泥沼から救われて
翌朝、私たち四人は王宮に呼び出されていた。
早く北の領地に帰りたかったけれど、王様からの正式な呼び出しだと言うから仕方ない。
王の間には私たちと景子先生、三王子と魔術師のツァハリアスが揃っていた。
「先日の結婚式は誠に、残念であった。…今日の話は結婚式が無事に終わったのちに発表しようと思っていたのだが、あのような結果に終わったため早急に通達するべきかと思い、皆に集まってもらった」
王はゆっくりと立ち上がり、隣に座る景子先生に腕を差し伸べた。
腕を組んだ二人はひな壇に並んで立っている。
「この度、私は景子殿と婚姻の誓いを立てた。夏には二人の子どもも産まれる。皆には、新たな王妃と救世主の誕生を祝って貰いたい」
景子先生が結婚。そして子ども⁉
そういえば結婚式の時の先生は少しふっくらして見えた。
そして今、王の隣で恥ずかしそうにお腹を撫でる先生は幸せそのものだ。
三か月あれば恋は可能、どころじゃない。
三か月あれば子どもが出来ちゃうんだね…。
私たちだけじゃなく、王子たちもみんな呆然としていた。
ぱちぱちぱち。
静まり返った室内で、ツァハリアスだけが拍手をする。
「異世界人が王の子を生し、その子がいずれ魔王の封印を結び直す。これにて予言は成就されました。次期王も、お二人の子どもで決まりですね」
「なっ…」
第一王子が信じられない、と言った様子で膝から崩れ落ちた。
異世界人との子を生し、その子が大人になるまで王の座に着くのは三兄弟やその親族、クラウスたちだと思われていた。
でも次期王候補ではなく、現在の王が予言を成就したとしても問題はない訳だ。
思わぬ事態の解決に、私たちまで膝から崩れ落ち落ちそうになった。
王の結婚式は景子先生の体調が安定してから、とのことだった。
晴香とイェルクも、同じ頃に式を挙げようと言っているらしい。
クラウスまで、春には式を挙げませんか、なんて言っている。
私たちは婚約もまだなのに。
とりあえずお義父さんお義母さんの待つ北の領地に帰ることにしました。
二人が本当の義理の親になる日も近いのかも知れないね。
人生どん底、底なし沼に落ちた私は、五番目の王子様に救われました。
その後彼は私の、初めての王子様になったのだけれど…
その話はまたいつか、ね。