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八三 さらなる飛躍への一歩

 翌日、5回目の鐘が鳴るのを待たずして、船着き場は既に人で溢れていた。

 エレーシーにとってこの光景は、街を出る度に目にしてきたいつもの光景だったが、今回はエレーシーも圧倒されていた。

 これまでになく巨大な人数だが、それよりも喜ばしいことは、全員防具と武器を手にしていたことだった。

 ここでの戦いでも、これだけ武器が揃っていれば結果は変わっていたのかもしれないな、などと事あるごとにあの惨状を思い出してしまうが、すぐに気を改め、これからの事に目を向けようと言い聞かしていた。

「皆、揃ったかしら?」

 エレーシーが感じていた出発前の緊張感を打ち破るように、ティナが側から話しかけた。

「うん、多分、シュビスタシアに来たときよりも大分増えてるしね。ワーヴァも大体揃ったみたいだって、さっき言ってたし。」

「それじゃあ、鐘がなったら出発できるわね。」

「そうだね。少し緊張するけど。」

「そうね、ルビビニアに近づけば、いつ戦闘になるかも分からないし…」

「明日着くこともないだろうし、道中で作戦を練りましょう。地図もあるんでしょう?」

「地図?ああ、そうだね。地図もあるし、どこから攻められても大丈夫なように計画を建てないとね。」

「今日は、ベレデネアあたりかしらね。そこなら、たっぷりと作戦会議できるわよ。」

「じゃあ、そうしようか。」


 エレーシーとティナが今後の計画を話していると、やがて遠くの方から時を告げる鐘の音が聞こえてきた。

 5回目の鐘である。

 それを聞いたエレーシーは、船着き場の一段高いところに立ち、剣を抜いた。

「よし、皆!」

 その一言で、船着き場にいる全員がエレーシーの方を振り向いた。

「この数日で、西の村々に住む我が民族の仲間が、次々と我軍に入ってきてくれた。そして、その仲間の願いを共に叶える時が来た!それは、これより西の街の制圧、奪還だ!」

 エレーシーが剣を振り上げると、その場に集った兵士達が一斉に沸きあがった。

「そして、我々は内陸街道を辿り、ヴェルデネリア、ポルトリテ、そしてゆくゆくは地上統括府市をも制圧する!我々はまだ道半ばであることを意識して、一歩一歩、確実に歩もう!」

「オーッ!」

 エレーシーの檄に、兵士達は声で応えた。

「よし、それじゃあ、出発!」

 エレーシーが段から降り、エルルーアと共に先頭に立つと、兵士達がその後ろを次々とついていき、やがて船着き場から北の門まで続く人の列が形成されていった。

 エルルーアが兵士達にエレーシー達幹部を護衛するように指示すると、集団の中からティナが姿を表した。

「また始まったわね、行軍の毎日が。」

「そうだね、また緊張の毎日が続くよ。早く地上統括府市を奪還しよう、ね。」

「もちろん、確実に、ね。」

 ティナとエレーシーは、緊張と希望に満ちた行軍のさなか、静かに笑いあった。

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