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第二章 いのち短し戦え乙女 ~underhanded actress~ -2-



夢幻館の内部。

中は粗末なものだったが、奥に置かれた分不相応な玉座に風見幽香は座った。

その左には小町、右には妖夢、そして咲夜ら三人はその前に対していた。


「どうも客人に失礼があったようね…、なんて言わないわよ。この子達はあくまで私の取り巻き。私の意志とは無関係の存在だからね」

「キツイこと言ってくれるねえ」


幽香の突き放した発言に苦笑いの小町。

妖夢は表情を引き締めたまま動かない。


「別に気にしていませんわ」

「そう? 無論だけどね。それであなたたちは私に何か用でもあるのかしら」


幽香に鋭い視線を向けられて、鈴仙の肩はビクッと跳ねる。


「い、いえ…。少しお聞きしたいことがありまして」

「人を探しております」


視線を揺らしながら会話の主導権をパスする鈴仙に待ち構えていた咲夜は続ける。


「人探し? 私たちの得意分野とは思えないけれども。夢幻の誰かかしら?」

「比那名居天子という女です」

「へえ…?」


途端に場の空気がヒリつく。

その原因は幽香と妖夢の纏うオーラが殺意のあるものへと変わったからだ。


「あなた、その名前をここで出すとはいい度胸しているわね」

「幽香さん、やっぱり殺しましょう」


妖夢は腰にかけた刀に手をやる。

今にも切りかからんばかりの力強さだ。


「まあ待ちなさい、妖夢」


幽香は一瞥もくれず妖夢を制する。

その傲睨の先にいる咲夜は毅然としたままだ。


「それで、その比那名居天子に会ってどうしたいのかしら?」

「それは…」


咲夜が一瞥すると小さく首を振る橙。

先程のやり取りで返答は限られていた。

推察するに夢幻は八坂一派とも緋想天とも敵対した存在である。

同時に、夢幻に擦り寄った発言をしたところで、その場しのぎの偽りだとたちまちバレてしまうだろう。


「何故黙っているの? 私も忙しい身なの。さっさと切り上げたいんだけれど」

「失礼いたしました。どうしたいのか、という質問には答えかねますわ。ただし、まだ未定という返事だけさせていただきましょうか」

「つまり私の障害になりえるということでいいのね?」

「それは答えられません。私は夢幻と緋想天のいざこざには興味がありませんので」

「つまり私から情報を得るだけ得て自分からは何も出さないということかしら」


幽香のオーラが一層強くなる。


「そもそも質問する相手が間違っているのです」


咲夜は橙に会話を手渡すように視線を送る。


「へえ。そのおちびちゃんがどうしたって?」

「さて、お話しようか」


目の前の子供の声が思いのほか低いことに幽香は眉をしかめる。

藍のハンズフリーだ。


「我々は比那名居天子につくつもりは無い。ただ、奴らの握っている情報と立ち位置が知りたいだけだ」

「それでどの面下げて敵対する私の下にやってきたのかと聞いてるの」

「それは知識不足で申し訳なかった。ただ腑に落ちないのだが、どうして同じ反抗勢力である君たちがいがみ合っているんだ?」

「立場のわからないガキね」

「立場がわからないからこそ聞いている。重ねて言うが比那名居天子に肩入れするつもりはない」


(何故こいつらは強気に出られる? 生殺与奪を握られたこの状況で)


幽香は不穏な結論に思い至り、不快そうに目を逸らした。

それは相手が立場を逆転する切り札を持っているかもしれないということ。

ならばこの怖いもの知らずな振る舞いにも納得はいく。

それは首根っこを掴んでいるはずが、実際に掴まれているのは自分であるような錯覚さえ思い起こされる。

しかし幽香も怯むことはない。

眼前の命知らずどもの切り札とは何なのか?

相手の内側を剥き出すためには会話の主導権を渡すのも一興だと思い至る。


「比那名居天子…あの天人のことは気に食わないのよ。あの猿山の大将がね。もちろん居場所も知らないわ」

「つまり思想の違いということか。八坂一派に対抗する者として…」

「八坂一派? 八坂一派だって? あの傀儡が?」


幽香は高らかに笑う。

哀れな者を見下すようなサディスティックな表情を浮かべてだ。


「あなた達、本当に何も知らないのね」

「どういう意味だ?」

「探りあいはもうオシマイよ」


笑いがおさまり捩れた腹を抱えながら幽香は続ける。


「夢幻と緋想天の確執は、単に私がアイツの態度が気に食わないから生じているものよ。夢幻の人間はどうとも思っていないはずよ、一人を除いてね」


幽香は隣に居る妖夢をチラリと見る。

幽香の反応にさすがの藍も呆気にとられたままだ。


「ところであんたたち、部外者でしょ? さしずめ八雲紫の使いと言ったところかしら」


動揺を隠せないほど驚愕の表情を浮かべる藍。

それは自分の知らない人間から出るはずの無い名前だからだ。


「図星のようね。ならばこちらの事を深く知らないのも合点がいくわ」

「何故、紫様のことを…?」

「昔、ちょっとね」


参謀を自負する者としての失態。

自らが招いた不利を挽回する展開が浮かばない。

藍は不甲斐ない自分に唇を噛む。

しかし、幽香の口から出たのは藍の予想にない言葉だった。


「あなたたちは客人として対応するわ。歓迎するわよ。あいつが何を企んでるのかは知らないけどね」








一段落して、その場にいた者たちの緊張は解けていた。


「便利なものね。今話しているあなたがこの子を操っているわけね」

「長い間は出来ないからもうすぐおいとまするつもりなんだがな。ところであなたはどうして我々の素性について聞かないんだ?」


謁見からしばらくの時間、幽香は簡単な身の上話に花を咲かせていたが、藍たちを詮索するようなことはしなかった。

流れを掴まれてしまったことを藍は未だに引きずっていた。


「野暮な話ね。自分のことで手一杯なのに、あいつの持ち込んだ厄介事に巻き込まれるのは御免なだけよ」

「ああ、なるほど」


藍は深く納得する。

八雲紫という人物を知るものならばわかることなのだろう。


「それじゃ、私はこれで。やらなくちゃいけないことがあるからね」

「引き止めてしまってすまない。それでは私もこの辺で失礼しよう」


藍は意識を橙へと渡す。

それを見て幽香はその場から出ていった。



「どうやら私たちの早とちりだったみたいですね」

「ま、着地点はよくわからない感じだけどねえ」

「ところであのメイド…」


少し離れたところで小町と事の総括をしていた妖夢は咲夜の方へと視線を向ける。

先程の凜とした姿勢はどこかに消え、落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回している。

小町は妖夢の思案を察したかのように頷く。


「なるほどねえ。よしわかった! お姉さんが言って来てあげるよ」

「お、お願いします」

「おーい、そこのメイド!」


呼びかけながら駆け寄る小町に咲夜は無表情で返事をする。


「はい、なんでしょうか」

「トイレはあっちだよ」

「はい?」


咲夜の頭にクエスチョンマークが飛び出るのを幻視する小町。

心なしか後ろにいる妖夢にもクエスチョンマークが浮かんでいる気配まで感じた。


「何の話ですか?」

「違うのかい? いやあ、すまんね。なんかソワソワしてるように見えたからさ」

「わかります?」

「いてもたってもいられないって感じだったよ」

「そうですか…」


咲夜はため息を一つ、顔には消沈の表情が浮かんでいる。


「実はですね」

「うんうん」

「この部屋、ちゃんと掃除しているのかと思いまして」

「え?」

「床の汚れやゴミ、この隅のところなんてホコリが固まりになっています。窓のフチなんて指でこするとほら、この通り。集団の象徴が座るべき玉座すら汚れて目も当てられません。向こうの階段…地下があるのでしょうか? そちらにも汚れが溜まっているものと思います。ほうきとチリトリ、雑巾と出来れば重曹を所望します。さすがにこの格好ですのでトイレ掃除までは期待されると困りますが…」

「ちょっと待った!」

「なんでしょうか?」


小町は決壊したような勢いを振り払う。

咲夜は小町に浮かんだ苦笑いにキョトンとした表情で答える。


「それはこっちの話だよ。なんの話だい?」

「ですから、こういった汚れはしつこく、放って置くと…」

「わかった! あたいの負けだ! ほうきくらいなら用意できるんじゃないかな」

「感謝いたしますわ」


小町は疲れた表情を浮かべてほうきを取りに向かう。

そして館を出ようとしたところで、橙が指を咥えて地下への階段のほうを見つめているのに気がついた。


「お嬢ちゃん、地下に行きたいのかい?」

「うん。何があるのかなって」

「あの先は傷ついた奴らや戦意喪失した奴らの休んでいる保護施設さ。面白いものなんてないと思うよ。やめときな」

「この世界の現状をこの目で見ておきたいんです! それに私に出来ることがあるならしてあげたい…」


橙の目には潤んだ瞳。

ここまで言われたら断ることなど出来ない。


「社会化見学ってことかい? まあ立ち入り禁止というわけでもない。アニマルセラピーとか聞いたことあるし、それもアリなのかも…」


橙は心の中でしてやったりのガッツポーズ。

もちろん一連の流れは藍の指示だ。


「ちょっとそこの」


小町は警備していた兵の一人に声をかける。


「なんでしょうか、小町さん?」

「悪いけどこの子を地下に案内してあげてくれるかい? あたいは他の用事があってさ」

「構いませんが、無断でいいんですかね」

「暴れるような輩ではないことはさっきのでわかったよ。見られて困るものもないし、幽香もその辺に無頓着だろうから問題はないだろうよ」

「そこまで言うならいいですけども」

「じゃ、頼んだよ」




皆がそれぞれの役割を果たしていく中、鈴仙だけが孤立していた。


(私はここに案内しただけだし、やることは完了しちゃったのよね)


館内に集まっていた兵士たちも持ち場に戻り始めるのを見ながら鈴仙はそんな言い訳をしてみる。

しかしやることが見つからない。

部外者の咲夜ですら、小町の持ってきたほうきを使って掃除をはじめた。

周囲の者たちがせっせと働き始める中~~一人を除いて~~、鈴仙は直立不動のままである。


(気まずい…)


息が詰まりそうになった鈴仙は館を出ることに決めた。


「はぁ、なんで私ばかりこんな役なのかしら」


鈴仙は出来るだけ見回りの邪魔にならないように夢幻館の周りを散歩してみることにする。

夢幻館は掘っ立て小屋だ。

もちろん大した距離はない。

何周回ることになるのか想像すると鈴仙は辟易した。


しかし、それは杞憂だった。

半周回ったところで鈴仙は急いで身を隠す。


「あれは幽香さん?」


夢幻館の裏手にある簡易畑。

幽香は再び種植えの作業へと戻っていた。

鈴仙がソロリと踵を返したその時だ。


「そこの人。何してるのかしら?」


畑の方から幽香の呼び止める声。

鈴仙はしぶしぶながらも出て行くしかなかった。


「す、すみません。覗くつもりはなかったんですけど…」

「あら、あなたは通信兵団の人ね」


怒られるものかと腹を括っていた鈴仙は胸を撫で下ろしたが、それ以上に幽香が自分のことを覚えているのには多少驚いた。


「ちょうどいいわ。あなた、手伝いなさい」

「えっ」


思わず喉から飛び出しそうになった拒否の言葉を鈴仙は慌てて飲み込む。

幽香に対する印象はただただ怖いということ。

しかしよく考えてみると手持ち無沙汰な時間を消化できるし、話してみると案外悪い人ではなさそうな気がしないでもない。

鈴仙は幽香の手招きに応じる。


「わ、かりました…」

「じゃあ、この種を等間隔で植えていくの。深さはだいたい指の第一関節くらいね」

「はい」


そして二人ぼっちの荒れた大地の農作業が始まった。





照りつける太陽。

流れる汗。

植えられていく命の種。


無言。


ひたすら種を植えていく二人。


(気まずい…)


慣れているからか集中しているからか、幽香は全く動じている気配はない。

しかし、鈴仙にとってその沈黙は苦痛だった。

そして耐えかねて口を開く。


「幽香さんはどうして反抗勢力レジスタンスなんて始めたんですか?」


言い終わった鈴仙の血の気が引く。

鈴仙にとっては何気ない世話ばなしのつもりだ。

しかし幽香にとってそれは核心を突く話題。

折角、先程に詮索のし合いは終わり、客として迎えられたのに、全てをぶち壊す一言。

鈴仙はおそるおそる幽香を横目で確認するが、その表情には怒りの色はなく、それどころか哀愁さえ孕んだ顔をしていた。


「昔、ここにはとてもとても立派なひまわり畑があったのよ」

「ひまわり畑?」


そういえば鈴仙の手元にあるこの種、どこかで見覚えがあると思えばひまわりの種だ。


「私はここがとても好きだった。それを…」


息が詰まる感覚。

空気が震える感覚。

館内で発したものよりも大きな殺気だ。


「私は世界なんてどうでもいいの…。あの天人の指示に従うのは気に入らない。ただ、この地をこんな風にした洩矢諏訪子だけは許さない」

「洩矢諏訪子…?」


鈴仙には聞き覚えのない名前だった。

しかし、これだけはわかる。

無防備に心中を曝けたのも、彼女の中で膨れ上がる憎悪はもはや抑えきれず、機会があらばそれを吐き出したいほどであったからだろう。

鈴仙が立っているのも侭ならないほどの殺意がそれを物語っているのだ。


「洩矢諏訪子って誰なんですか?」

「あんた達が盲信する八坂神奈子と巫女の裏の顔。そして崩壊異変の原因の一つ」


今まで信じてきた英雄、救世主。

そう呼ばれた存在を完全に否定する言葉。

鈴仙の理性では信じることが出来ないものの、深層心理に於いて驚くほど容易にその真実を受け入れていた。


「あのカワズ野郎だけは絶対に許さない」


幽香から漏れ出すオーラは周囲の土を巻き上げはじめる。

このままではせっかく耕した畑もダメになってしまう勢いだ。


「幽香さん…!」

「おっと、悪かったわ」

「い、いえ。お気になさらず…」


幽香は殺気を解くと、周辺の拘束されるような空気の震えが消えた。


「この際だから言おうかしら。あなたは私のことを脅威だと思っているようだけど、それは私にも言えることなのよ」

「え?」

「気づかないとでも思っているの? ここに訪れる度に感じていたわ。あなたは上手に隠しているようだけど」



――――――――――――――



夢幻館、地下階段。

螺旋状の階段を夢幻の兵に導かれながら橙は下っていた。


「結構深いんだね」

「ここは防空壕の代わりになってるの。昔は洞窟で、その上から土が被さったから。それを掘り返したわけ」

「へえ~」


橙は先導する兵士を眺める。

茶色く長い髪に雪のように白い肌。

そして青く大きな瞳。

極めて整った顔立ちをした女性だ。


「お姉さん、綺麗だね。でもこの辺の人じゃないよね」

「私は…ロシアの人間だからね」

「外国の人? 外国の人はもう居なくなったって聞いたけど」

「着いたわ」


階段を下りきり、目の前にある地下室の扉が開く。

そこに居たのは老若男女。

治療を受けている人間や、静かに話しをしている人間、黒髪もいれば赤毛や金髪もいる。

例えるならば野戦病院のようにベッドが並んだ人種のるつぼ。


「ここにいるのはこの国の人間だけじゃない。崩壊異変が始まる前にこの国に居た人たちもたくさんいるわ」


その空気は軽はずみな気持ちで足を踏み入れた橙にとっては少しばかり重かった。


「祖国を失った人間も居れば、目の前で家族を殺された人間も居る。幽香さんは私たち皆を受け入れてくれたわ。あの人はその気ではないのかもしれないけど、皆あの人に救われた者ばかりよ」




―――――――――――



夢幻館1F。

床の塵屑を掃いて集めて捨ててを繰り返す奇妙なメイドはその場の人間の視線を集めていた。

玉座から始まり、窓、壁、階段のふち、床。

みるみる綺麗になっていく夢幻館。


「あの」


内部までにとどまらず、外部にまでにその手を伸ばしかけた咲夜の背後から声がかかる。

振り返ってみるとそこには白髪の少女剣士、魂魄妖夢がいた。


「私に何か御用でしょうか?」

「十六夜咲夜さん!」

「なんでしょうか、そんなにあらたまって…」

「不肖! この魂魄妖夢! あなたと剣を交えて己の未熟さを痛感いたしました! そこでお願いがあります!」

「はい」

「私に剣の稽古をつけてはいただけないでしょうか!」

「…はい?」




―――――――――――



どこかの暗い部屋。

そこは小さな窓から漏れる日の光のみが頼りで株のような椅子が乱雑に置かれてあるのだけがわかる。

そして一人、二人と部屋に現れる人影。

その身長は子供ほどに低い。


「いっちばんのりー! さすが最強のあたいに死角なし」

「いや、私が先に居るから」

「なんだ居たんだ、虫んちょ」

「あんたこそ、よく時間を間違わずに来れたわね」

「なんだと!? あんた死にたいの?」

「お前こそ死んでみる?」

「はいはい、そこまで」


部屋にもう一人入ってくるの気配。

こちらは他の二人よりも幾分か大きい。


「もう時間だけどまだ来てないのが居るわね」

「ルーミアだね」

「あいつも来るの?」

「召集はかけたからね。あと5分以内に来ないと連帯責任よ」


部屋に気だるい悲鳴が響き、程なくしてドアが開き、もう一つ影が増える。


「ごめん、おくれたよー」

「5秒遅いよ」

「バカ!」

「お前に言われたくないなー」

「風来坊のあんたがよく来たよね。顔合わせるのいつぶりだろ」

「突然呼び出されたら来ないわけにはいかないよ」

「さてと、連帯責任の罰はあとで考えるとして…、集まってもらった理由はわかるわね?」

「わからん」

「わからない」

「わかんない」

「あんたはわかりなさいよ」


ゴチンと硬いものどうしがぶつかる音がする。


「痛いー」

「先日、私に無断で命令を出して南部街の通信兵を襲った奴が居るそうね」

「はいー」


もう一つ同じ音が響く。


「痛いってー…」

「その際の報告は?」

「一人だけ取り逃がした奴がいたの」

「多分ウサギのヤツね」

「確かそうだったかなー?」


そしてさらに一つ音が響く。


「あーん」

「わかってるの? 四奇子バカルテットとしてあんたたちの素性はバレてはいけない。あんたたちは表では正義の偶像として存在しなきゃいけないの」


バカルテット。

正式名称バックボーンカルテット。

八坂一派の主戦力である4人の子供だ。

ただしその姿を見たものはおらず、その存在の伝聞のみが都市伝説のように一人歩きしている。

ちなみにバカルテットは蔑称なのだが、当の本人たちは気づかずにいるようだ。


「わかります…」

「正義として当然のことね!」

「あんたはうるさいよ」

「ならばあんた自身で責任を取りなさい。わかったわね」

「わかりました…」

「他のヤツらもわかったの?」

「言うまでも無い!」

「わかりました」

「全く、こういうことは早苗の方が向いてるでしょ。バックレやがってあいつめ。自分のことは自分で責任取りなさいよ」

「ところでさ。ミスティアのヤツはどうしたの?」

「あいつは今、別の任務にあたってるわ。とても大事な任務にね」



――――――――――――



夢幻館地下。

奥のベッドで起き上がる少女がいた。

髪の毛は少しくすんだ桃色のショートカット。

側頭部には獣の様な耳。

そして背中には鳥の様な羽。

種族はもちろん人妖。

少女は口を開いた。


「さて、そろそろ仕事の時間かな」

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