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#30 エピローグ

 ダージスさんたちに連れられて辿り着いたのはドーム状の大部屋だった。


 壁際や部屋の中央にはカーブ状のカウンターが幾つも並び、窓口それぞれには役割を示すプレートが立てかけられている。


 そして縁に面する窓口の隣には何処かへ通ずる通路が無数に伸びている。


 見た感じ、証券取引所っぽい雰囲気がするね。

 まぁ現実世界で行ったことなんて無いからあくまでイメージだけどさ…。


 それはともかく、証券取引所って人がわんさか居るような感じするじゃん?

 でも見た目に反して閑古鳥が鳴いてる状況だったりする。


 なにせ今、この場にいるのはそれぞれの窓口担当員に加えてわたしたちだけなのだから――――


 わたしたちって言ったけど、それは未だにゾロゾロ付いてくる錬金術師連中も含めての話。大体20人弱。案外多い気もするけど部屋の規模に比べれば少ない部類に入ると思う。


 時間帯的にたぶん夜だと思うけど天井からぶら下がる魔晶石製の照明で常時明るさが維持されているらしく、24時間……じゃなかった20時間いつでもこの窓口広場を利用できるらしい。


 なんでも、この窓口広場が錬金術師ギルドを真上から俯瞰した時、ちょうど中央に位置するらしくて、利便性から広場を基点に各エリアへ通路が用意されているみたい。


 もちろん上下階への階段もあるし、隣接通路を直ぐ出ればエレベータもあったりする。


 施設内を移動するなら案外利用頻度が高そうな気もするけど、人がホントに居ないんだよね。時間帯のせいかとも思ったけどダージスさんが苦笑しながらわたしの推測を否定した。



 「あいつらはただ引き籠もってるだけだぜ」



 錬金術師に覚醒した者は総じて身体能力が頗る低下する。そのため、肉体労働に不向きであり、肉体労働が資本のこの世界ではぶっちゃけた話、イジメの対象になりやすい。


 だから心を病んで引き籠もりになる者が比較的多いらしいよ?

 ギルドに所属する錬金術師の3分の1がそれに該当するらしい。


 そして残りの3分の2のうちの半分も引き籠もりぎみだったりする。それらは別に病んでるとかそういうわけじゃなくて、いわゆる研究バカだってダージスさんが呆れ気味に言ってたよ。


 バカって言うと失礼かもだけど事実、寝食すら忘れて研究に夢中になるがあまり、過労で倒れたり栄養失調で病に伏せたりするんだからバカと言っても差し支えないと思う。



 「って、あれ? このギルドって無料で泊まれるんですか?」


 「んなわけあるか」



 まぁそうだよね。錬金術師を保護するために建てられたといっても維持費とか色々かかるし無料なわけないよね。


 それでも宿泊フロアに泊まり込む者や研究フロアを連日借りる者が後を立たない状況らしい。


 引き籠もってるにも関わらずどこからお金が湧いてるんだろうね?



 「ニナ、冒険者ギルド行ったことあるか?」


 「行ったことあるというより会員だったりしますね」


 「マジか。いや、別に深い意味はねぇんだがよ、錬金術師で冒険者ギルドってキツくねぇか?」


 「まぁ入って損はありませんから」


 「よく分からんがそんなものか?」


 「そんなものですよ」


 「っと話が逸れちまったぜ。冒険者って冒険者ギルドで依頼受けられるだろ?」


 「そうですけど?」


 「錬金術師ギルドにも似たような制度があるんだよ」



 錬金術師ギルドでは錬金アイテムの製作依頼がギルド内にて常時公開されてるらしい。


 で、それを受けて期日以内にアイテムを納品するとお金がもらえる。しかも素材もギルド持ちという大盤振る舞いだったりする。


 まぁその代わり報酬金がしょっぱいらしいけど…。


 それでその依頼って元を辿れば他ギルドからのものだったりする。


 錬金術って使い熟せば色んなものが造れたりじゃん?

 だから定期的に他ギルドに錬金アイテムを輸出することで錬金術師ギルドは儲けを出しているらしいよ?


 特に魔導具類は錬金術なしでは製作が困難なものも多く、他ギルドからの製作依頼が引っ切り無しに来るらしい。


 中には製作個数に月のノルマが設定されてる契約も結ばれてたりする事情で稀に特定の錬金術師に対して強制製作依頼が掛かるケースもよくあるみたい。


 というか主に研究熱心で金欠気味な錬金術師に声を掛けるようにしているらしい。


 そういうわけでコツコツ依頼を熟せば延々とギルド内に引き篭もることも余裕で可能らしい。


 ってか引き籠もりばっかなのって完全にギルドが原因じゃない?

 諸悪の根源的な?

 別に悪いことしてるわけじゃないと思うけどさ……?

 ま、いっか。



 「その辺は実際に受けてみれば分かるだろ」


 「じゃあ早速受けてみますね」


 「ちょ待て待て、まだ宿部屋の説明が残ってるぞ――――」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 錬金術師ギルド2階、宿泊フロア銀区画どこかの部屋――――

 

 試しに銀クラスの部屋を1泊2日で借りてみたよ。

 広さ的には16畳間とそこそこの広さ。

 朝夜2回の食事付きでお値段3万リディスとちょっと高めだったりする。

 お風呂場も広い共用浴場があったりして意外と快適だったりする。

 ただ【空気洗浄器】の魔晶石が別売りなのが難点かな。


 でもこの間、商業ギルドで荒稼ぎしたから手元に5千万近くものリディスがあったりするから懐は大分暖かかったりする。だから偶には贅沢するのもありだよね?


 商業ギルドで思い出したけどさ……さすがにココまで追手が入ってくるなんてことは無いよね?


 別に悪いことしたわけでも無いし追われてるってわけでもないけどさ、常時監視されるのって生理的嫌悪っていうのかな?気持ち悪いじゃん?


 錬金術師ギルドに入ったってことで手を退いてくれれば嬉しいんだけどさ、どうなんだろうね?


 まぁどっちにしても錬金術師って色々狙われる存在だってことは分かったし、どっちにしても密偵対策とかその辺用意しないといけないんだどさ…。


 ここに引き籠もれば安全かもだけど、それじゃあ夢が叶わないから籠もるのは却下だね。

 だとしたら、その厄介連中に対処できるだけの力をつけないといけない。


 つけないといけないんだけどさ……正直今日は何だか疲れたよ。

 やたらと歩き回ったし、脈絡もなく戦闘始まって地味に疲労溜まったし、精神的に疲れが溜まってるのかもしれないね。


 正直、身体を動かすどころか考えるのすらダルいよ。


 精神的な疲労ってポーションじゃ直せないから正直こういうときは寝るのが一番だよ。


 ってことでおやすみ―――――――

お読み下さりありがとうございます!


これにて第二章は終了です。

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