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一六六 見えない天政府軍の後を追う

 中央部隊と情報部隊の隊員達が待つ宿屋に帰ったハルピアは、情報部隊の一部の兵士を別室に呼び出した。

「今さっき、統括指揮官から命令を仰せつかったから、それを遂行するための作戦を考えましょう」

 ハルピアは兵士に、市長室での会議で決まった事柄を伝えると、それを達成するためのハルピアなりの考えを説明した。

「いい、まず、天政府軍はフィルウィートから追い出したけど、いくらかは反撃の手を考えるために、少しは残ってるんじゃないかと思うんだ」

「でも、それじゃあ、どうしてこれまで私達が進軍を停止してきた時に攻撃してこなかったんですか?」

「それはもちろん、私達の主力部隊が守護部隊になって守ってるから手が出せなかったんじゃない? まあ、それはいいとして、でも、フィルウィートでその暗殺者に関する話をしているとは思えないんだ」

「はあ」

「だから、もっとどこかの小都市に潜んでいる天政府軍なら、その話をまだしているんじゃないかと思う」

「小都市に天政府軍が潜んでいるんですか!?」

「私はそう思ってる。だって、他の街にだってまだ天政府人が息づいているんだから、その支援をする人がいるでしょ? 多分、天政府軍がその任務を担っていると思うよ」

「そ、そうですか……」

「だから、フィルウィート近辺の宿場町、交易都市、農村などで、天政府人の話を、天政府人にばれないように盗み聞きして欲しい」

「どういう所で?」

「情報部隊員に任せる。まあ、臨機応変って事で」

「それはいいですけど、私達、結成してまだそんなに日が経ってないですよ?」

「でも、諜報活動自体はしたことある兵士ばっかりでしょ? 彼らに任せましょ」

「それはそうです、ね……」

「だから、二人一組になって、南北の街それぞれに散らばらせる。これでどう?」

「二人一組なら、小回りは効きそうですね」

「そうでしょう。それでいきましょう」

「はい」

 ハルピア達は小会議を終えると、早速情報部隊員に話をつけて、フィルウィートを出発させた。


 南側には、情報部隊員のレヴィア・アルシアとシュトアーリア・ヴァルフェンデルが出動することになった。

 この二人の中では、レヴィアが特命隊長として旗振り役となった。

「レヴィアさん、どこに行きます?」

 シュトアーリアの問いに、レヴィアは地図を眺めながら考えた。

「うーん、大街道沿いの街は既に我が軍が制圧してるから、天政府軍が逃げているなら、大街道から東にそれた山にある都市だろうね。よし、まずはこの辺りで調査してみよう」

 レヴィアは、大街道から少し外れた所に書いてある「シェルヴェネルベデア」という街を指さした。

「はい、分かりました。とりあえず大街道沿いに歩いていくということでいいですか?」

「そうだね。そうしよう」

 二人は少し話をして方向を合わせると、南側の門から出て橋を渡り始めた。

 今回は諜報活動ということもあり、二人とも武装を外し、フィルウィートに住んでいる行商から物を分けてもらうと、商人風な出で立ちで、楽しそうに歩いていた。


 歩いて30分経った頃、東側の山に伸びる分かれ道が見えた。

 これはフィルウィートの近くから地上統括府の方に繋がる「山越街道」であった。

「ねえ、ここを行ってみようか」

「そうですね、行ってみましょう」

 二人はここで東側に進路を取ることにした。

 すると、すぐに坂道が始まった。

 さすがは「山越街道」というだけはあった。

「……ここをずっと行くと地上統括府のある筋につくと思うけど、まさか山を超えたらもう地上統括府に入り込むということはないよね?」

「いやあ、さすがに宿場町の一つでもあると思うんですけどね」

「こんな誰も通りそうにない道、歩いてて不自然じゃない?」

「早く街に入りましょう。街に入れば違和感はないですよ、きっと」

「まあ、それはそうか。よし、急ごう」

「はい」

 二人は話をしながら、坂道を苦労しながら登っていった。


 山越街道に入って数時間が経った頃、森の中に急に街が見えてきた。

「ほら、シュトアーリア。街だよ」

「本当ですね。……こんな所に天政府軍がいるんですか?」

「うーん、天政府軍がいるかどうかは……いや、フィルウィートから逃れた天政府軍がいるかもしれないから、行ってみよう」

「はい」

「いい? ここからは、慎重にね」

「は、はい」


 二人はシェルヴェネルベデアの街に入ると、早速宿を探して荷物を置いて早速街に出かけた。

 街は街道沿いに店なり家なりが並んでいるが、その所々に小道もあった。

 歩いている人はミュレス人もいたが、どちらかというと天政府人のほうが多かった。 天政府人が外を歩き、ミュレス人は家で仕事をするというのが地方都市での二民族のこれまでの関係であったが、まだ民族解放が成されていないこの街では、未だにこの状態が続いているようだった。

「うーん……歩いていると目立つかもしれないね。早いうちにお店にでも入ったほうがいいかもしれない」

「私達、行商ですよね?」

「行商の方は大体、宿に入ったら店に入って夕食を食べるのが普通だよ。それに則っていれば大丈夫だと思う。天政府人とミュレス人が半々ぐらいにいる店がいいな」

「そうなると……どこですかね」

 二人は話が聞けそうな店に入ると、食事をしながら、しっかりと耳をすませて辺りの話を聞いていた。

 ところが、その店には天政府人はちらほらとやってくるのではあるが、待っても天政府軍の兵士らしき人物は現れなかった。

 同じ店にいられるのはせいぜい2~3時間だということで、他の店にも入ってみたが、結局成果は得られなかった。

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