一九〇 報告
「失礼します」
朝、いつものようにレプトフェリアの町役場で幹部会議を行っている最中に、突然、一人の兵士が扉を開けた。
彼は、ワーヴァの下につく通信担当の兵士であった。
どうも急いでいるようで、扉を開けるやいなやワーヴァのもとに走り寄り、コソコソと言葉を交わし始めた。
「ええ、ええ、本当?」
しんと静まり返った会議室に、ワーヴァの相槌が響いた。
「分かった。ありがとう」
ワーヴァは一言そう言うと、すぐさま彼を通信室へと帰した。
「ワーヴァ、何かあった?」
彼女たちの話に一番に興味を持ったのは、エレーシーであった。
「シュビスタシアからの連絡です」
シュビスタシア。
その言葉を聞いて、会議室に異様な緊張感が走った。
それだけ誰もが注目していた地域だったのだ。
思えば、シュビスタシア陥落の情報を聞いてから、早くも2週間程が経とうとしていた。
その結果がそろそろ出てくる頃だと、誰もが心の何処かに気に留めていたのだった。
「シュビスタシアは、どうなったの?」
エレーシーの次に身を乗り出して聞いたのは、フェルファトアであった、
「はい、先程、シュビスタシアからの使者から、ヴェステックワさん達がシュビスタシア市役所を占拠し、天政府軍から支配を奪ったとのことです!」
「おおっ!」
ワーヴァが報告を伝えた瞬間、幹部の皆は喜びの声を上げ、各々拍手したり、隣の人と喜びを分かち合ったりしていた。
「良かったわね、エレーシーさん」
エルルーアも口調は冷静ながら、顔には笑みを浮かべてエレーシーに話しかけた。
「良かった……本当に良かった!」
エレーシーは天井を見上げて、これまでの戦いを思い出しながら、勝利の余韻に浸っていた。
そして、ひとしきり感動した後、周りの握手に応じた。
その日の夜は、軍幹部達でちょっとしたお祝いの宴を行った。
まだ、地上統括府を倒すという大きな目標には達しておらず、本隊はここで足踏みを続けたままである。
そんな中で盛大に祝うというのは、他の兵士達の手前、憚られたが、それでも祝わざるを得なかった。
そして宴の次の日、また朝の定例会議を終え、他の地方部隊も動いているのだから、もうそろそろ本隊も攻撃に転じていってもいいのではという話が出始めた。
ここまで、新体制を整えるのに必死であったが、いよいよ時間的な余裕はなくなってきているように思えた。
しかし、この場ではまだ結論は出なかった。
やはり、例の事件はまだ、彼女たちの中に暗がりを残していたのであった。
定例会議の後、幹部達が会議室を離れ、それぞれの部隊の訓練や活動に参加しにいく中、エレーシーは部屋に一人残された。
エレーシーは一人残された部屋で、一息つくと、おもむろに立ち上がって町役場を出た。




