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一九七 魔法お披露目

 往路と同じ道を、また1日半ほどかけてメルペラーディアまで帰ってくると、町役場の前でフェルファトア達本隊組に大喜びで迎え入れられた。

「フェルファトア、アビアン、留守番ありがとう」

「エレーシー、お疲れ様。お目当ての北方白猫族の方とは出会えた?」

「もちろん。あ、そうだ。紹介しよう」

 エレーシーはそういうと、ルーヌを招いた。

「フェルファトア、こちら、新たに新設する特殊能力部隊の隊長に任命した、ルーヌ・アートルー」

「よろしくお願いします!」

 勢いの良いルーヌの挨拶に、フェルファトアはにこやかに応じた。

「ルーヌ、彼女がフェルファトア・ヴァッサ・ヴァルマリア統括指揮官、そしてこちらは、総司令官補佐のアビアン・シアスティアだよ」

 エレーシーに紹介されたアビアンは、勢いよくルーヌの手を取った。

「はじめまして! 私はアビアンです! 今後ともよろしくね!」

「は、はい。今後ともよろしくお願いします!」

 ルーヌはアビアンの陽気さに気圧されながらも応じた。

「それで、ルーヌは隊長ということだけど、誰が隊の面倒を見るの?」

「ああ、それは心配ない。ルーヌには参謀も兼任してもらおうと思っているよ」

「じゃあ、ルーヌは幹部に入るの?」

 エレーシーの構想に、フェルファトアが質問を投げかけた。

「もちろん、そうなるね。参謀兼隊長ということになるから、大変かもしれないけど、ルーヌならやってくれると期待しているよ」

「ありがとうございます!」

 ルーヌはエレーシーの期待に早く応えようとしているように思え、エレーシーはますます期待を抱くのであった。


「ところで、『特殊能力』って、魔法のことよね?」

 フェルファトアが問いかけた。

「そうだけど?」

「私、魔法って見たことないんだけど、どんな感じで攻撃できるのかしら? エレーシーは見てみたの?」

「魔法? ああ、ヴェドラ・ラプラデネアで訓練していたときに、見ていたけど」

「なるほど、エルルーアも見たの?」

「ええ、見たわ」

「どうだった?」

「そうね、弓矢の威力も飛距離も向上させた飛び道具って感じのものもあれば、遠距離に一気に攻撃するような魔法もあるし、色々と応用は効きそうな感じだったわね」

 エルルーアは村で見てきた魔法技術について、見たままに述べた。

「そんな感じなんだ……実戦投入する前に、一度見てみたいわね」

 フェルファトアはエレーシーとルーヌの方を見ながら話した。

「それはいいね。そういう事なら折角のことだし、兵士の皆も呼んで披露しようか。ルーヌはどう思う?」

 エレーシーの急な提案にルーヌは少し驚いた顔をしていた。

「わ、分かりました。では、隊長である私が披露させていただきます」

 ルーヌは少し緊張した面持ちで答えた。

「じゃあ、町の外れにある丘に移動しよう。それぞれの幹部は、各自担当の兵士にも連絡して連れてきて。ティアラの部隊は残って警備を継続しておいて」

「はい!」

 各幹部達はエレーシーの指示を受けて、丘の方に移動した。

「アビアン、弓矢部隊に使い捨ての的があったよね?」

「ああ、確かにあるね。じゃあ、それを持っていくね」

「ありがとう、じゃあ、ルーヌ、早速丘の方に移動しようか」

「はい!」

 エレーシーとルーヌは話をしながら、その場を後にした。


 それから少し後、町外れにある丘に兵士達が集まっていた。

 扇状に並んでおり、その中心にルーヌがいた。

 ルーヌが立っている位置から家2軒分ほどのところに的が置いてあった。

「よし、皆揃ったかな?」

 エレーシーは周りを見渡しながら呼びかけた。

「大体揃ったわね」

 それにフェルファトアが答えた。

「それじゃあ、始めよう。ルーヌ、よろしく」

「はい、それではまず、火の技から行きますね」

 ルーヌはそう言うと、右足を前に出して半身に構え、右手に持っていた、上腕ほどの長さの杖を持ち上げて的と一直線になるようにしながら見据えると、勢いよく振り上げた。

「ドラバーン(Dolaban)!」

 ルーヌが唱えると、杖の先は激しい炎の球に包まれた。

 それを振り払うように杖を再び的めがけて振り下ろすと、炎が杖から離れると同時に一気に膨れ上がり、彗星のように尾を引きながら的の方へ一直線に飛び出した。

 そして炎が的を包み、的は燃え上がり始めた。

「おおお!!」

 これまで魔法というものを見たことがない、白猫族と黒猫族の幹部と兵士達は、今まで見たこともないような攻撃に、思わず感嘆の声をあげた。

 しかしルーヌはその声に微動だにせず、また杖を振り上げた。

「プラーッ(Plaat)!」

 またルーヌが唱えると、今度は透明な液体が杖の先に集まってきていた。

「リャーパラー(Liaa Palaa)!」

 発声と同時に再び杖を振り下ろすと、杖の先から水が勢いよく発射された。

 そして炎に包まれた的に当たると、勢いよく消火していった。

「おおお!!」

 兵士達はその様子にも感動して声をあげていた。

「それでは、次で最後ですね」

 ルーヌは周りの兵士達の完成の中でも冷静に、さっさと次に移り、再び杖を振り上げた。

「ザヴァーッ(Zavat)!」

 唱えると同時に杖を縦に振り下ろすと、的の周りに閃光が走り、轟音が鳴り響いた。

「わあぁっ!」

 いきなりの雷撃に周りの兵士達は腰が抜けた人も出るほど驚いたが、的が2つに割れているのを見ると、辺りは再び拍手に包まれた。

「ルーヌ、魔法技術を実演してくれてありがとう、さあ、皆、明日からの戦闘には、このような瞬時の遠距離攻撃が可能となる、『特殊能力部隊』が加わることで、皆の動きも変わってくるだろうから、明日から演習を通して、どう動けば効率よく攻撃できるか、皆で考えていこう!」

「はい!」

 エレーシーが締めの挨拶をすると、それぞれの隊の隊長達はお互いに話し合いながら、真近で見た新たな攻撃方法について感想を言い合ったり、今後の動きについて打ち合わせしたりしていた。

「ルーヌ、明日からの作戦についてこれから幹部皆で話し合うから、ぜひ参加してほしいんだけど」

「はい、分かりました。では、少し副隊長と話をしてから行きます」

 ルーヌはそう言って、自分の隊に合流していった。


 明日からは、これまでより戦力が格段に向上した新生軍で、天政府軍に挑むことになる。

 エレーシーは特殊能力部隊に期待しながら、今後の作戦会議に臨むのであった。

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