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二二 星の御加護の下で

「よし、みんな。貴重品は全部持ってきた?」


5人は、もう戻ることのないように、服から本から、各々の思う貴重品を纏めてやってきた。


 この街の住民ではないタミリア姉妹とフェルファトアも、この日のために実家から必要なものは全て持ってきていた。


「でも、こんなに載る?」

エレーシーは集まった荷物の山を見て若干不安になってきた。


「一番大きな船を拝借しましょう。申し訳ないけど……」


ティナとエルルーアは船を物色し、一番大きめの船を選ぶと、川のそばまで持っていった。


「エルルーア、ともづな持ってきて」


「ともづな、ともづな……あ、はい」


ティナは慣れた手つきで船を桟橋に繋ぎ止め、エルルーアと二人で船をひっくり返し、船を川に浮かべた。


「さあ、さあ。乗って。見られない内に」


4人はティナに手を引かれ、次々と船に乗り込んだ。


荷物を積み込むにつれて水面が近づいていくのが、エレーシーには気が気でなかった。他方でティナはお構いなしに、荷物を放り投げるように積み込んだ。


「エルルーア、出るわよ」


 ティナは桟橋にくくりつけていた綱を解くと、手に持ったまま船の上に飛び込んだ。

 エルルーアはすかさずティナに櫂を渡し、二人で協調しながら船をコントロールしながら下流へ、下流へと船を進めた。


 川の流れは意外と穏やかで、戦に挑む出だしは好調だった。


 暫く漕いでいると、途中で闇に紛れた3艘の小舟に遭遇した。ティナ達から見て左から右へ進んでいる船は、船頭が一人で必死の形相をして櫂を動かしている。


 一方、右から左へ流れている船には乗せられる限りのミュレス人がぎっちりと乗っているが、誰一人として一言も話さず、櫂と船がなす波の音だけが聞こえてくるようだった。


 やがて船は、トリュラリア郊外の古い船着き場へと辿り着いた。


 船を桟橋に繋ぎ止めると、急いで武器をしまってある船小屋へと急いだ。




 走ってきたものの、あたりはしんと静まり返っていて人影は全くなかった。先程、急ぐ川船の様子を目の当たりにしただけに、5人は強い不安感を覚えた。


「……来る予定の人には伝えたわよね? ここの場所」


「ちゃんと教えたけど、シュビスタシアの人って交易業者でもなきゃ、対岸の町なんてあまり意識せずに生活してるからなあ。その外れなんて……」


エレーシーとティナが話をしていると、船の陰から突然何者かが現れた。


「誰?!」


思わず声を上げてエレーシーが振り向くと、そこには一人のミュレス人が立っていた。


「あ、あの……タミリア総司令官という方から『神器』を下さると聞いて……」


その一言を聞いて、5人は緊張状態からふと解放された。


「ああ、びっくりした。あなたが『選ばれた者』なのね。名前は?」


「あ、アルミア・エレンシアですけど……」


「アルミア、アルミア……」


ティナは予め紙に書いてきた名簿(というほど大したものではないが)をめくりながら、その名前を調べた。


「うん、あるわね。誰か、盾と剣と、えーと、中くらいの防具を持ってきて」


ティナの指示に従い、妹のエルルーアが船小屋の奥を探り、一式を抱えて持ってきた。


「どうぞ」


「ありがとう、エルルーア。それでは、ようこそ、『ミュレス国』へ」


「あ、ありがとうございます。あなたは?」


「私は、ティナ・タミリアよ」


「あ……ああ! あなたが、かの総司令官!」

突然、アルミアは身を固くした。


「ああ、今はそんなに緊張する必要はな……」


 優しい口調で語りかけたその時、エルルーアはティナの袖口を2回引っ張った。


 ティナはそれに気づき、咳払いを一つすると、顔を一旦引き締めた。


「明日が重要だからね。エレンシア、貴女は……明日は最外周の西側で天政府人の攻撃から身を守って。さあ、受け取ったら直ちにトリュラリアの宿に身を隠すように」


「は、はい!」


アルミアが大きめの声で返事をすると、言われたとおり、直ちにトリュラリアの町へ続く道を走っていこうとしていた。


「あ、ちょっと! 防具は付けて、盾と剣は服の下!」


 エルルーアが呼びかけると、アルミアは途端に立ち止まった。


 辺りを見回して小さな木陰を見つけると、月明かりから避けるように身を隠し、暫く経って両手に小さな袋を手にして再び道を駆け上がっていった。


「ふう、これがあと何十回もあるんでしょ? なかなか疲れるわね……」


「まあ、そのために5人で来たようなものだから……」


 ティナは一人目から疲れたような顔を見せたが、それを見てエレーシーがなだめた。


 どこかで隠れて様子を見ていたかのように、先程の一人を皮切りにぞろぞろとミュレス人が集まり、次々と武器を手にして後にした。

 ティナは名簿を見る役をエレーシーに引き継ぎ、自分は権威を振りまくためにやや胸を張って、来る人一人ひとりに明日の件について一言掛けては肩を叩き、見送った。




「さっきのが最後の一人よね」


 先程まで、何十年ぶりかの人集りができていた古い船着き場は再び静まり返り、5人だけが残った。


 武器の山ができていた船小屋も、残るは数セットしかなかった。


「ここに残ってるのは、私達のだよね」


「そうね。さて、私達も乗り込むわよ」


 ティナの一言を最後に、5人はテキパキと身なりを整え、闇に紛れるように船小屋を後にした。




 あと、数時間でトリュラリアの町は日の出を迎える。


 エレーシー達は様々な気持ちを胸に、日の出の時までの時間を頭に浮かべつつ、それぞれ仮眠に入った。

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