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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第四章 急速進攻 ・ 第一二節 シュビスタシア奪還計画
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五八 そろそろ始めよう

「さてと、仕切り直したところで、そろそろ次の目標について、本格的に話し合いましょうか」

 ティナは飲み干したグラスを机に置くと、皆に改めて次の課題であるシュビスタシアの奪還計画について議論しようと促した。

「そうしようか。シュビスタシアなら、みんな馴染みのある場所だし、少しは戦いやすいんじゃない?」

「でも、向こうは陸地側、私達は川を渡って攻めることになるのよ。それに、馴染みがあるのは向こうも同じだし、むしろ苦労するのはこちら側でしょうね」

 エルルーアは、エレーシーの楽観的な観測を早くも打ち砕いた。

「私達がシュビスタシアからトリュラリアに渡ったように、夜の間に移動するのはどうかしら?」

「トリュラリアの船頭さん達は、夜も船を出していたみたいだけど、最近は夜も川岸にたくさん灯りをともして、ずっと治安管理員が見張ってるみたいだよ?」

「ああ、じゃあ厳しいかしら……」

「船の上は逃げ場が少ないからねえ……」

 各々、自分の頭の中でぐるぐると考えを巡らせた結果を発表しては、別の誰かが反論をするという状況が続いた。思考実験の中でだけでも、ティナ達は、シュビスタシアという街がいかに恵まれていたかを痛感した。

「これまで通りにはいかないわね」

「でも、何かあるはず」

「そうだなあ、自分たちが見つけ出せていない何かが、ね……」

 一同は、再び静まり返りかけた。

「このまま考えても仕方がないし、そうだなあ……地図でも描いてみる?」

「地図?」

「そう、地図。私とアビアンはシュビスタシアに住んでたし、ティナも船から見てるでしょ? それを思い出しながら、地図を描いてみようよ。そうすれば、何か見えるかもしれないよ……」

「まあ、やってみましょう。アルミア、町役場からちょっと、書けるものを持ってきてくれないかしら?」

「あ、はい。分かりました」

 アルミアは筆記用具を持ってくるために小屋を飛び出した。その間に、シュビスタシアに縁のあった3人はどこに何があったのかを、なるべく細かいところまで思い出そうと必死に頭を働かせた。


 アルミアは、予想以上に大量の紙と、筆やインクを一式持って帰ってきた。

「結構持ってきたね」

「いいじゃない。多分、沢山書き損じするわよ」

「それじゃあ、皆で思い出していきましょう」

 筆はティナが執ることにした。ティナはまず、紙の右側に、空白を少し空けておきつつ、上から下に曲線を2本描いた。

「大体、ハリシンニャ川はこんな感じかしらね」

「じゃあ、海岸も描いておこう」

「とりあえず、この紙にはシュビスタシアが全部載るように描いておきましょう」

「それじゃあ、海岸は……こんな感じかしら」

 ティナは、続けて線を左右に曲線を描きながら伸ばしていった。

「そういえば、シュビスタシアの西にも川があるよね?」

 アビアンがティナの横から口を挟んだ。

「そういえばそうだったね。確か、シュビステレネヤ川とハスタレネヤ川って言ったかな?」

「そうなの? 詳しく教えて」

「えーと、シュビスタシアの西の検問所から、大街道が北に上がってるんだけど、その先に川があったよ」

「確か、そっちには橋がかかってなかった?」

「うーん、あ、そうだ。確か、海に流れるまでに合流してたね。合流する直前のところに橋が2本かかってたはず」

「ああ、それで大街道が北に上がっているのね」

ティナは、適当なところに再び上下に線を引き、川を示した。

「大体、この川と川の間にあるのがシュビスタシアの市域になるのね?」

「市域って言われると、はっきりとわからないけど、大体『シュビシタシア』って聞くと、まあ、この範囲かな」

「東西に川に挟まれ、南には海か……これは、例え西から戻ってきたとしても、なかなか攻めにくそうね……」

「じゃあ、あとはこの間にあるものを書き出してみましょう」

「ここが海岸なら、海の港は……大体この辺かな?」

 エレーシーは、海岸線上に指を突き立てた。

「大体その辺りかしら? そうすると、川の船着き場は、えっと、この辺りかしらね?」

 ティナは、エレーシーが指を突き立てた箇所と、そこから予想される船着き場の箇所に丸をつけた。

「そうなると、渡し船の船着き場は、大体ここかなあ」

 アビアンは、荷降ろし場の南側をくるくると指差した。

「うーん、大体その辺りかな。船関係はこれぐらいかな?」

「それじゃあ、次は陸地の建物とかを書いていきましょう。市役所はどこかしら」

「最終的に制圧する場所だね!」

「えーと、確か、繁華街からそんなに遠くなかったはずだから……この辺りかな?」

 エレーシーは川の港に近い辺りを十字になぞり、市役所の場所を指で示した。

「うーん、確かにその辺りだったかも」

 街の中の様子をエレーシーとアビアンの記憶を頼りにしながら、一つ一つ埋めていくと、次第に紙面上に、対岸のシュビスタシアの街が浮かんでくるようだった。

「さて、あとは……」

「周りがいるわ」

「周り?」

「小川とか、山とか丘とか……そういうもの。そういうものが、私達にとって利になるか害になるかは分からないけど、突然目の前に出てきたっていうのだけは避けたいの」

「なるほど、そういう『地形』ね……何かあったかな……」

「小川というか、用水は街中にあるけど……」

「そういえば、北のほうに小さな山があったかなあ……」

「そういう情報はいるわね。どんどん描き込んでいきましょう」

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