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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第四章 急速進攻 ・ 第一二節 シュビスタシア奪還計画
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六七 計画外の御客

「よし、着いた……あれ?」

 エレーシーの部隊が市役所前の通りにたどり着くと、市役所の前にまた天政府人の人集りが見えた。よく見ると、その向こう側にはアビアンとエルルーアの率いる部隊がいるのが見えた。

「市役所前に集まっている天政府人は……?」

 エレーシーは、天政府人の姿をよく目を凝らして観察してみた。市役所前を守る天政府人達は一人残らず、両手に剣と盾を持ち、全員錆のない防具を身に着けていた。中には、これまで見たことのない武器を持っている天政府人までいた。これまでに各地で出会ってきた治安管理隊よりも、ずっと重装備であった。

「皆、ちょっと待って」

 エレーシーは、引き連れてきた兵士達をふと静止させた。

「指揮官、どうされました?」

「あそこに、天政府人が集まってる」

「治安管理隊ですか?」

「いや、なんだか様子がおかしいよ……」

 エレーシーは、息を潜めて様子を眺めていた。市役所を挟んで向こう側にいるアビアンとエルルーアの部隊とその重武装の天政府人達の部隊の間には、まさに一触即発の、非常に緊張した空気が流れていた。こちらが歩みを進めたその時が開戦の時になると、エレーシーは肌で感じた。

「あれ、噂に聞く『天政府軍』ですかね……?」

「天政府軍……」

 エレーシーも天政府軍の話だけは、互助会や街路会の中で少し耳にしていた。

 地上統括府の治安を守るのは「治安管理隊」であるのに対し、その上にある天政府本国の治安管理と、他国との武力衝突で姿を表わすのが、「天政府軍」だという。

 彼らのミュレス民族に対する悪名は、一般の天政府人や治安管理隊よりも強く響き渡っていた。

「天政府軍か……頭の中にはあったけど……」

「どうしましょう……?」

 兵士の一人が、非常に不安げな面持ちでエレーシーに話しかけた。

「不本意だけど、戦うしかないでしょ」

「やっぱり……そうですよね」

 エレーシーは、やはり重要な都市であるシュビスタシアの攻略が難しいことを改めて実感しながら、頭の中でこれからの計画を立て始めた。

「さて、どう攻め立てようか……お」

 計画を考えつつ天政府軍を介して反対側にまたふと目をやると、アビアンはエレーシー側に気づいたようで、一瞬明るい顔を見せたが、ちらっとエルルーアの顔を見てすぐさま真顔を作りながら、エルルーアの服の袖を引っ張った。

 エルルーアは、目だけ動かして応えると、エレーシーの方をじっと睨みつけ、勝手に動かずに協調することを促した。

「向こうが対応してるから、向こうの合図で何か動こう」

 エレーシーは周りの兵士に、静寂の中でも天政府軍側に届くことがないように声量を極限まで絞って伝えた。周りの兵士達が声を出さずに頷いて返事をしたのを確認すると、エレーシーは再び天政府軍の背中をじっと見つめ続けた。

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