ねぇ?
エイスも迎撃する気満々だったが、制止の手が意外なところから出てきた。
「そこまでにしていただきましょうか」
そうシエンさんが手に剣を携え、エイスと男たちの間に割って入った。
あら?あんな剣持っていたかしら?
「私が見る限り、彼女たちがカードに何か仕込んだようには見えませんでした。これは神に誓ってでも断言できます」
「し、しかし!!おかしすぎるだろうが!!このガキ、毎回チェンジなしで役が出来ているんだぞ!?どんな確率だよ!?」
「極低確率ではありますが、そんなこともあるでしょう」
「だ、だけどよ!!」
「私が裁定役になることにも同意しましたよね?これ以上まだ何かあるというなら、コレで片を付けますか?」
といって鞘から剣を抜くそぶりを見せる。この人も案外そっち側の人だったのね。
「分かったよ……」
「お、んじゃ賭け金の支払いよろしく頼むぜ」
負けた3人組からお金を取り立てるエイス、酷くシュールだ光景だわ。
なんにしても、これで静かになったのだから結果オーライってところかしら。私、どんどんエイスに影響されていないかしら?危険だわ。
「ようやく静かになったことだし、寝るか、ハイディ」
「ええ、お休みエイス」
自分のためか、私のためだったのか、分かりにくいわね、相変わらず。
お休みなさい、エイス、良い夢を。
「彼女たちに手を出すのは止めておいた方があなた方の身のためですよ」
お、アイツらを引き止めるのか。
カードゲームでガラの悪い3人組から金を巻き上げ、気を良くして寝る――フリをして動向を探ろうと思ったが、案の定俺たちを襲おうとしてきた。
しかし、それを止めたのがシエンと名乗った若い兄ちゃんだった。
向こうさんは声を荒げる訳にはいかず、メンチを切っているが、役者が違う。完全にシエンの雰囲気にのまれている。この兄ちゃん、ただの剣士じゃないのか?
「どうやら、彼女には寝ていても身を守る手段があるようですし――それに私の目の前でそんな狼藉を見過ごすわけにはいきませんから」
鳥肌が立った。オッサン3人組も完全に言葉を失っている。これが殺気ってやつか?すげぇよ、初めて感じた!!
「そうですね、それが賢明な判断ですよ」
フッと殺気が消え、幌内の空気が和らいだ。これが本物の剣士ってやつなのか?良い体験したぜ。つか、俺が起きていること気が付いているよな絶対。
そんな中、グースカ眠り続けているハイディさんマジパねぇっす。
ま、これで俺たちに手を出してくる事はないだろうな。シエンが守ってくれるみたいだし。庇護欲をそそるのかしら?
それじゃ、お言葉に甘えて眠ると、したいところだったけど、シエンが俺の横に座り話しかけてきた。寝させろよ。
「本当は起きているんでしょ?」
「気づいているのに聞くなよ」
いや、マジで寝させろよ。こちとら見た目幼女なんだぞ、こんな夜更けまで起きていることが問題だっていうのに。
「一応聞いておこうかと思いまして……どうしてあの役で勝てたんですか(・・・・・・・・・・・・・・・)?」
「ロイヤルストレートフラッシュに勝てる役はファイブカードだけだからだよ」
「いえ、役の強弱の話ではなく――言い方を変えましょう、なぜあの方々はブタをロイヤルストレートフラッシュと思い込んだのですか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」
「答え出てるじゃねぇか…」
OH、完全にバレテーラ。ま、そりゃそうだ。
「カードに仕掛けを施すのはダメ、裁定者・ディーラーにも仕掛けるのはダメ、じゃあどうするか。答えは簡単、対戦相手を騙すだけ」
「やはり、魔術師でしたか」
「そうじゃなきゃあんな勝負仕掛けねぇよ」
そう、俺はゲームが始まる前からあの3人に魔法をかけた。『俺の言うとおりにカードの絵柄を認識する』みたいな感じの魔法を。
ゲーム開始前に仕掛けたらそれはもうイカサマじゃないしよね?よね?アイツらがトランプで遊んでいるのは見て分かったから、先んじて魔法をかけ、トランプ勝負に持ち込んだ。タネを明かせばこんなもん。
「私がイカサマ判定すると思いませんでしたか?」
「イカサマはしてないしな~、勝手に向こうが自分たちの負けだと認識しただけだし」
「悪い子ですね」
「最近よく言われるよ」
なんでだろうね、結局お金は巻き上げるけど、街に着けば解放する気だったし、寧ろ優しくね?人間バファリンだよ。
「やれやれ、本当に末恐ろしい子ですね。敵対したくないと思いましたよ」
「ははは、俺とこの子に危険が及ばないなら大丈夫だよ」
「ええ、肝に銘じます」
そう言ってシエンも眠りについた。俺もそろそろ寝よう、つか寝たかったんだよ本当に。それなのにみんな起こしてくるし……寝る子は育つんだぞ?大きくならなかったらどうするんだよ。
これから向かうナイムの街に思いを馳せながら、眠りにつくことにした。さて、どんな街でどんな魔法使いがいるのやら。




