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一九八 再度、エルネンベリアへ

 ルーヌはミュレス大国軍の本隊に合流した当日には、既に特殊能力部隊と他の幹部や隊で協力しながら訓練に励み始めていた。

 エレーシーはといえば、どうしても天政府軍の新兵器の事が頭の中から離れなかった。

 それは、軍の北進を上回るほどの関心事となっていた。

 一刻も早く、彼らが新兵器に通じるのかを、実戦で確認する必要があった。

 もしも通用しないとなれば、即座に別の作戦を追加する必要があるからである。


「エレーシー、次の遠征はいつ始める?」

 ルーヌ達が合流した翌朝の会議で、フェルファトアはエレーシーに尋ねた。

 エルルーアやアビアンも気にしていたようで、フェルファトアが議題に上げると、エレーシーの方を振り向いた。

「正直なところは、今すぐにでも天政府軍と積極的に交戦して、これまでの劣勢から優勢に持っていきたいところなんだけど、ルーヌ達は合流したてで、今すぐにと言うのはなかなか難しいだろう」

 エレーシーの言葉に、フェルファトアは頷いた。

 この会議にはルーヌも幹部としてもちろん出席していたが、若干申し訳ないような顔をしながらも、「まあ、そうかもしれないな」というような顔をしていた。

「でも、相手の軍備が揃う前に打ち崩す必要があるわ。そんなに習熟を待ってはいられないんじゃないかしら」

「エルルーア、まあ、待って。確かにいつまでも待つことはできない。そこで、出発は、そうだな……」

 エレーシーはしばし腕を組みながら回答を考えた。

「それじゃあ、明後日の朝には出発して、大街道に出て北進する。それで、天政府軍と衝突して、相手が新兵器を投擲し始めたら、魔法で迎え撃つ。こういう作戦でどう?」

 エレーシーが自分の考えを伝えると、他の幹部達はある程度は納得したようだった。

「ルーヌ、今日と明日で特殊能力部隊をある程度仕上げられるかしら?」

 エルルーアが心配そうにルーヌに聞いた。

「そうですね……」

 ルーヌはこれまでとは変わって、少し歯切れ悪そうにつぶやいた。

「……分かりました。2日間で出来る限り仕上げます」

「ルーヌ、入隊早々無理を言って悪いけど、よろしくお願いするね」

「はい!」

 エレーシーはルーヌの答えに胸を撫で下ろし、朝の会議を締めさせた。


 それから、エレーシー達幹部は天政府軍との戦いに向けて作戦を詰めていく一方、ルーヌを含めた各隊の隊長は、来るべき戦いのために少しでも練度をあげるべく、ひたすら訓練に励んでいた。


 そして、エレーシーが宣告した通り、あれから2日後の朝、ミュレス大国軍は全員、メルペラーディアを出発した。

 林となっているような大街道までの道を下っていき、合流地点までたどり着くと、まだ天政府軍が南侵していないことに少し安堵しつつ、そこから北進し続けていった。

 大街道に入って少し進んだところにあるファルナデネアという村もまだ天政府軍の手に落ちていないことを確認すると、一旦そこで野営して戦いに備えた。


 そして次の日、ミュレス大国軍はファルナデネアから少し北上したところまで来ていた。

 辺りは、前の戦いの時と同じように、平原が広がっていた。

「この先にはエルネンベリアくらいしか大きな街がない。天政府軍がいつ現れてもおかしくないはず」

 エレーシーは、側に居たフェルファトアやエルルーア達に、これまで以上に感覚を研ぎ澄ませるように指示を出した。

 何かを見つけたり、聞いたりしたときには、すぐにエレーシーのもとに報告が来るように、前線を張っている部隊には予め言い渡していた。


「総司令官、あれ、何かの集団じゃないですか?」

 エレーシーが指示を出してからある程度時間が立ち、ようやく日が登りきろうとした時、一人の兵士が、遠くに大勢の人影を確認した。

「どれどれ……」

 軍が進むに連れ、その影は次第に濃くなっていき、規模が分かるようになり始めた。

「あれ、天政府軍だと思うけど、フェルファトアはどう思う?」

 エレーシーがフェルファトアに尋ねると、フェルファトアは前を見据えつつ、黙って頷いた。

「そうだよね。よし、戦闘準備だ。各隊はすぐに戦闘に入れるように態勢を整えておくように」

「はい!」

 エレーシーが各幹部に命令を下すと、それぞれが伝達のために走り回った。

「ルーヌ、貴方もここからは隊長として、戦闘準備ね!」

「はい!」

 ルーヌはフェルファトアの命令に従って、特殊能力部隊長としての役割を果たすため、隊の引率に走った。


 向こう側はこちら側よりも早くに気づいたようで、すぐさまこちら側に近付いて来ているようだった。

 そして、お互いに近付いていくにつれ、やはり向こう側にいるのが天政府軍であることが確認できると、ミュレス大国軍の兵士達はより一層、神経を尖らせ、いつでも飛び出せるように準備を進めていた。

 ここまで来ると、お互いにいつ戦いの火蓋が切って落とされてもおかしくない状況であった。


 ある程度近付いたところで、フェルファトアは自分の補佐役であるフェブラと少し打ち合わせを行うと、ルーヌが率いる特殊能力部隊のところに付かせた。

 次の戦いでの中心は、何と言ってもこの特殊能力部隊である。

 彼らの活躍で、この勝敗が決するといっても過言ではなかった。


 お互いの軍は、歩みを進めながらも、相手がどう出るかを探るという、非常に遅い展開で進んでいた。

 そのどちらが最初に走り出すかという駆け引きが既に行われていた。


 相手の姿を捉えてから、もう10分程が経過していた。

「エルルーア、上空も警戒しておいて」

 エレーシーは、様々なこれから起こりうることを考えながら進んでいた。

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