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八七 ルビビニア東門外の戦い(支援部隊)

「私達も行くわよ! 第二次進撃開始!」

「はい!」

 主力部隊が全員動き始めると、支援部隊を率いるティナも自らの部隊を草原へと突き進め始めた。

 支援部隊は主力部隊の後を追うように飛び出すと、途中で弧を描くように前を行く部隊から分かれ始め、先程弓矢部隊を追いかけていた天政府軍の一団の後ろを追いかけた。

「天政府軍だ! 引っ捕らえよ!」

 草原の真ん中を力の限り走り続け、ある程度天政府軍に近づいたところでティナは大きく声を張り上げて命令を下した。

「むっ! 後ろからもミュレス人が……!」

「しまった、これは罠か!?」

 ティナの声でようやくミュレス民族の攻撃が小規模なものではないことに気づいた天政府軍の兵士達は、思わずその場で足を止め、辺りを見回して一刻も早く現状を理解しようと試みていた。

「射撃準備!」

 その時、森の中へ走り去ったはずだった弓矢部隊が再び、天政府軍の前に現れた。

 ティナの号令を聞いて踵を返し、戻ってきたのだ。

 弓矢部隊の兵士達は、先程と同じようにまた一列に並び、いつでも射ることが出来るように矢を番えながら天政府軍をじっと睨み続けた。それを見た支援部隊の面々も同じように剣を抜き、盾を構え、即座に攻撃ができるように体勢を整えた。

 一方の天政府軍も反射的に剣を抜いた。

 暫しの間、天政府軍とミュレス国軍の間には、遥か遠くで走っているであろう主力部隊の足音以外響かない、非常に張り詰めた、一触即発の空気が流れた。

 この空気を打ち破るべく、ティナは支援部隊の剣士達の前に出て(流石に防御部隊の前までは出ていかないが)、おもむろに話し始めた。

「さあ、天政府軍の皆さん。百戦錬磨の貴方達なら、この状況が理解できるわよね。もちろん、貴方達がそのままこちらに刃向かってきた時にどうなるのかも……」

 ティナが話をしている間に、アビアンはほとんど死角が出来ないように弓矢部隊を動かしていた。

 もはや、この天政府軍の一団には、刃向かって勝ち目のない戦いに挑むか、それともティナ達に従うかの二択から選ばざるを得なくなっていた。

 天政府軍の兵士達は、お互いに目だけを動かしながら、目線で会話をしているようだった。

 だが、肝心の回答は誰一人として口に出さなかった。

 ティナはちらっと門の方に目をやると、再び目の前の天政府軍を厳しい目線で刺すように眺めた。

「……なるほど。皆、私の0の合図で突撃しなさい。それは貴方達への猶予期間よ」

 ティナはそういうと、右手を天高く掲げ力強く広げた。

「5……」

 ティナが数え始めると、天政府軍の兵士達の目はより一層早く動き、仲間の様子を伺っている様子も感じ取れた。

「4……3……」

 ミュレス国軍の兵士達が示し合わせたように剣を構え直した。

「2……」

 次第に、お互いに異様な緊張感が増していくのを誰もが感じ始めた。

「1……」

 ティナの次の0の合図を今か今かと体に力を入れて待っていると、天政府軍の兵士の一人が途端に手を上げた。

「……よし、投降しよう」

 その兵士はティナに向けて一言そう告げると、剣を地に投げ捨てて両手を上げた。

「分隊長……」

 その後ろにいた兵士はやや咎めるように、小さく呼びかけた。

「こうも囲まれてしまっては、もはやどうにもならない」

「ですが所詮……」

「この人数差で勝てると思うのは、いくらなんでも彼女達を甘く見すぎだろう」

「しかし……」

「今思えば、あいつらの後を追いかけた時点で間違いだったんだ。あのまま、門を離れずに守っていれば良かったんだ」

「……」

「玉砕覚悟で戦うのも大事だが、私達が死んでも、天政府の為にはならないぞ」

 分隊長と呼ばれた彼が諌めるように話すと、次々と、彼と同じように剣を投げ捨てて投降の意を示した。

「よし、降参したようね。それじゃあ、貴女達は彼らを縛って指定の所に留めておいて。残りの部隊は、エレーシーの部隊に合流しましょう」

「はい!」

 兵士は景気よく返事をすると、ティナの命令通り、天政府軍1人に対して2、3人程度が付いて、どこかへと連れ去っていった。

「ティナ、私達の部隊も合流していい?」

 とりあえずの任務を終えたアビアンもティナに次の提案をした。

「ええ、いいわ。ここまでよく役目を果たしてくれたわね。ありがとう」

「こちらこそ。いい時に現れてくれたから、こっちも助かったよ」

「そう? それならエレーシーにも礼を言うといいわね。彼女が突撃の決断をしたから・・・」

 ティナはそう言うと、ふと門の方に目を向けた。

「先程見た天政府軍の人数だと、向こう側もそんなに苦戦するとは思えないけど、万が一のこともあるだろうし、急いで合流しましょう」

「よし! それじゃあ、弓矢部隊! 支援部隊と共に主力部隊に合流!」

「はい!」

 両者の号令に従い、弓矢部隊と支援部隊の残りの兵士達は、ティナとアビアンに先導されながら門の方へと急いだ。

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