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二〇〇 エルネンベリア市役所


 ミュレス大国軍の一行は何とかエルネンベリアの門まで逃げ切ると、そのままの勢いで市役所を目指した。

「あれだけ天政府軍が出てきたんだ。市役所は手薄かもしれない」

「それに、こちらは本隊全員で来ているのよ。このまま行きましょう! エルルーア、どう?」

「そ、そうね。行きましょう!」

「おーっ!」

 エレーシー達幹部はそれぞれの隊の制御に若干苦慮しながらも、エルネンベリアの門を潜り、大街道を北上していった。

「市役所ってこの道で合ってる?」

「誰か、知らない?」

 エレーシーとエルルーアは初めて来た街に慌てていた。

「あっちよ!」

 その時、エルネンベリアに来たことがあるフェルファトアが導いた。

「よし、行こう!」

 フェルファトアに続いて、エレーシー達数千もの兵士達が市役所に向かう道を駆けていった。

 既に日が傾いており、エルネンベリアの通りには、ミュレス人も天政府人も歩いていたが、その様子を見た誰もが驚くほどの光景だった。

 もはや天政府軍の姿は見られなかった。

 彼女達は何の抵抗にも遭うこと無く、市役所の前までやってきた。

 エルネンベリアはそれほど大きくはない都市で、建物は2階建てであった。

 北部ではよくある、白い石造りの建物であった。

「ここが市役所ね」

「よし、この兵力なら大丈夫だろう」

 エレーシーはそこで後ろを振り向き、剣を上に振りかざした。

「少し時間は掛かったが、ようやく目先の目標であったエルネンベリアの奪還が間近に迫った! さあ、行くぞー!」

「おー!」

 エレーシーは市役所の玄関前で兵士達の士気を上げ直すと、再び市役所の入り口に対峙した。

 そして、おもむろに一歩目を踏み出すと、その勢いで速度を上げて突き進んだ。

「わーっ!」

 後ろの兵士達も続いて声を上げながら玄関へと走り出した。


 エレーシーとフェルファトアで玄関を開けると、エレーシーが先導して部隊を方々に分けて市長室の場所を調べさせた。

「総司令官! あちらのようです!」

 そんな中で、一人の兵士が市長室までの道を見つけたようだった。

 彼の話によると、市長室は2階の奥にあるとのことだった。

「よし、行こう!」

「はい!」

 エレーシーは兵士達の返事を確認すると、階段の方へと走り出した。


 まだ夕方ということもあって、1階でミュレス人と天政府人が働いていたが、2階はしんと静まり返っていた。

「あれだけ下で騒いでいたのに、市長が出てこないとはどういうことだろう?」

 エレーシーは訝しがりながら他の幹部と話をした。

「たまたま居ないのか、それともまた逃げたのかしら……」

「市長室を開けたらバッタリなんてこともあるかもしれないわね」

「用心していこう」

 エレーシーは話を終えると、市長室の前まで移動して中の様子を伺った。

 しかし、中からは物音一つ聞こえなかった。

「それじゃあ、開けて……」

 エルルーアは護衛役の兵士に扉を開けさせた。

「我々はミュレス大国軍だ!」

 扉を開けるなり、兵士は部屋の中に向けて叫んだ。

「……誰も居ないみたいね」

 エルルーアは中をざっと見て人が隠れているわけでもないことを確認した。

「ふうん……まあいいや。これで街の守りを固めれば、奪還したも同然だ」

「そうよね。それで行きましょう」

「とにかく、これでひとまずエルネンベリア奪還は完了だ。お疲れ様」

 エレーシーはフェルファトアとエルルーアの肩を叩いて労をねぎらった。

「まだ終わったわけじゃないわよ。これからは天政府軍から守らないといけないんだから」

「そう……そうだね。すぐに防衛体制に移ろう」

 エレーシーはそう言うと、市長室の窓を開けて身を乗り出した。

「皆! 我々、ミュレス大国軍はこのエルネンベリアの奪還に成功した!」

「おーっ!」

 エレーシーの声に、兵士達は喜びの声をあげた。

 思えば、新兵器に手こずった戦いから続いていた苦労がようやく実り、また、これまで防戦一方になっていたミュレス大国軍にとっても大きな前進の兆しが見え始めていたのであった。

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