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一一四 これまでの経過報告(西軍)-2

「あと……どこまで話したかしら」

「えーと、ポルトリテに2回派兵したって所まで」

「ああ、そうそう。正直な話、今振り返るとだけれど、その時に私達の力量が推し量られたのか、大したこと無いと思われたのかわからないけど、事ある毎に、逆に天政府軍がヴェルデネリアを攻撃しにくるようになったわね」

「何回も?」

「そう、何回も。その度に追い出すんだけどね」

 ティナ達旧東軍の幹部は、その言葉を聞いて一気に険しい顔をして、改めてフェルファトアの言葉に注目した。この事は一回、フェブラから聞いたのだが、それよりも事態は深刻に思えたからだった。

「天政府軍は、最初に来たくらいの人数で来るの?」

「うーん、その時によって様々だけど、半分くらいの時もあれば、最初に来たくらいの人数の時もあったわね」

「初戦ぐらい来た時もあるんだ! それでよく追い返せたね」

「まあ、一応こちらでも兵士の数は増やしてはいるし、武器も自作で何とかやってきたし、なるべく市内には入らせないように門前での警備を厚くしてるから……」

「なるほど」

「でも……」

 そこで、これまで黙って聞いていたエルルーアが口を開いた。

「それはひょっとすると、偵察も兼ねてるかもしれないわね、フェルファトアさん」

「偵察?」

「そう、彼らは戦いながらもしっかりと見てるのよ、私達のやり方を」

「やり方……でも、なぜ?」

「それはおそらく、今、ヴェルデネリアを奪還した所でどうしようもない事を知ってるからじゃないかしらね。おそらく、いずれ東から来る軍が合流することを予測してるんでしょう」

 エルルーアの推理を聞いて、フェルファトアは冷や汗が出る思いがした。

「そうなのかしら……」

「あくまで私の推理だけど、そう考えてもおかしくないわよ。現実的に考えて、ポルトリテで2回も防衛に勝利したなら、ヴェルデネリアで勝てないとは思えないもの」

「うーん、確かに、エルルーアの言うことも一理あるわね」

 エルルーアの理論に、姉も頷いた。

「私達でも、2回も防衛に成功したら、その勢いを失わないままに相手の根城に攻め込むかもしれないわ」

「普通なら姉さんの言う通りでしょうね。だから、偵察も考えられるという訳」

「なるほどね……」

「まあ、実際にそうだとしても、まさかこれだけの人数を引き連れてきてるとは思わないでしょうね」

 エルルーアは、自分たちが非常に多くの兵士を集めたことで、逆に天政府軍に圧力を掛けられると考えていたようで、最後には少し笑いながらこの話題を締めた。

「さて、大体これまでの西軍の戦績はそんなところかしら?」

 ティナはフェルファトアに確認した。

「うーん、天政府軍との関係はそんなところね。後は、隣近所にある2つの町役場を制圧したことと、ヴェルデネリアから東の山間街道や海岸沿いにある、いくつかの小さな村と協力関係を結んだ事くらいかな?」

「そこには天政府人はいないの?」

「貴女の住んでいたベレデネアと同じ様なものよ。ミュレス人の村長が村の全権を握っていて、ヴェルデネリア市の天政府人がちょくちょく様子を見に来るような感じだったらしいわ。そこをミュレス人が取って代わった訳だから、そのまま私達に協力してねって話になったの」

「なるほど、天政府軍と戦いながら、並行してやるのはなかなかできることじゃないわね。さすが、フェルフだわ」

 ティナに優しい言葉を掛けられて、フェルファトアは少しばつが悪そうに苦笑しながら報告を終えた。

 

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