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ミュレス帝国建国戦記 ~平凡な労働者だった少女が皇帝になるまで~  作者: トリーマルク
第九章 エルルーア参謀長・第二八節 ルフェンティア攻略と緊急参謀会議
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二二〇 再び大陸間海へ

 エルネンベリアを出発したミュレス大国軍の遠征は、非常に忙しいものになった。

 フィルウィート、アルサンソリア、ポルトリテといったこれまで奪還してきた大都市を通り過ぎ、オルヴィノリアからは自分たちが長年慣れ親しんだ大陸間海を右に見ながら、東へと進んでいった。

 そして、すでにエルネンベリアを出発して20日が過ぎようという日に、エノドルという街まで帰ってくることができた。


 エレーシーはこのエノドルで、昼に幹部会議を開くことにした。

 幹部たちは宿屋の一室を幹部室とし、床に広げた地図を囲むようにして座り、会議を開催した。


 エノドルから少し東に行ったところに、エルヴァンペシアという街がある。

 このエルヴァンペシアという街は大街道から少し北に外れているのだが、この街は地上統括府市に続くルフェントハネヤ街道との交差点としての役割も担っていた。

「このルフェントハネヤ街道が、これからの主戦場になっていくからね」

 エレーシーは真剣な眼差しで地図を指差し、その周囲の地形などを見ていた。


 ルフェントハネヤという川が、その街を横切っていた。

 このルフェントハネヤは、山と山に囲まれた谷あいを流れる川であり、いくつもの支流が山の中から注ぎ込まれていた。

 そして、その川の右岸に沿って作られた街道がルフェントハネヤ街道である。

 この街道は、俗称「地上統括府街道」とも言われ、この道が唯一、地上統括府市を貫く一筋の道でもあった。

 もちろん、地上統括府市を超えた先にも続いていて、その先に峠があり、さらにその先にあるのがヴィラ橋という街で、その延長線上にはミュレス大国が軍を置いているメルンドもあった。

 この街道沿いにもいくつかの街があったが、2つの街がエレーシーの目に留まった。

 それは、メルヴェマルとルフェンティアという街だった。

 エルヴァンペシアと地上統括府市の中間にルフェンティアがあり、その手前にメルヴェマルがあった。

 そして、それ以外には特に街はないようだったが、特にルフェンティアについては、エレーシーはその街の名前を教科書で見たことがあったのだ。

 元々、この街道沿いではルフェンティアが一番大きな街であったが、天政府人がその奥の、少し小高い丘のような場所に地上統括府市を建設し、このミュレシアの中心都市として作ったので、ルフェンティアなどの周辺都市が栄えていったという状況らしかった。

「このルフェンティアを、地上統括府攻略の拠点にしたいな」

 エレーシーは明確に、地上統括府攻略を口にした。

「でも、ルフェンティアがどんな状況なのか、わからないのが気になるわね。こんなに地上統括府に近いんだから、これまで以上のことが起こってもおかしくなさそうだわ」

 エルルーアは少し心配そうに意見した。

「うーん……それはありそうだね。まあ、とにかくエルヴァンペシアまでは行けるだろうから、とりあえずそこを次の拠点にしようか」

「そうね、それがいいんじゃない?」

 フェルファトアもこの案に賛成したことで、とりあえずエルヴァンペシアまで行くということまでは決定したが、さらに会議は続いた。


 エノドルで会議を開いた後、エレーシー達は計画通り、エルヴァンペシアまで帰ってきていた。

 エルヴァンペシアもすでに奪還済みの都市であったが、実はミュレス大国軍が占拠している間でも天政府人がよく通る街でもあったことから、ここには他の小さな街よりも優れた防衛部隊を送り込んでいた。

 そのおかげか、この街ではこれまで天政府軍との衝突はなかったが、さすがにこれだけの人数と幹部がいるとなれば、衝突は必至だった。

 エレーシーは何とか、この街に天政府軍が来ないように祈りながら、エルヴァンペシアに入った。

 そして、エレーシーは運良く天政府軍に会うことなくエルヴァンペシアに入ることができた。


 エレーシーは街に入るやいなや、防衛部隊にこれ以上天政府人を入れさせないように命じると、ここで再び幹部会議を開いた。

「さて、ここから北に上がると、ルフェントハネヤ街道だね」

 エレーシーは再び地図を広げてこれからの経路を確認した。

「いよいよ地上統括府が見えてきたわね」

 フェルファトアは興奮気味に言った。

「逆に言えば、これまで以上に天政府軍が神経質になってくるかもしれないから、気をつけないといけないね。……さてと、これからいよいよ地上統括府市への侵攻を考えるわけだけど、ここから地上統括府市の前に、もう一つ拠点を置いておきたいよね?」

「うーん、そうね。近いところに拠点を置いておきたいわね」

「そうなれば、やっぱりこのルフェンティアを中心に考えるほうが良いんじゃないかな?」

 エレーシーはそう言いながら、ルフェンティアを指さした。

「まあ、確かにここに置いておけば地上統括府市に攻め入るための足がかりにはなりそうね……」

 エルルーアもエレーシーの考えに納得したようだった。

「ただ、ここから先は谷筋の一本道だから、挟撃には注意しないといけないわね」

「逆に言えば、こっちもそれができるということだね。まあ、何にせよ、このエルヴァンペシアの防衛はしっかりしておかなくちゃいけないけど、次はルフェンティアの攻略に定めるということでいいね?」

 エレーシーは幹部の顔を見て反論を待ったが、特に反論は無いようだった。

「じゃあ、方針は決まったね」

「また偵察させる?」

 フェルファトアがエレーシーに質問した。

「そうだね……最新の状態が知りたいし、偵察部隊を送ろう」

「じゃあ手配しますね」

 ワーヴァはそれを言うと、一呼吸置いて部屋を出ていった。


 そして次の日、エレーシー達は偵察部隊と会議を行い、ルフェンティアの場所などについて確認をした後、市役所の前で部隊と別れた。

 エレーシーが求めるのは、当然吉報であった。

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