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一七一 ナルティアにて暗殺者の影を掴む

 日も落ちようとした頃、二人はナルティアという街までやってきていた。

 ナルティアは、シュモンシアとアルサンソリアの間に立ちはだかる山間地帯の中にある街であり、これから峠を越えようとする旅人が泊まらんとする大きな宿場町の一つであった。

「どこまで行ったんでしょうね?」

 レヴィア達は休憩の為にこの街の酒場にいた。

 シュトアーリアは、まだ見ぬイシェルキアの影を追ってここまで来たことに不安を感じていた。

「うーん、昨日一昨日のことだから、そんなに遠くまでは行ってないと思うけど……」

「でも、相手は天政府人ですよ。我々の足よりも速いんじゃないですか?」

「うーん……そんなに目立つことするかなあ……」

「ちょっと聞いてみますか」

 シュトアーリアはそう言うと、酒場の店員を招いた。

「昨日か一昨日、天政府人で女性の方を見ませんでした?」

「昨日か一昨日? うーん……そういう方は昨日に限らず、毎日見ますけど……」

「この街の人じゃないんです。それで、軍人というかこう、目が冷たい人」

「うーん……そんな人、いたかなあ……」

「それじゃあ……天政府人の女性で、人目を気にして行動している、普段見ない人はどうですか……」

 レヴィアは別方向から攻め込んだ。

「うーん……人目を気にして……いたような気はしますけど……」

「本当ですか?」

 レヴィアは驚きのあまり、思わず席を立った。

「あなたの探している人かどうかは分かりませんよ。でも、まあ、そういう人がいたような気はしますね」

「それはいつですか?」

「うーん……詳しくは覚えてませんが、昨日の夜だったような……」

「ありがとうございます」

 レヴィアはそう言うと、シュトアーリアの方を向き直して、再び座り直して話しかけた。

「シュトアーリア、どうやらここを通ったみたいだね」

「昨日の夜って言ってましたね」

「今日出ていったとしても、まだ遠くには行ってないし、あわよくば、まだこの街にいるかも……」

「そうですね。もっと探してみましょう!」

 店員から情報を聞き出すと、二人はすぐさま荷物をまとめて、街中の宿屋に「イシェルキアという天政府人が泊まらなかったか」と聞いて回った。

 そして、一軒の宿屋で、確かにそのような人物が今も泊まっているという回答が得られたのであった。

 これには、レヴィアも思わず興奮を抑えきれなかったが、ここで騒いで逃げられるわけにはいかないと、冷静さを取り戻し、同じ宿屋を一部屋借り、監視用とした。

「これでよし。さてと……」

 レヴィアはシュトアーリアの肩を叩き、少し笑みを含みながら話し始めた。

「シュトアーリア、一人でフィルウィートに帰れる?」

「……はい?」

 シュトアーリアはレヴィアの急な質問に、その途端に思考停止に陥った。

「ど、どういうことですか?」

「この事を、フィルウィートの中央部隊に報告して欲しい。それで、僅かな人数で秘匿作戦を実施しよう。そう提案してみて欲しい」

「なるほど……分かりました。やってみます」

「絶対に、イシェルキアを統括指揮官の前に突き出してやろう!」

「はい!」

「それじゃあ、行っておいで!」

 シュトアーリアは、レヴィアから食料を手渡されると、早速宿屋を飛び出し、これまで来た道を戻り、北に向かって進み始めた。

「さて……イシェルキア、どう出るか……」

 レヴィアは、たとえイシェルキアが移動しても大丈夫なように、シュトアーリアに分かるような情報を残しつつ移動することにしていた。

 ついに、暗殺者の捕獲に向けて、最終作戦の局面へと移り始めていた。

「お、動き出した」

 レヴィアは、イシェルキアの動きに合わせて、また南へと下り始めた。

 この南にある大きな街といえば、アルトゥ・カル・ファッタファ。

 山と山に挟まれ、また海にも面した街である。

 レヴィアは、ポルトリテまで逃げられる前に、アルトゥ・カル・ファッタファまでに何としても捕獲したかった。

 そのために、シュトアーリアも、そしてフィルウィートにいる中央部隊と軍幹部達も、全てが、あの時から初めて動き始めたのであった。

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