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八八 ルビビニア町内へ

 一方の主力部隊はといえば、ティナの心配は当たることなく、数に任せて突破することが出来ていた。

 流石の天政府軍も、その人数の数十倍もの大所帯で攻め込まれると、やはりひとたまりもないものではなく、壁のように押し寄せるミュレス国軍の大部隊を目の前にして逃亡した兵士もいたようだった。

 とはいえ、こちらでは多少の戦闘もあったらしく、ミュレス人の犠牲者が全くいなかったかというと、そうでもないようであった。

 増援があまりいなかった事に若干の疑問を懐きつつも、エレーシー達の部隊は勢いそのままに門を潜り抜け、町の中へと入っていった。


 ルビビニアの町の中に入ると、天政府人も、そして僅かばかりのミュレス人も何食わぬ顔をして通りを歩いており、いつも通りの日常を送っていた。

 エレーシーは一瞬、少し羨ましく思ったが、すぐさま自分達の目的を思い出した。

「ルビビニアの皆さん! 私達は、ミュレス人による国、ミュレス国軍です!」

 一瞬何事かと疑問に思った町民達は、その人数に誰もが驚いた。

「これより、このミュッル=アミト=ルビビニアを我々ミュレス人の手に取り戻すため、この町の中心となる町役場の占拠に向かいます! 占拠が成功すれば、この町における天政府人による支配は終わり、我々ミュレス人が大手を振って日の下に歩ける町になります! そのために、どうかご協力下さい!」

 エレーシーの呼びかけに、ミュレス人達は当然のごとく喜び、天政府人達はこちらも当然怒り、罵声を浴びせた。

 その中には、恐らく自分に隷属していたミュレス人だったのだろうか、手を強く引っ張って自分の家へと戻ろうとしている天政府人もいた。

「支援部隊、一般住民の保護に回れ! 乱暴をしている天政府人からミュレス人を守れ!」

「はい!」

「主力部隊と弓矢部隊は、町役場を見つけ出して占領に向かう! 主力部隊の第7班は、町民に町役場の場所を聞いて報告せよ!」

「了解!」

「残りの部隊は町役場に向かうが、まずこの通りを封鎖する! 東西南北、どこから増援の天政府軍が攻撃してきても対応できるように、防衛体勢をとれ!」

「了解!」

 部隊の殆どが町内に入った途端にせわしなく号令に従って持ち場につき、おそらく町の中心と思われる、大通りと大通りの交差点の四方を一旦封鎖してどこから天政府軍が現れてもいいように体勢を整えた。

「増援は来なかったのかな?」

 エレーシーは町役場の情報が手に入るまで、四方を見渡しながら天政府軍が来るかどうかを見張っていた。

「さあ、確かに門の中に入っていったんだけれど……」

「もしかして、さっき戦った天政府軍の中に増援部隊もいたのかも……」

「門を突破されて逃げたとか?」

「どれもあり得るような気がするわね……」

「そうだなあ……よし、この町の門の場所も聞いておこう。来ないなら、こっちから訪ねてみても良いかもしれないし」

「向こうの作戦では……?」

「そうだとしても……ここで手を拱いているばかりでは……」

「待って、待って。ここは慎重に行きましょう」

 エレーシーは、自分の中にあった焦りに気づき、深く息を吐いた。

「そうか、そうか、よし・・・よし、ここはやはり、町役場の奪還に専念しよう。主力部隊の第7班と支援部隊が帰って来たら行動を開始しよう。支援部隊は、今、街道を封鎖している主力部隊と交代して四方を囲む。そして、主力部隊と弓矢部隊で町役場の制圧に向かう。もちろん、その間に天政府軍の増援部隊が来たら、支援部隊が応戦するとともに、主力部隊まで連絡する。これで良い?」

 エレーシーは、冷静になって考えた案を軍幹部に話し、ティナに了承を得るように伺いを立てた。

「ええ、そうね。私もそれで良いと思うわ。各部隊の指揮はどうする? このままで良い?」

「姉さんは主力部隊に付いた方が良いと思うわ。支援部隊は突破される恐れもあるから」

「じゃあ、私と貴女とエレーシーで主力部隊と弓矢部隊の指揮を執って、アビアンが支援部隊の指揮を執るって事にしましょうか」

「うーん、私も四方全てを見る自信は無いかな……」

「それなら、私も支援部隊に付くわ。姉さんとエレーシーさんで主力部隊を率いていけば、丁度釣り合いが取れて良いんじゃないかしら?」

「それで行こうか」

「そうね、それで行きましょう」

 支援部隊が帰ってきたところで、エレーシーは支援部隊と主力部隊の両方にこれからの作戦について説明し、支援部隊を即座に配置に付かせた。するとまもなく、第7班が町民から町役場の場所や内部構造に至るまで聞き出すことに成功して帰ってきた。

 エレーシーはその情報をティナに伝え、彼女達が聞き出した内部構造を元に、どのように攻略するのか予めざっくりと検討しておくことにした。


 数分間の簡単な協議の後、再び全員集まった国軍兵士を前に、エレーシーは改めて声を上げた。

「よし、ルビビニア奪還最後の仕上げと行こう! やることは、これまでの街々と同じ。町役場の奪還に向かう! 再び、ルビビニアの街を我々ミュレス民族の下に取り戻そう!」

「オーッ!」

 兵士達の士気を上げると、軍は再び、街道の幅いっぱいに展開しながら、町役場へとゆっくりと進軍し始めた。

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