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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第四章 急速進攻 ・ 第一二節 シュビスタシア奪還計画
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五六 シュビスタシアの現状

 アビアンは、注いだ酒をまた一口飲みながら、再び話を続けた。

「その町民からの相談ごとの多くが、シュビスタシアとの間の交易路に関する質問ばっかりなの」

「シュビスタシアとの?」

 ティナとエレーシーは、身をさらに乗り出してアビアンの話を聞き始めた。

「そうなの。大体、皆が渡し船を出して欲しいと言ってるよ」

「渡し船を……?」

 よく利用していた川船の港から、数多くの渡し船が行き交っていた様子を、夏の間ほぼ毎日見ていたティナは、それを聞いた途端、首をかしげた。

「でも、ハリシンニャ川には沢山の渡し船があったじゃない。あれだけの船があれば、多少待つにしても、それほど困らないと思うけど……」

「そうなの?」

「ハリシンニャ川には、ベレデネアよりももっと北の方まで行かないと、橋は架かってないらしいよ」

「でしょうね。私はいつも通っていたけど、橋なんて見たこと無いもの。それに、あちこちから渡し船は出ていたはずだわ」

「そうなんだ……でも、商人の子はみんな、渡しまで行って初めて無いのを知って、戻ってくるみたいだよ?」

「それはおかしいわね……アルミアは何か知らない?」

 ティナは、アビアンの側で静かに水を飲んでいたアルミアに話しを振った。

「あ、ああ、渡し船ですか。それなら、聞いたことあります。そういえば……」

「何?」

「町長がお出かけになった時に、渡しの船頭さんが来られてましたよ。何でも船が出せないそうで……」

「船が出せない? それは初耳だよ」

「あれ? 言ってませんでしたっけ? 何でも、いざ向こう(シュビスタシア)の船着き場に停めようとしたところで、向こうの管理人の方に高額の利用料を取られるか、そうでなければ追い返されるとかで……」

「それは大変ね……いつもの天政府人の意地悪かしら?」

「いや、それにしても、シュビスタシアの天政府人にしたって、商人が来ないと街も賑わいがなくなっちゃうし、何より闇の国から天政府への物資の移動が止まっちゃうよ。これはシュビスタシアにとっても、結構な痛手じゃない?」

「うーん、シュビスタシアには海の港もあるし、後にポルトリテもあれば困らないような気もするけど……」

「私が港で聞いた話だけど、大きい船に載せていくよりは、シュビスタシアまで陸路で商人にお任せした方が安上がりらしいよ」

「まあ、実際に運ぶのは我々ミュレス人だからかしらね……」

「それを高い利用料を取って往来を少なくさせるのは、ただならないことだよ」

 エレーシーは、自らが働いた経験をもってティナを説き伏せた。

「やっぱり、エレーシーの言う通り、シュビスタシア側で何か変化が起こったことは間違いないみたいね。多分、私達のこれまでの進軍が関係しているような気もするし……」

「うーん、真相はともかく、まともに入れさせてはくれなさそうだね……」

「そうね……これじゃあ、商人の皆も商売あがったりだし、交易の街としての価値も落ちるわね……」

 その途端、エルルーアは突然、机を叩くようにして立ち上がった。

「何も、商人の事ばかりではなく、利用料を上げたりしてミュレス人の出入りをしづらくしたりしているということは、天政府人のミュレス人に対する圧力が昔にもまして強くなってるってことじゃないかしら?」

 エルルーアの指摘に、ティナとエレーシーは再び腕を組んで考え始めた。

「天政府人の締め付けか……私達も考えたよね」

「ええ、時間が掛かるのは仕方ないけれど、戦いをあまり長引かせると、天政府人が仲間を『人質』のように使うんじゃないか、と……」

「地上統括府としても、手をこまねいている訳はないからね……」

「それにしても、シュビスタシアから、か……」

 エレーシーは、シュビスタシアに残した友人の顔を思い浮かべていた。

「……そういう意味でも、次のシュビスタシアは何としてでも奪還したいね。一日も早く……」

「とにかく、考えましょう。これまで以上に一筋縄ではいかないはずよ」

 ティナ達はそれからしばらく、各々の中で考えを巡らせながら、黙々と作業的に目の前にある料理に手を付けた。

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