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#26 反魔合金

 「次の試験はこの扉を潜ったさきで受けられるよ」



 そう告げる青年の言葉通りに入ってきた扉の向かい側にある扉を開けようとした瞬間、わたしは真横へと飛び退いた。


 そして振り向きざまに懐から【魔晶銃】を取り出し構えると、銃口の先には液体の滴るナイフを両手にそれぞれ携えて張り裂けんばかりに得体の知れない笑みを浮かべる青年の姿があった。



 「お、君!勘がいいね!!」


 「えっともしかして二次試験だったりします?」


 「大正解だよ!これが見えるかい?」



 その言葉と共に袖から琥珀色に煌めく小さな砂時計を取り出した青年は机の上にそれを置いた。



 「この砂時計は特殊な砂時計なんだ」



 「砂が中々零れ落ちない粗悪品」



 「この砂時計の全ての砂が落ちきるまで僕の攻撃を躱し続けられれば合格だよ!」


 

 「さてさて君はいつまで逃げ切れるかな?」



 狂気を湛えた笑みを浮かる青年は再び得物を構えなおすとわたしの元へと到来した―――――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 「いい加減当たってくれないかな!?」


 「い・や・で・す!」

 

 「え~そんなこと言わずにさぁ!一発だけだからさ!」


 「それ喰らったら地獄のブートキャンプとやらに連れてかれるんでしょ?絶対に嫌ですよ!!」


 「そんなこと言わないでさ!君もあの地獄を味わうがいいのさ!」


 「謹んで遠慮します!」


 「とりゃああああああ!!!」



 緊張感のない言葉の応酬とは裏腹に青年から放たれる連撃はどれも鋭くそして速い。


 たぶんだけどこの人【身体強化薬】盛ってるんじゃないかな?

 錬金術師にしては異常な行動速度だし。


 だけど実際のところでは、わたしの回避が間に合うレベルの速さだから大して脅威では無かったりする。


 ただ問題なのは砂時計。

 さっきから砂粒一つ落ちる気配がしないんだよね。

 零れにくいって言ってたけどそれ以前の問題だよね。

 あれ絶対そういう細工が施されてるとしか思えないんだよね。


 もしかすると敵の攻撃を掻い潜りつつ錬金術で物を直すのがこの試験の狙いだったりするのかな?意味不明過ぎるけど。


 ともかく砂が零れ落ちない限り試験は延々に終わらないみたいだから砂時計を直しにいくとするよ。


 攻撃を躱しつつ机の傍まで近づいたわたしは砂時計を片手で掠め取ることに成功した。そして砂時計に魔力を浸透させ形状の詳細を把握しようとして違和感に気付く。


 というのもこの砂時計、魔力を反発・疎外する性質でもあるのか魔力が地味に浸透しにくいんだよね。すっごい悪意を感じる。絶対合格させる気ないでしょこれ……。



 「これ、もしかして【反魔合金】製だったりする?」


 「大正解だよ!諦めるんだね!」



 魔力を阻害・霧散・放出する数種類の特殊な金属を用いて造られたのが【反魔合金】。金属の癖して透明感を有する不思議なファンタジー金属。


 それだけでなく魔法に対する耐性が絶大的に高いことから錬金術による加工は至難の技だったりする。つまり純粋に膨大な魔力によるゴリ押し以外では加工不可能な厄介な代物。


 そんな代物で造られた砂時計をレベル100にも満たないわたしが自由自在に錬金術で弄れるわけがないんだよね…。


 レベル100未満って言ったけど値はぶっちゃけ勘だったりする。だって現時点でレベルを測る手段なんてないし……。少なくとも100は超えてはいないんじゃないかな……。


 それと魔力素の瞬間最大放出量は最大MPに依存するからレベル100は最低でも無いと錬金術で【反魔合金】に干渉することは叶わない。


 そんなわけで、魔力を浸透させた端から外側へと排出されるから正直言ってキリがないんだよね。


 それも青年の攻撃を躱しながらの作業のせいで修理に集中する余裕があまりない状況。余裕があったところでそもそも魔力不足で変形不可能。



 「君のブートキャンプ行きは確定なのさ!」


 「ちょっと黙っててくれません!?集中してるからさ!!」



 あまりに妨害が酷すぎて思わず素で言っちゃったよ。


 あとさ、ふと思ったんだけど、これって攻撃を受けないことが試験の絶対条件だよね?だけど攻撃しちゃいけないなんて言われてないよね確か。ってことはさ、この青年を先に沈めたほうがいいかもしれない。


 その考えに至ったわたしは【魔晶銃】を再び構えると少年の関節部へと狙いを定め、



 「後で治してあげるから我慢してね?」



 その一言と共に引き金を引いた――――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 痛みに慣れていなかったのか、一発当てたら盛大に青年は藻掻き苦しんだ。さすがに申し訳ないと思ったから気絶させることにしたよ。


 あ、もちろん傷の手当はしたよ?

 回復魔法様様だね。


 で、その後はバックパックでお蔵入りになっていた草ロープでグルグル巻きにして机に縛り付けてある感じ。


 でも不思議だよね~。

 どうして何の躊躇いもなく銃で人間撃てたんだろ?

 なんか大切な何かが欠けてるような気がして気味が悪いよね……。


 まぁそのこと考え出すと延々と続きそうだから、今はまず、砂時計をどうするかについて考えることにするよ――――

お読み下さりありがとうございます!


2018/04/11 ------------------------

[修正]

・ニナのレベルが100であるかのような紛らわしい表現を修正しました。

 前:レベル100って言ったけど値はぶっちゃけ勘だったりする。

 後:レベル100未満って言ったけど値はぶっちゃけ勘だったりする。

・魔力素の瞬間最大放出量が最大MPに依存する旨が抜けていたため、修正追記しました。

 新:それと魔力素の瞬間最大放出量は最大MPに依存するからレベル100は最低でも無いと錬金術で【反魔合金】に干渉することは叶わない。



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