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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第一〇章 打倒地上統括府・第三〇節 ルビ=ルフェントの戦い
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二四八 勝利宣言

 その日の夜、エレーシーは旧地上統括府庭園に、今回の作戦に従事した兵士達を集めた。

 非常に多い数の兵士が集まったことになる。

 当然、そのような騒ぎになれば、中には何が起こるのかと気になった、地上統括府市在住のミュレス人もいた。

 エレーシーもそのことは知っていた。

 やがて人が人を呼ぶようになり、庭園の外の街道にも見物人が多くいるような状況になってくるが、エレーシーは逆にそれを満足気に眺めていた。

 しかし、それをずっと眺めていると、彼女の後ろからエルルーアが耳元で囁いた。

「エレーシーさん、もうそろそろ……」

 エレーシーはその声に押されるように、兵士たちの前へと立った。

 このような場面は、これまでにもいくつもあった。

 しかし、今回ばかりはこれまでとは異なるものに感じた。


「皆、今日はこの大規模な作戦に参加してくれて、どうもありがとう。この作戦は、私達幹部が長い時間をかけて、情報を集めながら、練りに練ってきた作戦だった。私はこの地上統括府に来たこともなかったけれど、統括指揮官のフェルファトアや、参謀長のエルルーアがこの地上統括府市に縁があり、そのおかげで細やかな作戦を立てることができた。もちろん、ハルピアが率いる情報部隊からの情報は大いに役に立った。そして、我々の立てた作戦に従って戦ってくれた皆。皆の、これまでの頑張りがあってこそ、今、ここでこうして集まることができた。もちろん、この戦いでも、この場にいることができなかった仲間がいることも、私は知っている。しかし、こうして、彼、彼女たちの犠牲が無駄になることもなかった。私はここに、地上統括府市の奪還を宣言する!」

 エレーシーが宣言を述べた瞬間、兵士達から歓声が沸き上がった。

 そのままでは話が続けられないので、兵士達がひとしきり感動した後に、エレーシーは続けた。

「そして、現在捕縛している地上統括府総司令官から、地上統括府の解散と天政府軍の撤退の言葉を引き出した。ここに、355年の地上統括府によるミュレシア支配は終焉を迎えたと言っていいだろう。これからは、このミュレシアは我々ミュレス民族のもとに返ってくることになるだろう。そのために、この数年間、皆にはよく頑張ってくれた。この戦いの間は、辛く苦しいことが、無数に起こった。私にとっては、その最たるものは、何と言っても前総司令官のティナを失ったことかもしれない。これは私自身にとっても、我々にとっても、非常に心苦しいことであった。そのときには、我々は戦いを続けることができなかった。しかし、我々はそれを乗り越えて、現在の体制を確立し、そしてついに、念願の地上統括府解体まで進めることができた! だが、これが最終的な目的ではない。我々は、たったの一日だけでもミュレシアを我々のものにしようというのではない。たとえ地上統括府の総司令官がこの地上統括府を明け渡そうとも、今度は本国が乗り込んでくるかもわからない。我々はこれが終わりだと認識してはならない。むしろ、今日、ここで我々ミュレス民族による自治と防衛が始まることを認識しなければならない。とはいえ、これでひとまず、大きな目標が達成された。これまで非常に緊張した毎日を送っていたことだろう。皆、今日は我々の勝利を祝おう!」

「おーっ!」

 エレーシーの言葉に、兵士と観衆はともに一番大きな声を上げて彼女たちの勝利を祝った。


 この街の名前である「地上統括府市」は、その日のうちにミュレス民族の使っていた「ルビ=ルフェント市」に切り替わり、地上統括府解体を全国に示した。

 そして、それから暫くの間、ルビ=ルフェントの街では、賑やかな宴が絶え間なく開かれた。

 だが、エレーシー達にとっては、この戦いは「今日で終わり」というわけにはなかった。

 何しろ、まだ見ぬ天政府本国の者達と対峙しなければならないのだから。

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