一五九 進み始めた会議
翌朝、フィルウィートの市役所では、再びミュレス大国軍の幹部会議がいつも通り開かれた。
昨日と同じ顔ぶれで会議が始まり、それぞれ、考えてきた案が次々と発表された。
アビアンはといえば、昨夜既にエレーシーに案を披露していたので、エレーシーの様子を伺っていながら他の人の発表を聞いていた。
ついにアビアンが発表というところで、エレーシーがその間に割って入った。
「アビアンからの提案については、昨日の夜に聞かせてもらいました。アビアンの案は、ティナを襲撃した犯人を探し出してはどうかという話です」
エレーシーが代弁したアビアンの案に、他の幹部達は特に何かいうでもなく首を縦に振って、ある程度良い感触を示した。
「私としては、もちろん全兵力を注ぐという訳ではないけど、犯人捜索に兵力を割きたいと考えているのだけれど……」
「まあ……悪くはないわね」
エルルーアは腕を組んで考えながら、ポツリと呟いた。
「だけど、アビアン、なぜ姉さんを暗殺した犯人を探したいの?」
「まあ、何もしないよりかはマシかなと思うし、それにあれから何もしてないから天政府軍はまた私達の事を見下げてるだろうから、もし見つけ出せて、何か刑に処することで、私達の威勢を示すことができるんじゃないかと思ってね。それは、私達の気持ちだけじゃなく、兵士たちの士気もあがるんじゃないかなと思うし」
「まあ、そうかもしれないわね」
「だから、その犯人を探そうと思ったわけ」
「なるほど」
「それじゃあ、次の人……」
アビアンの案はひとまず幹部の皆に受け入れられたようだった。
「さて、皆から案が出たわけだけど、どれがいいかを決めようと思う。皆、どれがいいと思う?」
「そうね……私はアビアンの案がいいと思うけど……」
エルルーアは少し考えてアビアンの案に乗ったようだったが、その目の奥には復讐心が見え隠れしていたように見えた。
「私も、ティナを暗殺した犯人を探すのがいいと思うかな。やっぱり、これまで私達はティナを総司令官として引っ張ってもらっていた訳だし、これから新しい軍として行動していくには、ティナのこの事件について、一つ線を引いておくことが重要じゃないかなとおもうんだよね」
フェルファトアもアビアンの思いに共感していたようだった。
「他の人はどう?」
エレーシーはその他の人にも聞いてみたが、エルルーアやフェルファトアの意見に同調した。
「それじゃあ、暗殺犯を探し出して連れてくる作戦に取り組むということでいいね」
「はい」
エレーシーの最終的な問いかけに、反対する者は誰もいなかった。
それほどにまで、ティナは愛されていたのだと、彼女はまた感心もしたのだった。
かくして、会議はこれからどのように作戦を進めていくのかという方向に纏まって進み始めた。




