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二五四 二回目の会議に向けて

 エレーシー達は幹部をずっと待機させていた酒場に戻るやいなや、幹部に向けて報告した。


「皆、この度、天政府側との初回の会議が終わった。そこでお互いに草案を見せ合い、ここに書き記した。二日後に会議は再開される。それまでに我々の意見をまとめなければならない。とにかく、ここでは難しいだろうから、宿屋に移動しよう」


 幹部たちはエレーシーの言葉から、これから二日間はかなり長丁場となるだろうことを覚悟しながら、机上に広げていた資料を片付けて酒場を後にした。


 その間に、エルルーアは話し合いを行うための宿屋をワーヴァとともに決めて準備していた。


 エレーシーは「宿屋」と言ったが、実際には宿屋ではなく、大きな広間がある倉庫のようなところに、机と椅子と、傍にベッドの上側だけを敷いた空間があるようなところであった。

 眠くなったらいつでも寝られ、そしていつでも即座に再開できる、会議と睡眠のためだけの部屋が出来上がっていた。


 幹部たちがその部屋を見た瞬間に思わず眉を顰めた者もいたようだった。


 これはエレーシー達ミュレス大国軍が何か作戦を急に作らなければならないとなった時にはいつも現れる、いわば曰く付きの空間でもあった。

 全員の荷物が部屋の中に置かれ、幹部の全員が席につくと、フェルファトアが資料を机の上に並べ始めた。


「まあ、とにかく向こうの提出した草案を見てみましょう」

 フェルファトアがそう言うと、幹部達は並べられた資料を食い入るように読み始めた。


 幹部たちは全員、自分たちで作り上げた草案は覚えていたので、天政府側の資料を全員で回し読みしながら内容について話し合った。

 次の会議まであまり時間がないということで、全員で代わる代わる休憩や仮眠を取りながら次の会議に向けて内容をまとめていたが、全員の意見をまとめると、大概あまり良くない感触であった。




 会議は夜中も幹部達が交代で寝ながら行われ、ついにそのまま朝の鐘を聞くこととなった。


「いよいよ明日には第二回目の会議ね。とりあえず、一旦休憩を取りましょう」


「はい」


 その時起きていた幹部達は、いつもよりは力のない返事をして、全員でその宿屋の近くにある食堂へと足を運んだ。

 三度の食事の際には外の食堂を特別に貸し切っていたが、堅苦しい会議の場よりもこの食堂のほうがよく話が進むものであった。


「なあ……例の草案、どう思う?」


 朝休憩の間に、ヤルヴィアーは、一緒に来ていたルーヌとハルピアにふと、軽く話題を放り込むような形で聞いてみた。


「例の草案って、天政府軍の? うーん……そうねえ……」

 ハルピアは困った顔をして、読んだ感想をどう伝えようかと苦慮していたようだった。


「僕も、あまりその……『政治』には詳しくないけれど、まあ……うーん……」

 ルーヌも前置きをしながらも、結局は明言を控えた。


「……二人のその反応も分かる。俺も昨日色々と考えたが、あれだけ読むと、何だか勝った気がしないと言うか……やっぱり天政府って負けを認めてないんだなって思うよな」

 ヤルヴィアーは腕を組みながら考え込んだ。


「明日の第二回会議、どうなるんだろう?」


「天政府側もこちら側の草案見てるんだろうけど、内容が真反対だからなあ……あれじゃあ落とし所は見つけられないな」


「でも、何か次の案は作らないといけないんでしょ?」


「そうだな……『向こうの思い通りにさせる気もないが、向こうだってこちらの思うようにはさせてくれないだろう。こっちが何か用意して行かなきゃ、向こうの空気に呑まれてしまう』。そうならないためにも、夕方までには何か用意しないと、と総司令官は言うけどさ……」


「厳しいなあ……」


「次の会議、纏まるんでしょうか?」

 ハルピアが暗い顔をして投げかけた。


「うーん……嫌な予感しかしないよなあ……」

 ヤルヴィアーは大きくため息をついて座り直すと、一つポツリとつぶやくようにして言った。


 そこからしばらく、無言の時が続いたが、アビアンがもうすぐ会議を始めると呼びに来たことで、この場はお開きとなった。

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