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二三三 突然の来訪者

 本部がルフェンティアに移動してからというものの、エレーシー達幹部は連日連夜、会議に明け暮れていた。

 日中はそれぞれの隊の様子を視察したり、自分の役割を全うするために奔走したりしながら、毎朝の幹部会議と夕食の席では常に議論が行われていた。


 ついに地上統括府市、そして地上統括府自体の奪還にいよいよ手が届きそうなところまで来た。


 そのような日々が続いたある朝、いつものように会議室で幹部会議を開いていると、ふと、扉が叩かれた。

「はい?」

 このようなときに御用を聞きに行くのはワーヴァの役割だった。

 ワーヴァが用心深く扉を開けると、そこには門番役の兵士が立っていた。

「あら、どうかしました?」

「はい、ご報告します。ただいま、北門に天政府人が3名来訪しております」

「え? 天政府人が?」

 ワーヴァは天政府「軍」ではなく天政府「人」というところに、そして敵襲でなかったというところに驚いた。

「総司令官、天政府人が3人、北門のところに来ているようですが」

「え?」

 それを聞いたエレーシーは、門番役の兵士を部屋に招き入れ、詳細を聞こうとした。

「天政府軍じゃなくて、天政府人?」

「はい」

「相手の素性は?」

「地上統括府からの使者とのことでした」

「うーん……来訪目的は?」

「はい、総司令官にお会いしたいとのことです」

「うーん……」

 エレーシーはフェルファトアとエルルーアの二人と、その場で緊急的な会議を始めた。

「どうする?」

「どうするって言っても……一対一ではもちろん会談できないけど……」

「相手は3人でしょ?」

「とはいえ、この街には相手にとっての機密情報のようなものもたくさんあるし……」

「でも、おいそれと街の外に行くわけにもいかないわね。呼び寄せて、その隙に攻め込まれるということも……」

「それもあるね」

「じゃあ、やっぱりこの市役所で対応するしかないんじゃないかしら」

「それじゃあ、仕方がない。私達が対応するとして、街の様子を見せるわけには行かないね。あと、武器になりそうなものは取り上げておく必要がある。そうじゃないと、安心して会談は出来ない」

「そうね……それじゃあ、貴方、頼んだわよ」

 フェルファトアはエレーシーとの会議の後、門番役の兵士に、来訪者を市役所に通すように申し付けた。

「はい! 了解しました!」

 兵士は元気よく幹部達に挨拶をして急ぐように部屋から出ていった。

「さあ、皆。今日の幹部会議はおしまいにしよう。これから私の言うように動いて、お出迎えの準備をしよう」

「はい!」

 幹部達が返事をすると、全員急いで部屋を片付けて、一室を応接室に準備するほか、その他にも必要な部屋をエレーシーの指示の下、次々と準備していった。


 その頃、北門では先程フェルファトアから命令を受けた兵士が他の兵士に命令が伝えていた。

「お待たせしました。どうぞこちらへ」

 兵士は地上統括府の使者達を門の内側へと案内した。

 総司令官達の御客人となれば、いくら天政府人とは言えど、無下にすることは出来なかった。

「あ、すみません。身体検査をさせていただきます」

 兵士の一人がそう宣言すると、使者の身体を隅々まで検査し、そこで武器になりそうな物を預かった。

「こちらは、一旦預からせていただきます。宜しいですね?」

 兵士の毅然とした態度もあり、使者もここで抵抗して問題を起こしてはいけないと思ったのか、無言で頷いて従った。


 兵士たちはそこから市役所に至るまで、使者を取り囲んだ状態で案内した。

 その時、周りを見渡すような暇を与えないように、少し速歩きで先導していた。

 これもエレーシー達の命令だった。


「はじめまして」

 門番役の兵士達が使者を市役所の前まで案内すると、玄関にはエレーシー、フェルファトア、エルルーアの3人が彼らを出迎えた。

「はじめまして。私は地上統括府外交院(訳註:外務省にあたる)の院長を仰せつかっている、ロズノという者だ」

 彼は天政府軍ではなく地上統括府で働いているようで、これまでに会った天政府人と違ってどこか気品さを持ち合わせてはいたが、ある意味堂々とした態度であることには違いなかった。

 エレーシーは、彼が現在交戦中の相手だということを常に意識して対応しようと心がけながら、彼の目を見ていた。

「はじめまして。私はミュレス大国軍総司令官のエレーシー・ト・タトーです。ここでは何ですので、どうぞこちらへ」

 とはいうものの、エレーシーも地上統括府直属の役人を間近に見るのは初めてだった。

 しかも相手は外交院長。エレーシーも緊張しながら対応することになった。

「外交院長」という役職なのだから、相手は相当な外交の玄人であるに違いなかった。

 一方、エレーシーも他の幹部も、外交については素人と言わざるを得なかった。

 ここでも「相手に主導権を与えてはいけない」という意識は常に持ちながら、緊張感ある会談になるだろうと予感しながら、2階の会議室に続く階段を上っていった。


 2階に上がると、廊下には幹部のアビアン、フェブラ、ティアラ、フェンターラが待機していた。

 4人とも軍を代表する幹部として身なりを整え、それなりの緊張感を持って立っていた。

 この光景を見た天政府人の使者達も彼女たちに若干圧倒されながらも、エレーシーの後に続いて廊下を歩いていた。


 会議室の前の扉に着いたところで、フェルファトアが大使に話しかけた。

「ところで、お二人は?」

 フェルファトアは、大使の両隣やや後ろをついていく二人の天政府人のことをずっと気にしていたようだった。

「ああ、彼らは私の付き人でね。私と同じく、外交院で働いている」

「なるほど……それでは、特に彼らがいなくても話ができますよね?」

「え? ……まあ……」

 フェルファトアはその言葉を聞くと、廊下にいたティアラとフェンターラに目配せをした。

「それでは、付き人の方。ちょっと、こちらで待機して下さい」

 ティアラとフェンターラはそう言って、言葉は柔らかくも半ば強引に、付き人の二人を別室へと案内した。

「なに、心配なさらないで下さい。特に何かしようというわけではありません。それでは、どうぞ」

 フェルファトアはにこやかに、大使を部屋の中へと案内したが、彼の目にはどのように映っただろうか。

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