一七六 新体制
拍手が収まったところで、フェルファトアが再び話し始めた。
「さて、ここでエレーシーが総司令官になったことで、今度は統括指揮官が空位になったわけですが……」
いくらか考え込むような唸り声が聞こえたところで、エルルーアが案を出した。
「まあ、一応、統括指揮官補佐のフェルファトアさんが統括指揮官になるのが一番収まりが良いのでしょうね」
この意見には、他の幹部達も頷いた。
「エルルーアはいいの?」
「私は、統括指揮官として全体をその場で回すよりは、参謀長として作戦の要になっていた方がいいかなと」
エルルーアの意見には、エレーシーも頷いていた。
「まあ、エルルーアはこれまで参謀長だったけど、突撃部隊を率いて前に出たりもしたし、役職に縛られずに役割を全うしてくれると思うよ」
「ありがとう、エレーシーさん。そう言ってくれると嬉しいわ」
「それでは、他薦、自薦、問いません。統括指揮官に他の人を推薦する方は……」
エレーシーが総司令官として初の仕事として発言したものの、特に他に手は上がらなかった。
「フェルファトアが新しい統括指揮官ということで、いい?」
「はい」
「はい」
幹部たちは次々に了承の声を上げた。
「それでは、新しい統括指揮官として、フェルフ、挨拶をお願い」
エレーシーに促されたフェルファトアは、先程エレーシーがしたのと同じようにさっと席を立ち、周りを見回した。
「えー、この度、新しく統括指揮官に選ばれましたので、新総司令官の下、我々ミュレス民族の解放と、民族の自由を一刻も早く達成すべく、戦いを指揮していきたいと思います。これからよろしくお願いします」
フェルファトアの簡単な挨拶の後、エレーシーの時と同じように拍手が起こった。
この次に、それぞれの幹部の役職や、新たな幹部の選出などが話し合われ、以下のように決定した。
・総司令官: エレーシー=ト=タトー
・総司令官補佐兼参謀: アビアン=シアスティア
・統括指揮官: フェルファトア=ヴァッサ=ヴァルマリア
・統括指揮官補佐兼参謀: フェブラ=ダスタンナリア
・参謀長: エルルーア=タミリア
・参謀長補佐兼参謀: フェンターラ=タミリア
・参謀副長: ワーヴァ=タミリア
・参謀: ティアラ=セヴィリア
・参謀兼トリュラリア町長: アルミア=エレンシア
・参謀兼シュビスタシア市長: ティナ=ヴェステックワ
・参謀兼ノズティア副市長兼民族院民族代表: シャスティル=アルベ
・参謀: ヤルヴィアー=マルサトラーラ(前隊長)
・参謀兼参謀本部事務院長: ハルピア=ト=タトー(前隊長)
今回の会議により、一般兵卒にして町長であったアルミア、そして協力者であったティナ=ヴェステックワ、そしてこれまで主力部隊で各部隊の隊長として活躍してくれていたヤルヴィアーとハルピアが新たに幹部に加わった。
そして、今回、各参謀の役割も振り分けてある程度明確化させた。
・行政担当: アビアン=シアスティア
アルミア=エレンシア
・人事担当: ワーヴァ=タミリア
ヤルヴィアー=マルサトラーラ
・計画担当: フェブラ=ダスタンナリア
シャスティル=アルベ
・後方支援担当: ティナ=ヴェステックワ
・防衛担当: ティナ=ヴェステックワ
シャスティル=アルベ
アルミア=エレンシア
・作戦担当: ティアラ=セヴィリア
フェンターラ=タミリア
・情報担当: ハルピア=ト=タトー
「しかし、ここまで変えたら、主力部隊に随行していない参謀の皆とかにも伝える必要があるわね」
エルルーアは腕を組んで伝えた。
「確かに、自分の知らないままに役割を与えられてもね……他の都市の現状も気になるし、一度集めることができるなら、集めたいね」
エレーシーはエルルーアの言葉に乗っかり、全国に散らばっている参謀の招集を提案した。
「うーん、ノズティアにいるシャスティルとかは特に厳しそうだけど、今、やる価値はあるかもしれないわね」
一見荒唐無稽とも思えるこの提案に、フェルファトアも乗っかった。
「それじゃあ、そういう手紙を出しましょうか。まあ、2~3週間はかかるでしょうけど」
エルルーアはそう言うと、早速ハルピアを呼ぶようにワーヴァに申し付けた。
後日、シュビスタシアやノズティアなど、各地で戦った後に防衛隊として残った参謀達の元に、「総司令官暗殺の犯人が処刑され、軍は再び進撃へと歩を進めることとすることになった」という旨の文書、また、「その後の幹部会議でエレーシーが新たに総司令官に就任した」という文書が送られたが、その後、すぐに別の文書が送られた。
その文書は特に暗号で書かれ、さらに非常に遠回しかつミュレス人しか使わないような表現の連続で、文意を掴むのが困難なものではあったが、それを訳すると、内容は以下の通りであった。
先日、ミュレス大国軍はティナ・タミリア総司令官を失った事は既に書簡にて報告しているが、その衝撃は全国に亘り、幹部含め、兵士の士気ばかりか勢力も衰えていることは想像に容易い。
一方で、本日、総司令官暗殺の実行犯をアルトゥ・カル・ファッタファにて発見し、フィルウィートに連行の上、処刑を行った。
我々ミュレス大国軍幹部としては、これを契機として、気持ちを新たにすべく、軍としての体制を幹部間でも多少は整えたものの、完全に整えたし。また、現在の防衛戦の状況も把握したく、地方防衛部隊の指揮役である参謀の皆々様を招集させていただきたし。
大変失礼ながら、皆々様には信頼ある自らの代役を立てていただき、ミュレシア西部、フィルウィートに集うべし。
不可なれば、その旨を返送すべし。
要は、各地に散らばった参謀達の招集である。
これを受け取った各地の参謀は、文意を掴んだ瞬間に驚きを隠せなかったという。
特に、ノズティアというフィルウィートとは相対する地にいるシャスティルは民族院の部下からこれを貰った際に、まず第一に「フィルウィート」という街がどこにあるのか全く分からず、知識ある部下から聞いて初めて、その遠さに驚き、不可の返事を送ろうかと筆を取りそうになったくらいであった。
しかし、自らを救ってくれた総司令官と統括指揮官のために、彼女でさえも長き旅の安寧をネベル・シアノに祈りながら早馬にて一日にも早く着くことを願いながら、長い旅路へと出発したのであった。




