第一章 友達は大事にしよう! ~traitorous friend~ -5-
役所の通信兵団司令室。
そのドアを開いた咲夜の目に映ったのは床に転がった血まみれの少女。
いや、血ではない。
黒い何かが体中にまみれた少女が恐らく因幡てゐであることは予想がつく。
咲夜は急いで因幡てゐを抱きかかえる。
「大丈夫!?」
咲夜がてゐの頬を軽く揺するとその目は力なく開く。
「遅…かったね」
その掠れた声からは今にも消えそうな命の灯火を感じる。
「まだ死なないでいただけますか?あなたには聞きたい事があるんです」
「この…街で…起きてること」
咲夜は頷く。
もう時間の残されていないことを自覚する因幡てゐは咲夜の思考を先回りして簡潔に話し始める。
この街の体制が出来て間もない頃、二人の妖怪がここにやってきた。
その一人が霊烏路空、もう一人が火焔猫燐。
その片方、火焔猫燐。怨霊を操る能力を持つ彼女こそが最大原因である。
因幡てゐは掠れた声で途切れ途切れながらそう語った。
「事情はわかりました。火焔猫燐を叩きます。しかし、何処に」
因幡てゐはひとつ頷く。
「鈴仙…は?」
「ええ、ピンピンしていましたよ」
よかった、と小声を挟んだ後、因幡てゐが続ける。
「あいつに…」
「わかりました。後のことは任せてください」
咲夜は因幡てゐを壁にもたれかける様に下ろす。
そして、急いで鈴仙を探しに部屋から出ようとする咲夜を因幡てゐは力なく引っ張る。
「どうしましたか」
「東風谷…早苗…を…殺して」
因幡てゐの顔は悔しさで歪んでいる。
その目からは黒く濁った大粒の涙。
全て言い終えることなく因幡てゐから力が抜ける。
「東風谷早苗って言ったけど」
後ろに居た猫型の橙が呟く。
「橙、今は火焔猫燐の事です。そのためにまず鈴仙を探さないと」
咲夜は東風谷早苗と呼ばれた人物に興味は持てない。
もちろん殺すつもりも無い。
たとえ死の間際の願いだとしても、知らぬ人間の敵を討つ趣味は無い。
罪悪感が芽生えつつも、東風谷早苗の名前を心の片隅に置いておく程度にとどめる。
「それじゃあ手分けして探しましょう」
橙は首を振る。
「大丈夫。咲夜はここで待ってて」
「しかし・・・」
「この姿ならゾンビに襲われないみたい。だから私一人のほうが安全で動きやすいの」
ここまで来る途中、何体かのゾンビを倒してきたが、襲い掛かってくるのは咲夜にのみ。
猫型になっている橙には見向きもしてこなかった。
「この建物の中は安全みたいだし、それにちょっとだけ心当たりがあるんだ」
橙は後ろ足で立ち上がって胸を張るように言う。
そういうことなら、と咲夜は橙の申し出を承諾した。
――――――――――
南部街外壁の天辺。
「どうなってんの、これ・・・」
四苦八苦しつつも登り遂げた鈴仙は、携帯用テントを張って寝床を確保した。
しかし、ふと街の中を覗いてみると飛び込んできたのは奇妙な光景。
ところどころで人型の影がユラユラとゆれている。
それはまるで昔聞いた怪談話で想像した景色そのもの。
南部街で何らかの異変が起こっていることは明白だった。
勇敢な者ならばたちまち自分が登っている塀を飛び降りて、この夢遊病のように歩く影の正体を突き止めようとするだろう。
そうあれればいいなぁ、鈴仙は考える。
それは鈴仙がそのような人間ではないから。
今胸に大事そうに抱えているライフルはあくまで護身用。
危険を犯してまで他者のために身を投じたりする人間ではない。
人が困っていても他の誰かが助けるのを黙って待っているような薄情な人間だ。
例えばそれが仕事という袈裟を着ていたならば話は別だろう。
しかし、今はプライベート。
それもわけもわからずこの街から爪弾きにされた身だ。
もはや義理など無い。
数時間前の鈴仙ならばそう考えただろう。
ただ、仲間を無残な形で失った彼女は自分でも驚くほど自然に装備の入ったリュックサックに手を伸ばしていた。
まず頭の中をよぎったのは友人であるてゐの存在。
任務を終えた自分が街に入ることを拒否した因幡てゐの指示。
そして南部街内部の現状。
鈴仙は友人の身を案ずる。
一式の装備を整えなおした鈴仙はウサ耳レーダーで街の内部を探ろうとしたときだ。
街の内側の壁面から呻き声。
レーダーを使わずとも聞き取れる声だ。
鈴仙は警戒しつつも声の主を確認する。
「あなたは…!?」
それは夕時、ビル群であった猫の少女、名前は橙と言ったか。
10mある外壁、その8m過ぎたあたりまで登ったところで必死に自重を支えている。
鈴仙は急いで身動きが取れない橙を引き上げる。
「えへへ…助かったよ」
橙が申し訳なさそうに頭を掻く。
話によると鈴仙に会うために城壁を登った際、勢いが足りずに壁にへばりついていたらしい。
鈴仙はとりあえず愛想笑いしておくことで橙を慰める。
「どうしてここがわかったの?」
「外から見えたんだよ。壁の上にテント張ってるって」
今は真夜中。月明かりしか頼りにならないほどの暗闇で目視することは常人には難しい。
しかし、橙は猫の妖怪。夜型に特化した視力が功を奏したのだろうか。
そのあたりはウサギの妖怪でもある鈴仙の中で納得のいくところでもある。
「悠長にしてる場合じゃなかった!中の様子はどうなってるの?何が起こってるの?」
「お、落ち着いて!」
突然迫ってきた鈴仙の剣幕にたじろぐ橙。
我に返り落ち着いた鈴仙の様子を確認すると、橙は今まであったことを説明した。
鈴仙の顔はみるみる内に血の気が引いていく。
「そんな…てゐ…」
両手で顔を抑えてうなだれる鈴仙。
その目からは涙が流れている。
このご時世、片方が先に逝ってしまう事など覚悟していた。
しかし、まさか自分が送る側になるなんて鈴仙は思ってもみなかった。
ほんの短い間、鈴仙は言葉を失い友人に思いを馳せ、簡潔な他愛の無い言葉で弔う。
そして顔を上げたその目は微かに赤いものの、すでに乾いており、表情には強い意志が宿っている。
「もう大丈夫。話はわかったわ。火焔猫燐を探せばいいのね」
橙が頷いたのを確認して、鈴仙はレーダーで火焔猫燐の居場所を探る。
鈴仙の能力。それは妖怪化したことによる身体能力の変化もそうだがそれだけではない。
その一つが、ウサ耳レーダーを使った探知。
しかし、厳密には耳による知覚能力ではない。
彼女の力は波長を操る。
空間に存在する波動。音波、光波、電磁波、衝撃波などの様々な波を読み取る力。
自然界では反響定位に近いがそれも違う。
勿論そのようなことも可能だが、波動を正確に知覚できる彼女は、自ら発した波動であらずともその発生源を割り出して、対象の位置を知ることが出来る。
この壁上という見下ろした景色は遮蔽物も少なく、彼女の能力を最大限に発揮できる場所とも言えた。
火焔猫燐の居場所を特定に時間などかからない。
鈴仙は行くべき場所を正確に橙に伝える。
礼を言い急いで咲夜の元に走ろうとする橙を鈴仙は引き止める。
「待って!私も行くわ。こう見えても兵士の端くれ。あなた達の戦力にはなるはずよ」
「うーん、ちょっと待ってね」
そう言って鈴仙を制した橙はしばらくして会話を再開する。
しかし、その声は変化している。藍の声だ。
「お待たせした。鈴仙、君にはここを拠点として待機していて欲しい」
「それは出来ない相談ね。こっちは友人を殺されているのよ」
「君の気持ちはわかるしこちらとしてもそれを汲んでやりたい。だが、それよりも私は因幡てゐの気持ちを尊重したい」
眉をしかめる鈴仙をよそに藍は続ける。
「彼女が君をこの街に入れなかった理由だよ」
「理由?」
「一つの媒介に二つの異なるものが入ると反発作用が起きる。魔力という風に一括りにされているものでも厳密には種類がある。法力、妖力、霊力などだ。特に妖力と霊力は相性が悪い」
鈴仙もその辺りはマニュアル的知識として知っていた。
しかし現状と結びつけることが出来なかった。
藍からそれを指摘された今、一足先に友人の意図を理解する。
「それは人体という媒介に入っている魂にも関連している。火焔猫が操っているのは死霊。それもさらに厄介な怨霊だ。つまり妖怪である君の中に怨霊が憑依すればその時点で死ぬ恐れがある」
「まさか…あいつ、私を守るために?」
「私はそう解釈している」
「話はわかった。ここで待機しているわ」
「頼む。後で橙もここに来る予定だ。守ってやってくれるとありがたい」
鈴仙が頷くのを確認した藍は橙へと意識を返し、壁を駆け下りる。
一人になった鈴仙は二度目の沈黙。それに気づかなかった自分の愚かさ。足りなかった友人への謝辞。再確認した友情。そして最後に一本取られてしまった事への賞賛。
その全てが攪拌された感情に鈴仙は思わず膝をつく。
うつむいた顔からはその表情はうかがい知れない。
「あんたって奴は…」
自身の発した掠れた音波が小刻みに震えながら消えていくのを鈴仙は感じた。
――――――――――――
南部街中心に位置するもっとも大きな建物。
その屋上の隅にある小さな搭屋の上。
下部で結った二つの赤いお下げが風になびかせながらゴシップドレスを着た少女が楽しそうに笑う。
その頭には猫の耳、尾てい骨には日本の長く滑らかな尻尾が生えている。
少女の名前は火焔猫燐。
その能力は怨霊を操ること。
彼女の周りを円を描くように飛ぶ怨霊たち、燐はゾンビフェアリーと呼ぶそれを死体に憑依させることによりゾンビは完成する。
無論、ここが死街地と化したのもこの少女の仕業である。
少女は舌なめずりする。
それは猫であるがゆえの嗜虐性、獲物を追い詰め遊びながら殺す本能。
獲物とはこの街に愚かにも無知なまま飛び込んできた銀髪のメイドだ。
どうも腕は相当立つらしい。
先ほどからしもべたちを使いアプローチをかけているものの上手くはいかないまま。
しかしこういった強者を消耗させていく様を見るのは実に愉快だ。
残念ながら遠距離では仕留め損なったが、ここで迎え撃つ事こそが望むところだ。
燐は階段を駆け上がる音を静かに吟味する。
湧き上がるように昂ぶる本能を必死で押さえ込む。
確実にしとめなければならないからだ。
久々の獲物を友に献上するために。
―――――――――――
火焔猫燐が居るという建物の屋上は無数の死体が乱雑に横たわっていた。
「準備は万端ってことね。そろそろ出ておいでくださいな、火焔猫燐」
「じゃじゃーん! お姉さん、よくここまでたどり着いたね」
十六夜咲夜の呼びかけに、搭屋の上から返事する燐。
「はて、ここに来るまでにどこか難所でもございましたか?」
「いいねえ! その自信。惚れ惚れするよ。ところでさ、どうしてお姉さんはあたいのところまで来たんだい? この街が危険だと判ったならばすぐに逃げればいいと思うさね」
「うーん、そうね。強いて言うなら食器洗い前の台所掃除しないと気が済まないタチだから…ってところかしら」
「よくわからないけど、じゃあまずこいつ達を倒してから綺麗にしてもらおうかな!」
燐の声に応じるように死体達が立ち上がり咲夜に襲い掛かる。
咲夜に緊張感無く銀のナイフを抜き取る。
(さてと…結局免許皆伝とは行かなかったけれども)
はじめのゾンビが正面から咲夜に飛びつく。
咲夜はナイフを上空に投げ上げると、フラリとゾンビに寄りかかるように体を預ける。
そして接触の瞬間に足を踏み抜くと、ゾンビの体が宙を舞って胴体から爆ぜる。
(発勁を組み合わせた当身。見よう見まねだけどうまくいったようね。あいつもたまには役に立つじゃない)
寸刻の師である紅美鈴のことが頭をよぎる。
紅美鈴。紅魔館の門番である彼女は中国拳法と気功術の達人だ。
咲夜は嘗て護身用と称して暇つぶしに彼女から中国拳法と気功術を学んだことがある。
紅美鈴は咲夜の上達振りを褒めちぎったが、結局身についたのは触りの部分だけ。
しかし、気功術と中国拳法の組み合わせはゾンビたちにとって大きな弱点であることは明白だった。
掌底掌底掌底。落下しゾンビに突き刺さるナイフを抜き取りまた当身。後ろ回し蹴り。掌底から一閃二閃。前進してからもう一閃。そして当身。
相手は人海戦術。とはいえ意識も技術も持たない素人以下の集まり。
能力を使わずともその優れた判断力と技術のみで対処は容易。
爆ぜる肉塊を轍としながら着々と燐の待つ搭屋へと近づいていく。
焦りの色を見せたのは燐。
万端かと思われた準備が全く十分ではなかった。
しかしまだまだこちらが優勢と思える数だ。
「お姉さん。何かの達人なのかい?」
「素人に毛が生えた程度ですわ」
「このままじゃヤバいから本気を出させてもらうよ!」
途端、燐の周りを浮遊していた怨霊が左右にうねりながら咲夜へと突撃を始めた。
「こいつ達はゾンビフェアリーって言ってね。取り憑くのが死体ならゾンビとして使えるんだけど、それが生きた人間ならどうなるかねえ」
そのスピードはゾンビの比ではない。
咲夜は驚き、仰け反るようにそれを回避する。
「爆発する?それとも体の自由が奪われる?あたいは興味あるね」
形勢逆転。ゾンビフェアリーの突撃をかわしつつ、ゾンビの制圧を跳ね除けることは困難。
咲夜を取り囲むゾンビの円陣はたちまち小さくなり、やがて咲夜は群れに呑まれた。
「正直肝を冷やしたよ、お姉さん。でも楽しめたよ」
「お楽しみいただけてよかったですわ」
安心で弛緩した燐の体が再び硬直する。
首元には冷んやりとした鋭利な感覚。
燐は無意識に両手を挙げ降伏の意を示していた。
自分はこの女に絶対敵わないと理解したからだ。
「ただちにゾンビの使役を断ちなさい」
燐は無言でその言葉に従う。
ゾンビフェアリーは霧散し、蠢いていたゾンビは糸が切れたように倒れていく。
な
「お姉さんはあたいをどうするつもりなんだい」
燐の質問に首を傾げる。それはこの後この妖怪をどうするか明確に決まっていなかったからだろう。
「場合によっては殺しますね」
「場合によってあたいは助かるってことかい?」
「それを決めるのは私じゃありませんわ」
「少し聞きたいことがあってね」
咲夜の言葉を合図として物陰から出てきたのは黒猫、もとい橙の体を借りた藍。
「なんだい、同族かい? 縄張り争いでもしようって」
「君の行動の意図に関して興味は無い。ただ街のはずれにある祠、そこに祭られている奴に対して少し聞きたくてね」
急所を突かれたように燐の体が少し跳ねる。
藍は咲夜にも説明するように話を続ける。
「この死んだ土地。死んだ世界でここだけ影響を受けずに繁栄している。それは素晴らしい事だが、どうも納得いかないところがあったのだが…。
あの祠の中を見て合点がいったよ。この街の崩壊は結界を張ることによって免れている。それも強烈なやつだ。おそらく結界を張っているのはかなりの実力者だろう」
それもここだけが特別ではない。
各地に強力な結界が展開されているはずだ。
「だがあの祠を見てわかった。”結界核”。この方式を採用しているな」
”結界核”について藍が説明する。
結界核とは、展開する結界を継続するために必要な魔力が使用者のキャパシティを越えてしまう場合に添えられる魔力を内包した神具のことである。
結界核がある内は問題なく結界の力を持続できるのだが、魔力が尽きた場合や、核が壊れてしまった場合にその効果が消滅してしまう。
この対処法として用いられるのが人柱である。
人柱として結界核の媒介に選ばれるのは魔力の源泉が優れており、且つ適正のある者のみ。
「この街の人柱はあの祠で見た人妖だろう。聞きたいのはその人妖と結界を張った者についてだ」
拘束している燐の体が震えている。
「おそらくあの媒介はもうもたない」
「そんな!お空はしんでしまうのかい!?」
「それは何とも言えないが、無事ではすまないだろう」
「原因は?」
「今質問しているのはこっちだろう?」
黙る燐。
「見たところ、適正も魔力も申し分ない。原因は精神的な崩壊だ。それについての心当たりはあるか?」
「あるよ…」
燐は小さな声で話し始める。
「あいつはねえ、妖怪化した時の影響が強かったのか食人衝動が強かったんだ。人柱になってからそれが一時期収まっていたんだけどね。少し前にその衝動が再発してね」
「それでこの街の人間を君が食わせていったと?」
燐は能力を再び発動して倒れている死体をその立ち上がらせ、その衣服をめくらせる。
死体の腹部にはあるはず肉が抉り取られて、向こう側から背骨が覗いている。
あまりの酷さに咲夜は目をそらした。
「これは酷いな」
「仕方なかったんだ! あいつが苦しむところをこれ以上見たくなかったから」
「その事なんだがな。彼女の食人衝動が再発することはおかしいんだ」
「え?」
「結界核の媒介になった者の本能は極端に薄れる。これに限らず言えることだが、人柱となった者は人よりも供物、物に近づくからだ。どれほどその衝動が強かったとしても我慢できない程とはありえない」
そんな馬鹿な、と燐の表情は驚愕の色を宿す。
それでは自分が今まで見てきたこと、やってきたことは何だったのかと。
「もし考えられるのは外部からの干渉。その心当たりは?」
「はぁ~い」
返事はその場にいる者の声色とはどれも違っていた。
三人は辺りを見回す。
声の主である少女は塔屋の向かいのフェンス、パラペットに足を組んで座っていた。
「多分それ、私の話ですねぇ」
罪悪感など全く感じられない口調で少女は言う。
「初めての方もいらっしゃるようです。申し遅れました。八坂神奈子様と…いえ、”に”仕える巫女、東風谷早苗と申します」
早苗と名乗る少女は憎悪の感情をあらわにして睨み付ける燐を一瞥し、微笑を浮かべながら残りの二人に自己紹介をする。
立ち振る舞いとは対照的に、彼女の内側に秘められた邪悪さは二人に返答を躊躇わせた。
「ん~、いいですよ。自己紹介なんて社交辞令ですもんね。それにこんな非常事態ですし」
早苗は視線をこちらに向けたまま、あさっての方を指差す。
その先には野太い光の柱。
地面から天に向けて湧き上がるように登る光のオーラ。
藍はその光景に見覚えがある。
「お空…!」
最初に口を開いたのは顔面蒼白の燐。
咲夜はその迫力に圧倒されて絶句。
「媒介が壊れたのか」
考察したのは藍。
そしてそれに早苗はまるでセールスマンの様に他人事な口調で続けた。
「これはなんとかした方がいいですねぇ。それとも逃げますか? どちらにしても早く行動に移すことをおススメしますね」