一七九 レプトフェリアの戦い
参謀会議から二日後、フィルウィートの大通りは人でごった返していた。
彼らはもちろん、ミュレス大国軍の兵士達である。
「皆!」
先頭にいたのは、もちろん総司令官であるエレーシーであった。
本来ならば、ここで出発の音頭を取っていたのは統括指揮官であったエレーシーだったが、総司令官になっても、彼女は先頭に立って指揮したがっていたのだ。
「これまで何ヶ月もここで足を止めてしまっていたことには、本当に反省している。この間に、天政府軍の助長を許してしまっていた。しかし、ここからは私達の番だ! 私達が、地上統括府の動きを仕留めるべく、進撃していくのみだ!」
「おーっ!」
本隊の兵士はある程度減りはしたが、残った兵士達は新体制の幹部たちを受け入れていた。
というよりも、エレーシーがこれまでと変わりなく前に立っているので違和感を覚えることがなかったとも言えた。
「それじゃあ、北に向かって、出発!」
そう言うと、エレーシー達は北に向かって進み始めた。
変わったところといえば、ティナの件があったため、幹部たちの両側には護衛部隊がずらっと並び、幹部が攻撃されないように目を光らせていた事であった。
ミュレス大国軍の目指す次の都市はクーカルダルシアと言い、ここから東に進んだヴィラ橋という街から南に進むと、地上統括府市にたどり着く。
地上統括府市を南北に貫く街道の北の端がヴィラ橋ならば、南の端はヴェルデネリアであった。
細々とした街道は脇道のようにいくつかあるものの、この2つの都市を制覇すれば、後は南北に軍を展開すれば良い。
エレーシー達の地上統括府制圧へのストーリーラインが、そこに一筋に横たわっていた。
しかし、その前に天政府軍の拠点が存在しているという街、それこそがクーカルダルシアであった。
ここを制圧すれば、北部ミュレシアへの足がかりにもなるのであった。
しかし、そう簡単に行くわけがなかった。
フィルウィートから2昼夜分行ったところにあるレプトフェリアで、早速天政府軍が出迎えてくれたのであった。
「エレーシー、どうする?」
天政府軍が町の入口にずらっと並んでいる様子を見て、フェルファトアが問いかけた。
しかし、エレーシーの答えは一つであった。
「もちろん、この町の解放のために、戦うだけだよ」
「分かったわ」
そういうと、フェルファトアは主力部隊に合図をかけ、臨戦態勢に整えさせた。
その動きは即座に天政府軍に伝わったようだった。
町の奥の方から次々と兵士が姿を表し、「ミュレス軍を絶対に町に入れさせない」という気概すら見えるようであった。
「フェルフ、ちょっと打ち合わせをしよう」
エレーシーは、これからの動きについて、エルルーアやアビアンを呼んで軽く話をすると、幹部達で納得すると、早速解散してそれぞれの部隊をまとめに行った。
「よし、主力部隊、突撃!」
「わーーーーっ!」
エレーシーが剣を振るって指揮し始めると、主力部隊の兵士達は勢いよく声を上げながら、天政府軍の方へ走っていった。
「襲撃だ! 怯むな! 攻撃開始!」
「はいっ!」
ミュレス大国軍の主力部隊をはじめ、それに続く部隊もまとめて天政府軍に向かっていくと、それに呼応して天政府軍もミュレス大国軍の兵士達に向かって突撃してきた。
「数ではこっちが圧倒的有利だ! 行け! そして、天政府軍に構わず街の中まで突き進め!」
「はい!」
エレーシーは自ら部隊の指揮を執り、部隊とともに少しずつ前進していった。
もちろん、幹部の護衛部隊も同じように動いていく。
「くっ! 援護! 援護を頼む!」
至るところで剣と剣がぶつかり合い、火花を散らしていた。
「わぁっ!」
「ぎゃあっ!」
そして、あちらこちらで、天政府人もミュレス人も悲鳴があがり、決して生温い戦場ではないことは誰の目にも明らかであった。
「よし、突破! 突破!」
暫く経ち、奥の方からミュレス人の声が上がった。
「そのまま奥まで突撃せよ! 町役場を制圧だ!」
「はい!」
フェルファトアも統括指揮官らしく指示を与えながら前へと進んでいた。
家を訪ねて町役場の場所を聞きながら大勢で町の中心街を進み続け、そしてその勢いのままに町役場を制圧していった。
「これでレプトフェリアを制圧したぞー!」
「やったー!」
主力部隊長の制圧宣言に、地上にいた兵士達は沸きに沸いた。




