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運命の相手

 

 ノックの音で目覚めると朝だった。

 久しぶりにスッキリした気分で目覚めると、隣でクラウスが眠っている。

 昨夜のことを思い出して赤くなるのと、コレットの声に青くなるのと、どっちが早かっただろうか。


「おはようございます理帆様!入ってよろしいですかー?」

「ちょっと待って!まだ開けないで!」


 必死でクラウスを揺すると彼もまた少し赤くなり、その後真っ青な顔でバルコニーに飛び出していった。いてっ!とかガツン!なんてすごい音が聞こえていたけれど、大丈夫だろうか。


 やがてロープが回収されて見えなくなったので、部屋のドアを開けた。

「おはようございます、珍しいですねベットに横になっていらっしゃらないなんて」


 朝方になるとようやく眠れる私、いつもならベッドに横になったままで、コレットにカーテンを開けてもらっていたのだ。


「ひ、久しぶりに早起きしたからちょっと外の風に当たっていたの」

「開けっ放しの窓をごまかすために、私は必死で言い訳を口にした。


 明日からは部屋の鍵をかけて寝よう。

 今まで明けっ放しだったから、今度は部屋に鍵をかけるための言い訳が必要だけれど。





 十七歳の乙女が、男性に添い寝をしてもらうというのもちょっとアレだけれど。

 結局私の不眠や不安は、クラウスに添い寝をしてもらうこと、眠りにつく前に色々な話をすることだけで収まってしまった。


 やっぱり、カイザー成分が足りなかったのだと思う。

 犬似のクラウスさん、マジ天使。


 そんな話を水晶玉でしていたら、通信相手の晴香が呆れたように言った。

「クラウスはまだカイザーの代理扱いなの?いい加減、付き合いだしたのかと思ってた」

「付きッ…!いやいや、クラウスが親切にしてくれるのって私に対する責任感からだと思うし、私だってカイザーに似ているから心を許してしまうだけで…」


 ふぅん、と晴香は言った。

「そんなにカイザーが恋しいんなら、似たようなシベリアンハスキーを召喚してもらえばいいんじゃない?私も魔法使いさんにどうしても読みたい本を召喚でお取り寄せしてもらったし。相当高額だけど」

「そういうんじゃないんだよ。同じような見た目でも、魂が違ったら全然意味がなくて…」


 言いかけて私はあっ、と気が付いた。


 晴香は意地悪な顔で笑っている。

「見た目だけ、じゃダメなんでしょ?だったら理帆はどうしてクラウスといて安心するわけ?そこをちゃんと考えなきゃ」

「…ちゃんと考えます」


 クラウスに相談できない謎が一つ、出来てしまった。

 とりあえず、輝帆の問題が解決してから考えよう。





 とにかく無事寝られるようになり、穏やかな日々が続いた。

 そうして気が付けば、今日は輝帆の結婚式だ。


「結局会うことも話すことも出来なかったね…」


 ここは塔の一室。

 また五日かけて王都にやって来た私とクラウスは、晴香とイェルクに会い作戦会議だ。


 とはいえ進展はまるでなし。

 輝帆も美月ちゃんも、王宮の奥で厳重に守られて、現王主催の舞踏会にすら出てこないのだとか。

「二人とも、強く願えば元の世界に帰ることが出来ますから、望まぬことを無理強いは出来ないと思います。しかし三か月の時間がありましたから、第一王子にほだされ恋に落ちたという事態も起こり得るかと…とにかく仲の悪い三兄弟ですがそれぞれ見た目は前王妃似のイケメンで、悪い評判も聞きませんから」


「輝帆が結婚…ううう美月ちゃんはーー!」

 輝帆の怒りを恐れ、あまり彼の内面に踏み込まずに生きて来た情けない姉だから、今の彼の真意は分からない。


 でも私の目からみた二人は、お互いに想い合っている、素敵なカップルだったはずなのに。


「もしかしたら美月ちゃんも第二王子と恋に落ちてるかも知れないよ?最初の恋が永遠に続くだなんて、理帆はちょっと夢を見すぎなんだよ」

 ううう、だって…と泣きごとを言おうとして晴香の顔を見ると、なぜかイェルクに両肩を掴まれ真顔で詰問されている所だった。


「晴香は最初の恋が永遠に続くとは思わないのですか?それとも私は二番目の恋の相手?どちらにしろあまり面白くない話なのですが」

「い、今のはあくまで一般論で」

「そうですか、では永遠に私の側にいると誓ってくれますね」

「ーー!イェルク、理帆とクラウスが見てるから後にして!」

「では続きは二人きりの夜に、約束ですよ」



「は、晴香さん…?」

 頬を赤くし、涙目になった彼女は大層可愛らしかった。


「ええと…理帆、報告が遅くなってごめん、私はイェルクと婚約しました…」

 彼女の右手に、イェルクの目と同じ色の宝石がついた指輪がきらり。


「い、いつの間に⁉」

 声を揃えて驚く、私とクラウス。

「塔に落ちて来た瞬間から、彼女は私の運命でしたよ?」

 笑顔でそう語るイェルクに、三か月で恋は可能なんだと改めて思い知らされる。



 目と目があったその日から、恋の花咲くこともある⁉

 輝帆は無事なのでしょうか。私は弟の貞操を本気で心配した。

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