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三二 天政府人の副市長

 またしばらく待っていると、先程の男も、別の人を連れてやってきた。


「……あ!」


 門番の女は、自分が呼びに行った男の後ろを歩く天政府人の女を見て、あっけにとられたようだった。


「あの人はだれ?」


「あの人は……街道院の分院長よ。この市の天政府人側の副市長でもあるけど……」


この街で初めての天政府人の登場に、少し気を抜いていたティナ達は思わず身を固くした。


「大所帯の武装集団が町に入りたがってるって聞いたけど……」


「あ、副市長。こちらの人たちが……」

 門番の男は、ティナ達を指差した。


「ああ、そういえばトリュラリアの治安管理員からそういう話を聞いたような気がするけど……なるほど、ついにノズティアまで辿り着いたわけか……」


 副市長はひとりごとを呟きながら、ティナに近づき、そしてティナの目を見下ろした。


「こんにちは」


「……こんにちは」


 ティナは頬に感じる冷や汗を感じながら返事をした。


「私も細かいことは知らないけど、かわいらしい侵攻者達ね。トリュラリアから侵攻した勢いで、ノズティアを乗っ取るつもり?」


 副市長は馬鹿にしたように鼻で笑った。


 ティナも負けじと副市長の目を睨みながら話を勧めた。

「……私達は、あくまでミュレス民族の復権を志している団体よ。別に、この街を乗っ取る為に来たわけじゃないわ」


「……それじゃあ、何をしにきたの?」


「……あくまで、この街のミュレス人の仲間を自由にするためよ」


「自由ねえ……確かに、貴女達ミュレス人は私達天政府人が支配してるけど……でも、その方が楽でしょ?」


「いや、楽では……」


「それに、自由とはいうけど、貴女達ミュレス人にその自由が使いこなせるのかしらね?」


 副市長の口撃に、ティナはどんどん圧されていき、歯を食いしばりながら睨みつけるしかなかった。


「この市では何百年もの間、天政府人と悪魔民族の共同で支配しているけれど、それは、そうしておくことで均衡が保たれるから。貴女達ミュレス民族が天政府人の支配下におかれているのは、統括する能力が無いとみなされているからよ」


 この副市長の言葉がエレーシーに火を付けた。


「ちょっと待って。私達ミュレスの民が、貴女達天政府人達より劣ってるってこと?」


「少なくとも、長続きする政治体制が作れないでしょう? って話よ」


 エレーシーは、副市長の一言一言にいちいち怒りを募らせながらも、冷静になるように言い聞かせつつ、自分の読んだ教科書の内容を思い出していた。


「……副市長は、地上統括府の学校で歴史を学んだの?」


「そうだけど?」


「それなら、ミュレス民族の王国があったことも知ってるんでしょ? それでも、政治体制が作れない、劣ってる民族だって?」


「まあ、少なくとも地上統括府の方が今は優れていると思うけど?」


 エレーシーと副市長は、互いに言葉を浴びせかけていった。


 この様子を隣で見ていたエルルーアは、ティナやエレーシーと副市長の関係が時が経つごとに目に見えて険悪になっていくのを見て、早急にブレーキを掛けなければと焦り始めていた。


「副市長、副市長」


「何?」

 副市長は、エレーシーに向けた厳しい目をエルルーアにも向けた。


「そういう深い政治談義は後にしません? ここの門番の二人も動揺しているようですよ」


 エルルーアの落ち着いた一言に、副市長は少し顔を歪ませた。


「……仕方ないわね。そのかわり、一団は私が指示する宿屋に留め置いておく事。ここから先は、市長も含めて話し合いましょう」

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