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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第九章 エルルーア参謀長・第二八節 ルフェンティア攻略と緊急参謀会議
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二二六 メルヴェマル参謀会議2 敗因分析2

「それでも、撤退の判断の決定打になったのは、ベルターラ街道から天政府軍が来たことですよね?」

 重苦しい状況を打破すべく、参謀副長のティアラが話題を放り込んだ。

「そうね……それ以前に劣勢だったのは間違いないけど、挟み撃ちになったのが、撤退の決定的な要因になったわけだし、そこが一番の問題かもしれないわね」

 エルルーアはそう言いながら、別の地図を取り出した。

 それは、昨日のうちに作り上げていた、ルフェンティアとそこから少し南までを拡大した地図であった。

「ここね。これがベルターラ街道だけど……」

 その時、アビアンが話に割って入った。

「このベルターラ街道、作戦会議の中で少し話題に上がってたよね? その時は特に何も思わなかったんじゃなかったよね?」

「えーと……確かに事前の作戦会議ではここのことは話にはなっていたけど……」

 エルルーアも悩ましい表情をしながら言葉を絞り出した。

「でも、不思議なんだけど、その時には全くこの街道のことが問題にならなかったよね」

「まあ、これは今から思えば、とにかく『ルフェンティアの攻略』に必死だったと言わざるを得ないわね。これまでの戦いとは違うところだと言えるんじゃないかしら?」

 エルルーアが言うには、これまでの戦いは、ほとんど、都市を支配していた天政府軍に、都市や建物に赴いて戦う、あるいはその逆という、一つの面だけでの戦いだった。しかし今回の戦いでは、遠征部隊と遠征部隊の衝突も起こっていた。それが異なる点だということだった。

「そういうことで、これまではずっと、特に正面の敵である天政府軍を突破して、市街地に入って市役所を奪還することしか頭になかったといえば、嘘じゃないわね」

「だから天政府軍がまさかベルターラ街道から来るとは、ということですか?」

「うーん、そうね」

「ベルターラの方はもう攻略したと勘違いしていたことはないのですか?」

「それは無いと思うわ。私達はこれまでどの街を攻略したかはしっかりと覚えているし、ベルターラ方面に派兵したことはないのよ」

「そうですか……ベルターラ方面に派兵しなかったのはなぜですか?」

「えーと……」

 エルルーアはエレーシーに救いを求めるように目線を送った。

「じゃあ、私が答えるけど、それは大街道沿いの街を優先していたからだよ。確かに、ミュッル=アミト=ルビビニアの方は大街道から外れたけど、大街道がミュレシアの最重要街道ということもあるし、それに、ベルターラの方は大都市は無いと思っていたから、それよりもポルトリテやヴェルデネリアのような主要な港町を奪還することのほうが重要だったからということが理由かな」

「ありがとう、エレーシーさん。じゃあ、ベルターラはあまり意識していなかったということで、ベルターラには派兵していなかったので、そちらの街道沿いの街は奪還していないということかしらね」

「なるほど」

「それにしても、なぜベルターラから天政府軍が乗り込んできたのかというのが気になるわね。彼らはどこから来たのかしら?」

 エルルーアの言葉に、会議の参加者達はまた黙って考えた。

「交戦中に、時期を見計らったかのように来ましたよね。ルフェンティアとベルターラ街道のどこかとの間で、何らかの連絡が行われたのでしょうか?」

「それはあり得るわね。ルフェンティアの周りは天政府軍で囲われていたし、櫓で監視していたようだから、私達が来たのを察知した兵士の誰かが、別部隊に連絡しに行ったとしてもおかしくないわね。私達には分からないでしょうし……」

「それじゃあ、ルフェンティアの天政府軍の誰かが、森を突っ切ってベルターラ街道まで伝えに行ったということですか?」

「これは後で言うけど、道は一つじゃないということが分かってるわ」

「え、そうなんですか? でも、ベルターラってルフェンティアから離れてますよね?」

「確かに、そんなに近くはないわね。だけど、ルフェンティアから割りと近いところに天政府軍が拠点を作っていて、交戦の連絡を受けてそこから出発したんでしょうね」

「ということは、天政府軍にとって、ルフェンティアを狙ってきたら挟み撃ちにしようというのは通常の作戦通りだったということではないですか?」

「そうね。そのくらい、両部隊は連携が取れていたということでしょう。私達はまんまと彼らの罠の中に入っていったということね」

 エルルーアは腕を組みながら、静かに考えつつ、挟撃について話を纏めた。


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