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一六二 北部隊の現場捜索

「よし、出発!」

 北部隊長のリアディルは、自らの部隊と護衛部隊を引き連れて、フィルウィートの北門を潜って大街道に歩みを進めた。

 実に数ヶ月ぶりに再びこの門を潜ったことになる。

 リアディルは内心ではある不安を抱えていた。

 それは、この「時間」が証拠を散逸させているのではないか、ということだった。

 しかし、天政府軍に暗殺部隊が存在するというのは初めて知ったことでもあった。

「ねえ、レッティア。痕跡なんて天政府軍の暗殺部隊が残すと思う?」

「普通は考えにくいですね……でも、天政府軍だって何も失敗しない訳ではないでしょうし」

「行ってみれば、何かあるかもしれない……ということかあ」

「そうですね。統括指揮官に何かお土産を持って帰りましょう」

「お土産……ね。さてと、どのあたりだったかな?」

 リアディルは護衛部隊の兵士に、ティナが撃たれた正確な場所を何とか思い出してもらいながら案内をさせた。

 あれから日数が経っていたが、それでも僅かに血痕は残っていた。

「この辺りですかね」

「よし、ここから調べ始めよう。えーと、総司令官は確か真っ直ぐ歩いていて、左脇腹に矢を受けたんだったから……」

 リアディルが指で辿った先には、海との間に僅かな森が広がっていた。

「なるほど、この先は海か……」

「どうしました?」

「いや、この道は山側と海側があるでしょ? どっちが逃げやすいかなと思って」

「どっちが逃げやすいんですかね?」

「うーん……船があれば、山側に逃げるよりも……でも、天政府人には関係ないか。まあいいや。とにかく、この海側の森の中から射撃した可能性が高いかな。よし、この中を調べてみよう」

「はい!」

 リアディルの声に従い、隊員達は森の中に入っていくと、何か人工的な物がないかを慎重に調べ始めた。

「足跡でも物でも、ないものがあるとか、あるものがないとか、何でもいいから不自然な点があったら何でも報告して!」

「はい!」

 隊員達は特に射線上にあるとされる場所を舐めるように見て回った。

「あまり荒らさないようにね! 自分で痕跡を消さないように!」

「はい!」

 リアディルとレッティアは道の方から隊員の様子を伺いながら、他に探すところはないかと考えつつ歩いていた。

「どう? 何かあった?」

「いえ、まだ何もないです」

「うーん……じゃあ、ここが終わったら向こうの方を探してみて」

「はい!」

 こうして北部隊の隊員達が探し始めて少し経った頃、一人の隊員が声を上げた。

「隊長!」

 その声にリアディルは即座に反応して走っていった。

「何かあった!?」

「隊長、これを見て下さい」

「これは……」

 彼女が見つけたのは、手のひら程ある純白の羽根であった。

「白い羽根かあ……確かに、これは鳥のものじゃないなあ。天政府人のものっぽいけど……ありがとう。一応貰っておこうかな」

 リアディルは羽根を見ながら、この一枚の羽根から何が分かるのだろうかと考えながら、また歩き回った。

「他に何か無いー? 茂みの中とかを特に探してみてー」

 すると、一人の隊員が駆け寄ってきた。

「隊長! こんなものを見つけました!」

 興奮気味に駆け寄ってきた彼の手の中を見てみると、そこには黒い手袋があった。

「これは……手袋か。黒くて目立たなかったから落としたのかな? これはどこで見つけたの?」

「こちらです」

 隊員に案内された所を見てみると、それは羽根が見つかった所から射撃された位置に近寄った所だった。

「なるほど……ということは、ここで矢を撃った後に向こうの方に移動する最中に羽根を落としていったのかな? よし、この他にも何かあるかもしれない。もっとどんどん探そう!」

 リアディルはそう言って、この調子で沢山の証拠を集めようと躍起になった。

 しかし、そう上手く行くわけはなく、これ以上の証拠は見つからなかった。

「うーん……これで犯人が見つかるのかなあ?」

 たった2つだけの証拠しか見つからず、自分たちが果たしてエレーシー達が満足できるような成果が挙げられただろうかと少し不安を感じた。

 しかし、かなり長い時間探しに探し尽くしており、日も次第に暮れてきた事もあって、とりあえずこの2つの証拠を持ってフィルウィートに帰ることにしたのであった。

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