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#5 パワードスーツ

 錬金術師ギルド地下1階、とある大規模研究実験室―――――



 「うわぁ……」



 目の前に広がる立方体群の造形にニナは思わず感嘆の声を漏らした。


 現在ニナが居るのは、ギルド借りられる部屋の中でも最大級の規模を誇る特大部屋。サッカースタジアム凡そ2個分もの広さを有するとかく広い大部屋だ。


 そして、その奥から手前ギリギリに至るまで、【魔霊樹】を直方体状に切り出したブロックが積み重なった階段が延々と続いていた。


 さながらピラミッドを彷彿とさせる光景―――だけど見ているだけで無性に熱くなってくる砂漠とは打って変わって、蒼々とした木材の冷たい見た目と落ち着く香りがヒンヤリとした涼しさを醸し出している。


 これから開始されるのは樽の構成要素である木板の生成、並びに並行しながら木板の乾燥。そして完成した板を運搬担当者に受け渡して同じ作業の繰り返し。


 それらの作業を室内すべてのブロックが無くなるまで延々と行うという。


 で、わたしの目の前にひたすら続く巨大な階段。今からこれをみんなで登っていく必要があったりする。


 だって目の前から順次切り崩していくと後になるほどブロックの位置が高くなってくるからね。危ないし効率悪いから階段の最上階まで登り進める必要があるみたい。


 そんなわけで現在進行系で階段を這い上がってる感じだよ?


 でも途中でみんなとお別れ。


 まぁ同じ場所に固まっててもスペース的にも効率的にも落ちるからね。代わりに付いてくるのは何やらパワードスーツっぽいギブスを着込んだ錬金術師たち。なんだかスチームパンクなSF世界に迷い込んだ気分になるね。


 なんでも身体能力的に脆弱な錬金術師の弱点を克服すべく、数年前からそれに関する研究が盛んに行われてきているとかどうとか。


 その試作機となる装備が今回のイベントに先駆けて試験的に導入されているとのこと。つまり運用試験も兼ねてるってわけだね。


 素材は外見からだと推し量るのは困難だったりする。何せ全てのパーツが同色で塗装されているのだから。それでも高価で希少な貴金属とか素材を使っているのは確実じゃないかな……。


 1機あたりに掛かる制作費とか維持費とか≪AAO≫基準だと軽く数千万は吹っ飛ぶ。殊更≪AAO≫よりも物価高めなこの世界では更にお金がかかるはず。


 だからこの装備の開発から運用まである程度、国が補助金とか出してるんじゃないかな……。それでうまくいったら国の標準兵装として導入するとか?


 まぁそれはともかく…効果は見ての通り絶大みたいだね。


 デモンストレーションなのか、さっき錬金術師10人がかりブロック持ち上げようとしてビクトもしなくて断念してたけど木材ブロック。


 だけど同じメンバーが各々スーツを着込んだ途端、たった4人でラクラク運べるほどになったからね。単純計算で効率が2.5倍へ向上したと言えるかも。劇的な変化に周りから驚嘆の声が上がるほどに。


 だからそれなりに性能は高いほうだと思うんけど、ただ見た目がかなりゴツイ上に外装が大きすぎる感じがする。


 そのせいか、誰も彼もが何だかぎこちなくカクカクで動きづらいの雰囲気を漂わせている。それでどうにかして慣れようと試行錯誤に奮闘している印象を受けた。


 とりあえず出力重視で操作性とかは二の次って感じなのかな?

 なんとなく危なっかしさを感じるんだよね。


 わたし個人としては安全重視がポリシーだから操作性が悪いものは基本的には使いたくない。事故の原因にもなりかねないし。だから試着依頼が来るようなら何が何でも拒否ろうと思うよ。



 「よかったらおぶって上げましょうか?」


 「あ、いえ、遠慮します」



 力加減の調節に悪戦苦闘しているっぽい。

 パワードスーツ着ている人たちの動きが未だに大振りなんだよね。

 何かの拍子ニプチッって潰されたら笑えないから普通に遠慮願ったよ。


 ふと思ったんだけどさ、錬金術師ギルドに来てから急にファンタジー感が薄れた気がするんだよね。たぶん気のせいじゃないよね絶対……。


 まさかこれって――――



 「パワードスーツでしたっけ?これって何かモデルとかあったりするんですか?」


 「ああ、これですか?これはですね――――」



 ――――神代の時代の迷宮の最深部で発掘された古代兵器をモデルに造られた代物らしいですよ。と、パワードスーツを着込んだ妙齢の錬金術師はそう言った。


 ちょっと気になったから更に詳しく聞いてみたよ。

 だって迷宮に古代兵器なんて代物、≪AAO≫には無かったからね。


 それで判ったことなんだけど、なんでもこの世界ではよくあることらしいよ?

 未踏破の迷宮の最深部には比較的高確率で未知の技術で造られたアイテムが眠っているらしい。


 だけどその大半が未だに製造方法が不明という現状らしい。だからその解析に成功した錬金術師は国からタンマリお金を貰えるらしいよ?



 「でも肝心の古代の遺物って早々見れるものじゃないですよね?」


 「3階プレミアムフロアに行けば普通に見れますよ?」



 それどころか申請書を提出すれば借り出しまでしてくれるらしい。でも実績10個以上無い者は3階への立ち入りは原則禁止だったりする。だから今のわたしに入る術はない感じだね。


 ぶっちゃけ、古代の技術の解析とか時間取られるだろうし利権とかで変な人達絡んできそうだし、始めたらレベリングとかお店構えるどころじゃなくなりそうだから基本的にスルーするつもりだよ?


 だけどプレミアムなフロアがどんな場所なのかすっごい気になる。


 妙齢の錬金術師さんがポロッと一部詳細言っちゃったけどコレは本来規則違反だったりする。だから「このことは内緒で」と強く念押しされたよ。


 そういうわけで基本的にプレミアムフロアの実態は謎に包まれてる。だから何気に気になってるんだよね。まぁ実績集めぐらいなら暇見てコツコツやっていってもいいかもしれないね…。

 


 そんな感じで退屈凌ぎに他愛のないこと考えながらわたしはひたすら【魔霊樹】の大階段を登っていった――――――

お読み下さりありがとうございます!

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